こんにちは、大石浩之です。わが家の子も、つい先ごろまで部活に汗を流し、いまは受験へと机に向かう日々へ移りました。あの「部活の時間」がこれから大きく変わろうとしています。令和8年(2026年)9月から、磐田市の中学校では休日の部活動を学校では行わず、地域クラブ活動「SPO☆CUL IWATA(スポカル イワタ)」へと移していく。いわゆる「部活動の地域移行(地域展開)」です。今日は、この改革を一市民の暮らしの目線で、良い点も心配な点も、できるだけ公平に整理してみたいと思います。
まず事実を整理します。磐田市は教育委員会(放課後活動課)が事務局となり、新たな地域クラブ活動「SPO☆CUL IWATA」を設立・運営しています。令和6年5月から準備が始まり、令和8年9月からは、学校では休日の部活動を行わず、それに代わる活動として地域クラブで活動する形へと移ります。種目ごとに市内を1〜3程度のエリアに分け、クラブを設置していく予定です。
大事なのは「いきなり全部なくなるわけではない」ということです。令和8年度の夏季大会までは、平日も休日も従来どおり部活動があります。それ以降は、平日は部活動、休日は地域クラブ、という二本立てになります。中学3年生は引退となる夏季大会まで、これまでどおり部活動を続けられます。わが子の世代がちょうど境目にあたるご家庭も多いはずで、「うちの学年はいつからどう変わるのか」をまず正確に押さえることが、不安をためないための第一歩だと思います。
なぜ、いま変えるのか
背景には大きく二つの事情があります。一つは少子化です。子どもの数が減れば、学校単位ではチームが組めない種目が出てきます。もう一つは教員の働き方改革です。休日も含めて顧問を担ってきた先生方の負担は、長く課題とされてきました。国(スポーツ庁・文化庁)も令和7年12月の総合的なガイドラインで、「地域移行」という言い方を「地域展開」へと改めました。地域の人や場を活かして、活動を地域全体で支えていこう、という理念をより明確に表すためだとされています。
磐田市が掲げるのは「プレーヤーズ・センタード」、つまり中学生を真ん中に置き、関わる大人もともに高め合うという考え方です。理念としては、私も共感できます。先生の善意と長時間労働に頼り続ける形には、どこかで限界が来る。子どもの選択肢を広げつつ、持続可能な仕組みに作り替えること自体は、避けて通れない課題だと思います。
「急に決まった話」ではない、という事実
この改革は、ある日突然降ってきたものではありません。国は当初、令和5年度からの3年間を「改革集中期間」と位置づけて休日部活動の地域移行を進める方針でしたが、「3年での達成は現実的に難しい」「義務ではないと明記してほしい」といった現場の声を受けて、令和4年12月にこれを「改革推進期間」へと改め、達成時期にこだわらず「可能な限り早期の実現を目指す」方針へと転換しました。つまり国レベルでも、現場の実情に合わせて軌道修正をしてきた経緯があります。
磐田市はその流れの中で、令和5年8月にグランドデザインを公表し、令和6年5月に「SPO☆CUL IWATA」をスタートさせ、取り組みを検証しながらロードマップを改訂してきました。加えて磐田には、平成28年度から続く「磐田スポーツ部活」という合同部活の蓄積もあります。希望する部活が自分の学校になかったり、専門の指導者がいなかったりする中学生のために、陸上競技部やラグビー部を学校の枠を越えて設けてきた取り組みです。今回の地域展開は、こうした下地の上に積み上げられているもので、いわば「磐田が長く向き合ってきた宿題の、次の段階」と言えます。
理念に共感する、と書きました。ですが、現場で暮らす一人の市民として、手放しで「よかった」とは言えません。改革の成否は、理念ではなく「中身をどう詰めるか」にかかっているからです。私が特に注目している論点は三つあります。
論点① 指導者は、本当に足りるのか
地域移行のいちばんの難所は、指導者だと私は見ています。学校の先生が担ってきた指導を、地域の方々や指導を希望する教員、競技経験のある人材に引き継いでもらう。市はそのために募集を続けており、地域おこし協力隊として「SPO☆CUL IWATA」コーディネーターまで募集しています。裏を返せば、それだけ人集めに本腰を入れなければならない、ということでもあります。
指導者は数がそろえばよいわけではありません。子どもの安全を預かり、勝ち負けだけでない成長を支える役割です。研修や登録の仕組みは整いつつありますが、「9月までに、すべての種目・エリアで十分な体制が組めるのか」は、開設見込みの進捗をていねいに見ていく必要があります。市は進捗状況を公表していますから、関心のあるご家庭は、わが子の種目の見込みを確認しておくと安心です。
論点② 「無償」から「月2,000円」へ、をどう受け止めるか
正直に言えば、ここはご家庭ごとに受け止めが分かれるところだと思います。指導者への謝金やクラブの運営費を、原則として受益者が負担する。これは制度として筋が通っています。誰かがただ働きで支える形のほうが、むしろ持続しません。
一方で、家計の目線で見れば、月2,000円が「別の壁」になり得ることも事実です。きょうだいが複数いれば負担は重なりますし、平日も活動するクラブや、用具・遠征の費用が乗ればさらに膨らみます。心配なのは、費用が理由で「やりたいのに参加をためらう子」が出てしまわないか、という点です。スポーツや文化に親しむ機会は、家庭の経済状況で左右されてはいけない領域だと、私は考えます。
身近なたとえで言えば、これまでの学校部活は「水道の蛇口をひねれば出てくる水」のようなものでした。当たり前にそこにあって、お金を意識せず使えた。地域クラブはそれを「会費を払って入る習い事」に近い形へ変えていきます。質の高い指導や多様な種目という対価があるとはいえ、入口に料金所ができれば、通れる子と通れない子が分かれてしまう懸念は残ります。だからこそ、料金所の手前に「橋」を架けておく――つまり支払いが難しい家庭への手当てを先に用意しておくことが、制度設計の要だと思うのです。
ここは行政に望みたい点です。就学援助の対象世帯や多子世帯への減免・補助の仕組みを、制度のスタートと同時に用意できないか。「払える人だけが続けられる活動」になってしまえば、地域移行の理念そのものが揺らぎます。費用の話は後回しにされがちですが、最初に手当てしてこそ「すべての中学生のための活動」になります。
論点③ 住む場所で、機会が変わらないように
校区を越えて種目を選べるのは、この改革の大きな魅力です。これまで自分の学校になかった種目に挑戦できる。違う学校の生徒と仲間になれる。少子化の時代に、これは前向きな変化です。ただ、エリアごとにクラブを設置する以上、種目や地域によって「近くに受け皿がある子」と「遠くまで通わないと参加できない子」の差が生まれ得ます。送迎は保護者の負担に直結します。共働きやひとり親のご家庭にとって、平日夕方や休日の送り迎えは決して小さな問題ではありません。「選べる」制度を、「実際に通える」制度にまで仕上げられるか。ここが磐田の腕の見せどころだと思います。
批判だけでは無責任ですので、私なりの対案を三つ、提案として述べます。
- 費用の「入口の壁」を下げること。就学援助世帯・多子世帯への減免や、初年度の用具補助など、お金を理由に参加をあきらめる子を出さない仕組みを、制度開始と同時に整えてほしい。ここは譲れない一線だと思います。
- 情報の「分かりやすさ」を徹底すること。制度は複雑で、学年によって切り替わる時期も違います。学年別・種目別に「あなたの場合はこう」と一目で分かる案内や、気軽に聞ける相談窓口があると、不安はずいぶん減るはずです。
- 検証と見直しを前提に進めること。「やってみて、確かめて、直す」姿勢は評価できます。9月のスタート後も、参加率・費用負担・送迎の実態・子どもの満足度を定期的に点検し、つまずきが見えたら速やかに手を打つ。
これは「子どもだけ」の話ではない
もう一つ、見落としたくない視点があります。地域移行は、子どもの活動の場の問題であると同時に、地域そのものの問題でもある、ということです。指導者として関わる地域の大人にとっては、自分の経験や技を次の世代に手渡す機会になります。退職した教員、競技経験のある社会人、地域のスポーツ団体――そうした人たちが中学生と関わることは、世代を超えたつながりを地域に生み出します。私が日ごろ向き合っている高齢者福祉の現場でも、「役割があること」「誰かの役に立てること」が人を元気にする場面を何度も見てきました。地域クラブが、子どもを支えながら、支える側の大人にも生きがいを返す仕組みになれば、それは磐田にとって大きな財産になります。
裏返せば、地域に十分な担い手がいなければ成り立たない仕組みでもあります。だからこそ、行政が旗を振るだけでなく、私たち市民一人ひとりが「自分にできる関わり方はないか」と考えることも、この改革を支える一部なのだと思います。
保護者ができる「確認」リスト
制度の良し悪しを論じる前に、まずはわが子の場合に引き寄せて、一つずつ事実を確かめておくと安心です。私自身、子の進路を考えるなかで「知らないまま不安になる」のがいちばん消耗すると感じました。次の項目を確認してみてください。
- わが子の学年は、いつから休日が地域クラブに切り替わるのか
- 志望する種目のクラブが、通える範囲に開設される見込みか
- 参加費(休日のみ月2,000円〜)と、別途の活動費の有無
- 送迎が必要か、平日も活動があるクラブか
- 受験期と活動量のバランスを、家庭でどう取るか
- 市の説明会・Q&A・SPO☆CUL公式サイトで最新情報を確認する
わが家を振り返ると、部活で得たものは技術や記録だけではありませんでした。仲間と過ごした時間、悔しさや達成感、そして「自分で続ける」と決めた経験。その価値が、制度が変わっても損なわれないでほしい。地域移行は、うまく育てれば「学校の中だけ」では届かなかった出会いや選択肢を、子どもたちに開く可能性を持っています。問題は、その可能性を磐田が本当に形にできるかどうかです。まずは、あなたとお子さんにとって何が大切かを起点に。制度の都合ではなく、子ども一人ひとりの「やりたい」を真ん中に置いた地域展開になることを願っています。
部活動は「誰かの善意」ではなく「みんなの仕組み」で支える時代へ。理念に賛同するからこそ、費用と公平性の詰めを最後まで諦めずに。
出典・参考(2026年6月18日時点)
- 磐田市公式ウェブサイト「磐田市の部活動改革」(参加費月2,000円・スケジュール・指導者募集・人材バンク等)
- 磐田市公式ウェブサイト「新たな地域クラブ活動 SPO☆CUL IWATA」
- スポーツ庁「部活動改革ポータルサイト」、文化庁・スポーツ庁「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」(令和7年12月)
制度の内容・時期・費用は変更される場合があります。最新かつ正確な情報は、磐田市教育委員会放課後活動課および市公式サイト・SPO☆CUL IWATA公式サイトで各自ご確認ください。