導入――若い人に聞くなら、聞いた後まで設計してほしい

磐田市公式ウェブサイトに、2026年7月8日更新で「未来まちづくりワークショップ」の案内が掲載された。開催日は2026年8月21日金曜日。会場は磐田市役所本庁舎1階第1会議室で、午前9時から正午まで行われる。午前9時から9時30分が受付で、ワークショップは午前9時30分から始まる。対象は、市内在住・在学の中学生、高校生、大学生。定員は20名程度で、費用は無料、申込締切は2026年8月7日金曜日である。

内容は分かりやすい。10年後に自分たちがまちづくりの主役になったとき、磐田市をどんなまちにしたいかを、5名程度のグループで話し合うというものだ。主催は都市計画課である。注意事項として、18歳未満は申込時に保護者の同意が必要であること、ワークショップで撮影した画像・映像・名前等が、ホームページ、SNS、磐田市都市計画マスタープラン、外部メディア等へ掲載される場合があることも示されている。

私は、この企画を前向きに見ている。市の将来像を考える場に、若い世代を呼ぶことは必要である。10年後の磐田を使い、暮らし、働き、子育てし、地域に関わるのは、いまの中学生、高校生、大学生である。大人だけでまちの将来を語り、後から若い人に「参加してください」と言っても遅い。若い人の言葉を、計画づくりの早い段階で聞く姿勢は大事である。

ただし、ここで満足してはいけない。20名程度のワークショップを開いただけで、「若者の意見を聞いた」と言ってしまうなら、それは参加の形を整えただけで終わる。大切なのは、何を聞くか、どう記録するか、どう返すか、そしてどの部分が市の計画や事業に反映されたのかを後から市民に見えるようにすることである。若い人の声は、飾りではない。市政の判断材料として扱うなら、その扱い方まで設計しなければならない。

今回の案内は、都市計画課が主催している点が重要である。単なる交流イベントではなく、都市計画やまちづくりの文脈につながる可能性がある。だからこそ、私は「聞いて終わり」にしない仕組みを求めたい。若い人が出した言葉を、きれいな写真と感想で消費するのではなく、どの課題に分類し、どの担当課へ共有し、どの計画に反映できるのかまで見せる。そこまでやって初めて、未来まちづくりワークショップという名前に実体が出る。

図1:若い世代の声を市政につなぐ流れ
図1 未来まちづくりワークショップを、単発の意見交換で終わらせず、市政の判断材料へつなぐための流れ。

評価――入口はよい。課題は「代表性」と「返し方」である

今回の企画で良い点は、まず対象を中学生、高校生、大学生に絞っていることである。まちづくりの場では、どうしても時間に余裕のある大人、地域団体の役員、行政に近い人の声が集まりやすい。そこに若い世代の枠を別に設けることは、声の偏りを少しでも補う意味がある。特に中学生を含めている点は良い。中学生は、通学路、公園、図書館、駅、買い物、部活動、地域行事、暑さ対策など、日常のまちをかなり具体的に見ている。大人が見落としている不便を知っている。

次に、人数を20名程度にしている点も、ワークショップとしては現実的である。100人集めれば良いというものではない。5名程度のグループで話し合うなら、20名は一人ひとりが発言しやすい規模である。意見を深く聞くには、ある程度小さな場の方が向いている。無料で参加できることも、参加のハードルを下げる。

しかし、20名程度である以上、そこに集まった声が若い世代全体を代表するわけではない。この点は、最初から明確にしておく必要がある。参加できるのは、平日午前の市役所に来られる人である。部活動、アルバイト、塾、家の用事、送迎の有無、学校の予定、体調、保護者の同意、交通手段によって、参加できる人は限られる。市役所に自分で来ることに慣れている人もいれば、そもそも市役所に行く心理的なハードルが高い人もいる。

つまり、このワークショップは貴重な入口である一方、これだけで十分ではない。参加した20名の声を大事にしつつ、参加できなかった若い人の声をどう拾うかも考える必要がある。学校を通じたアンケート、図書館や交流センターでのミニ投票、オンラインフォーム、駅や商業施設での短い聞き取り、部活動や高校生ラボとの連携など、補助線はいくつもある。ワークショップを核にして、周辺の声を重ねる設計がほしい。

もう一つの課題は、参加した後の「返し方」である。若い人が時間を使って話し合い、アイデアを出す。そこで終わりでは、参加者にとっては「言っただけ」になる。大人でもそうだが、意見を出した後に何も返ってこない場には、次から参加しにくい。若い人ならなおさらである。せめて、出された意見の要約、分類、担当課の受け止め、計画への反映可能性、すぐにはできない理由を、参加者と市民に返してほしい。

注意事項に、画像・映像・名前等が市のホームページやSNS、都市計画マスタープラン、外部メディア等へ掲載される場合があると書かれていることも、丁寧に扱うべきである。広報に使うこと自体が悪いのではない。むしろ、活動の様子を市民に知らせることは大事である。ただ、未成年を含む企画である。本人と保護者が、何に同意しているのかを分かりやすく確認できるようにする必要がある。写真を使うこと、名前を使うこと、発言内容を使うことは、それぞれ意味が違う。ここは一括りにせず、できるだけ選べる形が望ましい。

私は、磐田市が進めている「磐田ここからラボ」の考え方とも、このワークショップをつなげて見たい。公式ページでは、「磐田ここからラボ」を、ここから何かを始めたい人の最初の一歩の場所とし、「校舎のない学び舎」をコンセプトに、多くの市民が多様な学びを楽しみ、対話を通じて人と人との交流が生まれることを目指すと説明している。若い人がまちの未来を話す場は、まさにこの「学び」と「対話」の実践である。都市計画課だけの企画にせず、生涯学習、学校、地域づくり、図書館、にこっと、交流センターとも接続できれば、単発イベントから継続的な学びに変わる。

図2:20人の声を補う参加設計
図2 20名程度の深い対話を起点に、参加できなかった若い世代の声を重ねる考え方。

対案・結論――参加を「聞いた証拠」ではなく「変える材料」にする

では、どうすればよいか。私は、未来まちづくりワークショップを市政につなぐために、次の七点を提案したい。

一、募集時点で「何に使う意見か」を明確にする

まず、今回の意見が何に使われるのかを、募集ページで分かりやすく示してほしい。都市計画マスタープランに関係するのか、今後のまちづくり施策の参考にするのか、若者向けの取り組みの企画に使うのか。目的が曖昧だと、参加者は何を話せばよいか迷う。逆に、「10年後の都市計画を考えるために、移動、居場所、学び、働く場、防災、公園、駅周辺などについて聞きたい」と示せば、参加者は自分の経験から話しやすくなる。

二、参加できない若い人の声を別ルートで集める

20名程度のワークショップは深掘りに向いている。しかし、広く拾うには足りない。学校経由の短いアンケート、オンラインフォーム、図書館やにこっとでの付箋ボード、交流センターでの投票など、軽く参加できる方法を組み合わせたい。特に、平日午前に市役所へ来られない人の声を別に集めることが大事である。参加できる人だけで未来を語ると、まちの見え方が偏る。

三、テーマを生活実感に寄せる

「10年後のまち」と言われると、少し大きすぎる。若い人が話しやすいよう、通学、駅、バス、自転車、公園、図書館、居場所、部活動、地域行事、暑さ、夜道、買い物、進学後に戻りたいかどうかなど、生活に近いテーマから入るとよい。都市計画は専門用語で語るものではない。毎日の不便や、好きな場所、友だちを連れて行きたい場所から始めれば、具体的な意見が出る。

四、発言を「要望リスト」で終わらせない

若い人の意見を聞くと、「あれがほしい」「これを作ってほしい」という要望が出る。それは自然なことである。ただ、市政につなぐには、要望をそのまま並べるだけでは足りない。なぜそれが必要なのか、誰が困っているのか、既存の施設や制度で代替できるのか、優先順位はどうか、費用や管理はどう考えるか。大人側が一緒に整理することで、若い人の声は判断に使える材料へ近づく。

五、開催後1か月以内に「見える報告」を出す

ワークショップ後は、なるべく早く報告を出してほしい。写真だけではなく、出された意見の分類、主な論点、担当課の受け止め、今後の扱いを示す。例えば、「すぐ取り組めること」「検討が必要なこと」「計画に反映する候補」「現時点では難しいこと」に分ける。できないことを隠す必要はない。理由を説明すればよい。返事があること自体が、参加者への敬意になる。

六、参加者を次の場へ誘導する

一度参加した若い人は、地域に関心を持つ入口に立っている。そこで終わらせるのはもったいない。「磐田ここからラボ」、高校生ラボ、市民活動、地域イベント、図書館やにこっとの企画、まちづくりの説明会など、次に関われる場を案内してほしい。参加者が希望すれば、今後の関連イベントの案内を受け取れるようにする。まちづくりは、一回の発言より、続けて関われる導線が大切である。

七、若い人の声を大人の会議にも届ける

最後に、出された意見を、庁内だけでなく、市民委員会、審議会、地域づくり協議会、学校関係者にも届く形にしてほしい。若い人の声が、大人の会議資料の端に小さく載るだけでは弱い。例えば、ワークショップの結果を1枚の資料にまとめ、関連する会議で必ず共有する。可能であれば、参加者本人が発表する機会をつくる。若い人の声は、若い人向けの取り組みだけに閉じ込めるものではない。交通、住宅、公園、防災、公共施設、産業、文化、すべてに関係する。

今回の未来まちづくりワークショップは、良い入口である。対象を若い世代に絞り、無料で、少人数で、未来の磐田を話し合う。これは評価したい。しかし、入口が良いほど、出口を粗末にしてはいけない。若い人に聞いたなら、どう扱ったかを返す。参加できなかった人の声も拾う。単発のイベントではなく、継続的な学びと対話につなげる。そこまでやって初めて、市民参加は形だけではなくなる。

2026年7月9日時点で見える論点ははっきりしている。磐田市は、若い世代をまちづくりの場に招こうとしている。これは前進である。一方で、20名程度の声をどう市政へつなぐか、参加できない人をどう補うか、写真や名前の扱いをどう丁寧にするか、開催後にどう返すかは、まだ設計の余地がある。若い人の声を「聞いた証拠」にしてはいけない。「変える材料」にするべきである。

未来の磐田を考えるなら、未来を生きる人の言葉を本気で扱う必要がある。ワークショップの成功は、当日の盛り上がりだけでは測れない。数か月後、数年後に「あの時の声がここにつながった」と言えるかどうかである。磐田市には、ぜひそこまで見える市民参加にしてほしい。

出典(2026年7月確認)

※日程・対象・定員・申込方法・掲載同意等は変更される可能性があります。最新情報は必ず磐田市公式サイトでご確認ください。