導入——プラの分別が変わる。でも、その裏側は?
磐田市では、令和8年(2026年)4月から、家庭のプラスチックごみの出し方が一部変わる。これまで、ハンガーやバケツといった「製品プラスチック」は、緑色の可燃ごみ袋に入れて燃やしていた。それが、透明の不燃ごみ袋に、プラスチック製容器包装といっしょに入れて出す形になる。分別の区分も「プラスチック製容器包装」から、まとめて「プラスチック」へ。プラマークのないプラスチックも、条件を満たせば資源化されるようになる。収集の回数は、これまでと同じ週1回のままだ。背景には、市が掲げる「2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにする」というゼロカーボンシティの目標がある。
資源を燃やさずに活かす。その方向に、私は基本的に賛成である。けれども、この話を聞いたとき、私の頭にまず浮かんだのは、ごみ処理の現場で昔から聞く、ある話だった。「焼却炉は、プラスチックが入っているほうがよく燃える。逆に、プラを全部抜いてしまうと、燃やすために重油のような燃料を足すことになる」——という話である。今日は、この「資源化の裏側」を、一市民として是々非々に考えてみたい。分別を変えること自体を否定するためではなく、その効果を、差し引きできちんと見ておきたいからだ。
「炉が冷える」という、もう一つの事実
では、その「裏側」を、事実で確かめてみたい。まず、プラスチックはよく燃える。プラスチックを燃やしたときの発熱量は、石炭や石油とほぼ同じくらいあり、紙ごみのおよそ2〜3倍とされる。だからこそ、水分が多くて燃えにくい生ごみを燃やすときの、いわば「燃料」の役割を、可燃ごみのなかのプラスチックが担ってきた面がある。ある試算では、可燃ごみからプラスチックが減ると、可燃ごみ全体の発熱量が3分の2程度にまで下がるとされている。
ここで、磐田市のクリーンセンター(焼却施設)を見ておきたい。この施設は、ごみを燃やした熱を使って発電をしており、その能力は最大で3,000キロワットにのぼる。つまり、ごみのなかのプラスチックが持つ高い熱は、これまで磐田でも、電気を生み出すために使われてきたということだ。ごみを燃やす熱で発電する——これは「サーマルリサイクル(熱回収)」と呼ばれる。
そうなると、話はこう続く。プラスチックを可燃ごみから抜けば抜くほど、燃やすごみの発熱量は下がる。発熱量が下がれば、ごみ発電で得られる電気は減る。そして、もしごみの質が下がりすぎて、ごみ自身の熱だけでは燃え続けられなくなれば——燃焼を保つために、灯油や重油といった化石燃料を「助燃剤」として足すことになりかねない。国の関係資料でも、資源化を進めた結果、ごみが自分の力で燃えられず化石燃料を足すことになれば「本末転倒」になりうる、と指摘されている。冒頭に紹介した現場の話は、決して的外れではないのである。
評価——是々非々で見る
では、この分別変更を、是々非々で見ていきたい。
まず、良いと思う点である。第一に、プラスチックを燃やさずに「モノからモノへ」と資源に回すこと(マテリアルリサイクル)は、一般に、新しくプラスチックを作る量を減らせるため、燃やしてしまうよりも二酸化炭素の排出を抑えられるとされている。資源を活かす方向そのものは、正しい。第二に、これまで別々だった「容器包装」と「製品」のプラスチックをまとめ、より多くを資源へ回そうという整理は、分かりやすさの面でも、資源循環の面でも、前に進む一歩だと思う。ゼロカーボンを掲げる以上、避けて通れない取り組みでもある。
一方で、注文をつけたい点が五つある。
第一に、いちばん大事なこととして、「差し引き」で見てほしい、ということである。プラを資源化して減るぶんの二酸化炭素と、ごみ発電が減るぶん・助燃剤が要るぶんで増える二酸化炭素。この両方を差し引いて、なお環境にとってプラスなのかを確かめる必要がある。とくに磐田は、ごみ発電をしているまちである。発電量への影響という「裏の帳尻」を抜きにして、「資源化したから環境に良い」とだけ言うのは、片手落ちだと思う。
第二に、「本末転倒」を避けることである。プラを抜いた結果、炉が燃えにくくなって重油や灯油を足すことになれば、二酸化炭素を減らすはずの取り組みが、かえって化石燃料を燃やすことにつながってしまう。磐田のクリーンセンターで、実際に助燃剤が必要になるのか、発電量はどれだけ変わるのか。市はこれを把握し、市民に示してほしい。
第三に、そもそも炉のカロリーを保ちたいのなら、プラより先に手をつけるべきは、水分の多い生ごみかもしれない、という点である。生ごみの水切りや減量が進めば、ごみは燃えやすくなり、焼却量そのものも減る。プラを抜く話とあわせて、生ごみ対策も語られてこそ、筋が通る。
第四に、集めたプラスチックの「行き先」の透明性である。分別して集めた製品プラが、本当にモノとして生まれ変わっているのか。それとも、結局は燃料にされたり、燃やされたりしていないか。「資源化」と言うからには、その先で何になっているのかを、市民に示してほしい。
第五に、変更の伝え方である。全世帯に関わる変更でありながら、「なぜ変えるのか」「それでどれだけ環境に良いのか」という肝心の部分が、分別方法の案内の陰に隠れがちだ。手間をお願いするなら、その手間がもたらす効果を、数字も交えて正直に伝えてほしい。
対案・結論——四つの提案
こうした評価を踏まえて、私は次の四点を提案したい。
第一に、クリーンセンターの発電量と、助燃剤(化石燃料)の使用量の推移を公表し、プラ分別を変える前と後で、どう変わるのかを見せてほしい。「資源化で減るCO2」と「発電減・助燃増で増えるCO2」を並べて示せば、市民もこの取り組みの本当の効果を確かめられる。
第二に、集めたプラスチックが「何に生まれ変わるのか」という行き先を、具体的に示してほしい。資源化の中身が見えてこそ、分別する側も納得して手間をかけられる。
第三に、生ごみの水切り・減量の呼びかけを、プラ分別とセットで進めてほしい。炉のカロリーと焼却量の両方を改善するには、そのほうが効く場面もある。
第四に、変更の周知では、方法だけでなく「なぜ・どれだけ効くのか」まで、正直に伝えてほしい。良いことをしている「感じ」ではなく、実際の効果で語ることが、ゼロカーボンを本気で進めることだと思う。
資源を大切に使う方向に、異論はない。プラスチックを燃やして終わりにするより、活かせるものは活かすべきだ。ただ、環境の話は、一つの数字だけを見ると、かえって全体を見誤る。プラを抜けば資源は増えるが、炉の熱は下がる。その両面を、差し引きで、正直に見る。そうしてはじめて、この分別変更は「本当に環境に良い取り組み」になるのだと思う。
最後に一言。私は、ごみ処理の専門家ではない。ただ、現場で長く聞いてきた「プラを抜くと重油を足す」という話が、調べてみると、根拠のある懸念だと分かった。だからこそ思うのだ。市民に分別の手間をお願いするのなら、その裏側で何が起きているのかも、あわせて正直に伝えてほしい、と。手間の意味が腑に落ちてこそ、人は気持ちよく協力できるのだから。
出典(2026年7月確認)
- 磐田市公式ウェブサイト「プラスチックのごみ出し方法が一部変わります」「プラスチックごみ削減」「ゼロカーボンシティの表明」関連ページ
- 磐田市公式ウェブサイト「施設ガイド 磐田市クリーンセンター」(焼却施設の概要・発電能力など)
- プラスチック循環利用協会ほかによる、プラスチックの発熱量・サーマルリサイクル(熱回収)に関する解説
- 環境省・日本環境衛生センター等による、脱炭素社会に向けたごみ処理と、ごみ質低下・助燃に関する資料
※分別方法・施設の仕様・数値等は変更される場合があります。最新情報は必ず磐田市公式サイトでご確認ください。焼却・発電・助燃の実際の状況は、磐田市クリーンセンターの公表情報でご確認ください。