導入——今日は8月16日。3日後に、冬の契約が結ばれます
お盆が明けました。磐田はまだ、外に出るのがためらわれる暑さです。
そんな真夏のさなかに、冬の話が一つ、静かに決着しています。
磐田市観光協会が8月12日、ウェブサイトに1枚の紙を出しました。表題は「令和8年度 JR磐田駅北口広場イルミネーション業務」プロポーザルの審査結果について。
そして、その書類一式に書かれている契約締結予定日は、令和8年8月19日(水)です。
今日から3日後です。
毎年秋、磐田駅の北口が光ります。大クスの周りに光のトンネルができて、しっぺいのオブジェが立って、写真を撮る親子が並ぶ。あれを「いつの間にか、そこにある冬の景色」だと思っている方は多いと思います。私もそうでした。
ところが実際には、あの光は、真夏のうちに発注されています。7月に公告が出て、8月にプレゼンテーションがあって、お盆明けに契約する。10月24日に点灯するために、いま、書類が動いている。
で、いくらなのか。誰が出しているのか。
調べてみたら、片方はすぐ分かりました。もう片方は、どこにも書いてありませんでした。
まず、事実を整理する——上限は250万円、期間は2月28日まで
順番に見ていきます。すべて、磐田市観光協会がウェブで公開している書類に書かれている内容です。
この事業は、平成28年度に始まりました。実施要領には「平成28年度より北口広場のイルミネーション事業が始まって11年目を迎える」とあります。昨年度の同じ書類には「10年目」と書かれていました。数え方まで、律儀に更新されています。
今年度の骨格は、こうです。
- 業務名 令和8年度 JR磐田駅北口広場イルミネーション業務
- 公告日 令和8年7月3日(金)12時
- 企画提案書の提出期限 7月24日(金)12時
- プレゼンテーション 8月7日(金)午後
- 審査結果通知 8月7日(金)予定
- 契約締結予定 8月19日(水)
- 履行期間 契約締結日の翌日から令和9年2月28日
- 事業費上限額 2,500,000円(消費税および地方消費税を含む)
- 前払金 なし
- 契約方法 公募型プロポーザル方式による随意契約
そして仕様書には、現場の日程がここまで細かく書かれています。
設置は着手日から10月24日まで。点灯期間は令和8年10月24日から令和9年2月15日。点灯式は10月24日18時点灯予定。点灯時間は17時から22時。撤去は令和9年2月16日から2月28日。
つまり約4か月間、毎日5時間光るという契約です。
去年と比べると、金額と日程が少し動いています。
上限額は240万円から250万円へ、10万円(約4パーセント)の増額です。資材も人件費も上がっている時期ですから、むしろ抑えたほうだと思います。
目立つのは日程が丸ごと1か月ほど後ろにずれたことです。去年は6月11日公告・7月31日契約でした。今年は7月3日公告・8月19日契約。点灯日は10月25日から10月24日へ、ほとんど動いていません。準備に使える時間が、去年より3週間ほど短くなっている計算になります。
そして、選ばれた事業者です。
有限会社WEIHNACHTEN(ヴァイナハテン)。所在地は愛知県一宮市。去年とまったく同じ会社です。ドイツ語で「クリスマス」を意味する社名の会社が、2年続けて磐田駅前の冬を担当することになりました。
発注しているのは、市役所ではありません
ここが、この件でいちばん誤解されやすいところだと思います。
この業務を発注しているのは磐田市(市役所)ではなく、磐田市観光協会です。実施要領の問合せ先も、契約の相手方も、すべて観光協会になっています。所在地は磐田市中泉一丁目1-5。つまり、光る広場のすぐそばに事務所があります。
広場そのものは市の施設です。電源も、書類を読むかぎり広場の既設設備から取ります。別紙「電源確保仕様」には、こう書かれています。
- 樹木エリアは床板の下を新規配線する
- しっぺい像エリアは照明器具から分岐し、雨天対応処理をする
- 七重の塔エリアは内部配線から分岐する
- パラソルエリアで床上配線をする場合は、屋外用の硬質ケーブルプロテクターを使い、接着材は使わない
市の広場の電気を分けてもらって、観光協会が持っている機材を、愛知県の会社が設置して4か月間守る。ざっくり言うと、そういう座組みです。
その「観光協会が持っている機材」も、一覧が公開されています。LED電球ゴールド100球が190本、しっぺい・ハート立体LED電球が1台、テーブルツリーの部材が5台分、大クスを囲む楠木アーチのパイプが計105本とジョイント140個、シューティングラタン216球が9本、しっぺいの足跡が19本——といった具合に、16項目。ストリングスライト50セットには「令和7年度購入」と注記まで付いています。
正直に言って、ここまで出している自治体関連団体は、そう多くありません。
評価——良い点を3つ、注文を3つ
まず、良いと思う点から書きます。
1つ目。書類を、ほぼ全部そのまま出していること。
実施要領、仕様書、配置図、電源確保仕様、準備品一覧、参考図面まで、PDFで9本。審査項目と配点も、点数まで公開されています。
デザイン性40点(コンセプトの適合20点+磐田をアピールできるか20点)、業務の実現性40点、一般事項20点で100点満点。安全管理への配慮に10点、緊急時と保守点検の対応に10点が振られています。「きれいならいい」という審査ではない、と読める設計です。
2つ目。金額の上限を、先に出していること。
250万円という数字が、公告の時点で公開されている。応募する側は、その中で何ができるかを考えて出す。後から膨らませない仕組みが、最初に置かれています。「予算の範囲内で契約する」とも明記されています。
3つ目。現場の条件を、隠していないこと。
仕様書に「JR磐田駅北口広場は常に強風が吹く場所である」と、はっきり書いてあります。台風も考慮して転倒・飛散させないこと、とも。
さらに、大クスは県指定の史跡名勝天然記念物なので直接の装飾はしない、根元の柵内には入らないという条件も明記されています。あの木を守りながら光らせる、という線引きが書類の側でされている。これは評価したい。
そのうえで、注文を3つ書きます。
1つ目。公表された「審査結果」が、1枚の紙に事業者名と住所だけ。
8月12日に出た結果の紙には、委託予定事業者の名前と所在地しか書かれていません。
何社が応募したのか。得点は何点だったのか。次点はいたのか。どれも分かりません。ここまで丁寧に入口の書類を出しておいて、出口が1枚というのは、もったいない。
2つ目。「一切応じない」という一文が、強すぎる。
実施要領の選定方法には、こう書かれています。
「評価経過及び結果等に関する問い合わせには、一切応じないこととする。」
応募者どうしの詮索を避ける趣旨は分かります。審査委員を守る必要もあるでしょう。ただ、これは応募した事業者だけでなく、読んだ市民にも向いた一文として置かれています。
公金に近いお金で、駅前という公共空間を4か月使う事業です。「経過は説明しません」ではなく、「ここまでは出します」と書けるはずだと思います。
3つ目。原資が、どこにも書かれていない。
これが、この記事の題に据えた問いの答えです。
「いくら」は分かりました。上限250万円です。
「誰が」は、契約する主体までしか分かりませんでした。
観光協会が発注する、というところで書類は終わっています。その250万円が、市からの補助なのか、会員の会費なのか、協賛なのか、その組み合わせなのか。公開された9本のPDFのどこにも、内訳は書かれていません。協会のサイトにも、収支を示すページは見当たりませんでした。
加えて、4か月・毎日5時間ぶんの電気代を誰が負担するのかも、書類からは読み取れません。250万円は「設置・撤去・保守とデザイン」の上限であって、シーズン全体の総額ではない、ということです。
250万円は、高いのか安いのか
ここで、金額の大きさを一度、置き直しておきます。
磐田市の令和8年度一般会計当初予算は771億9,000万円です。250万円は、そのおよそ3万分の1にあたります。
市の予算の話としては、小さい。四捨五入で消えてしまう規模です。
一方で、私の仕事の感覚で言うと、250万円は住宅1軒の外構工事がまるごと1件できる金額です。決して「はした金」ではない。
そして、この事業には11年という積み重ねと、協会が買い足してきた機材があります。単年で250万円という見え方をしていますが、実際には毎年の委託費に加えて、備品が資産として積み上がってきた事業です。
だからこそ、私は「やめろ」とは言いません。
駅前が暗いまちと、駅前が光るまちでは、そこに住む人の気分が違います。不動産の仕事で駅周辺の物件を案内していると、これは実感します。冬の夕方、あの広場に人がいるかどうかは、まちの体温そのものです。
言いたいのは、そこではありません。金額を出せているのに、あと一歩で全体が見えない。その一歩が惜しいということです。
対案・結論——4つ、提案します
第一に、審査結果の紙に、2行足すこと。
「応募者数 ◯者」「委託予定事業者の得点 ◯点/100点」。この2行です。個社の内訳を出せというのではありません。何社の中から選ばれたのかが分かるだけで、この紙の意味はまったく変わります。
1社しか応募がなかったのなら、それはそれで大事な情報です。競争がなかったという事実は、隠すより、次の年の改善材料にしたほうがいい。
第二に、契約が済んだら、契約金額を1行載せること。
上限は250万円と分かっています。では実際はいくらで契約したのか。8月19日を過ぎれば確定する数字です。結果の紙に追記するだけでできます。
上限より下で契約できたのなら、それは観光協会の手柄です。出さない理由のほうが見つかりません。
第三に、シーズンが終わったら「1冬いくらだったか」を出すこと。
委託費に加えて、電気代、備品の購入・修繕費を足した総額です。撤去が終わるのは令和9年2月28日ですから、3月には数字が揃います。
これは市民を納得させるためというより、続けるための数字だと思っています。「4か月光らせて、まち全体で◯万円でした」と言えれば、協賛を募るときも、会費をお願いするときも、話が早い。
第四に、原資の内訳を、1枚にすること。
市の補助がいくら、会費がいくら、協賛がいくら。この3行があれば、「誰がいくら出しているのか」という問いは、それだけで終わります。
そして、もし協賛の枠があるなら、そう書いておけば出したい店や会社が出てきます。磐田には、駅前が光ることで実際に得をする商売が、たくさんあります。
最後に一言。
私は不動産の仕事で、実家じまいや相続の相談を受けます。そこで毎回ぶつかるのが、「いくらかかるか分からないから、決められない」という壁です。
金額が見えないと、人は判断を先送りにします。逆に、金額さえ見えれば、たいていの人は腹をくくる。高くても、納得すれば払うんです。
まちの事業も、同じだと思っています。
250万円という数字は、もう公開されています。あとは、その250万円がどこから来て、シーズン全体でいくらになったのかを、あと数行足すだけです。批判をかわすためではなく、11年目の事業を12年目につなぐために。
3日後、契約が結ばれます。10月24日の18時、大クスの周りに明かりがつきます。
その日、私はたぶん、去年と同じように広場に立って「きれいだな」と思うはずです。そのときに、この光がいくらで、誰のお金で灯っているのかを知っていたほうが、たぶんもう少し、うれしい。
出典(2026年8月確認)
- 磐田市観光協会「令和8年度磐田駅北口広場イルミネーション業務プロポーザルの実施について」(2026年8月12日更新。実施要領・仕様書・別紙・様式一式を掲載) https://kanko-iwata.jp/2026/08/post-15918/
- 磐田市観光協会「令和8年度 JR磐田駅北口広場イルミネーション業務 プロポーザル実施要領」(令和8年7月。事業費上限額2,500,000円(消費税及び地方消費税に相当する額を含む)、履行期間は契約締結日の翌日から令和9年2月28日、前払金なし、公募型プロポーザル方式による随意契約。公告日令和8年7月3日、企画提案書提出〆切7月24日、プレゼンテーション8月7日、契約締結予定8月19日。平成28年度に始まり11年目。評価点100点満点の配点と「評価経過及び結果等に関する問い合わせには、一切応じないこととする」の記載。問合せ先は磐田市中泉一丁目1-5、電話0538-33-1222) https://kanko-iwata.jp/wp2/wp-content/uploads/2026/07/a616827708f6de8bacbb32ad0766ce37.pdf
- 磐田市観光協会「令和8年度 JR磐田駅北口広場イルミネーション業務委託仕様書」(点灯期間は令和8年10月24日から令和9年2月15日、点灯式は10月24日18時点灯予定、点灯時間17時から22時、撤去期間は令和9年2月16日から2月28日。「JR磐田駅北口広場は常に強風が吹く場所である」、大クスは県指定史跡名勝天然記念物のため直接装飾しない、等の記載) https://kanko-iwata.jp/wp2/wp-content/uploads/2026/07/1297608d9d875f3200ef0c06a16b9d27-2.pdf
- 磐田市観光協会「『令和8年度 JR磐田駅北口広場イルミネーション業務』プロポーザルの審査結果について」(委託予定事業者=有限会社WEIHNACHTEN、所在地は愛知県一宮市南小渕字吹揚33番地の2) https://kanko-iwata.jp/wp2/wp-content/uploads/2026/08/kekka.pdf
- 磐田市観光協会「別紙2 電源確保仕様」(樹木エリアは床板の下を新規配線、しっぺい像エリアは照明器具から分岐、七重の塔エリアは内部配線から分岐、パラソルエリアの床上配線は屋外用硬質ケーブルプロテクターを使用) https://kanko-iwata.jp/wp2/wp-content/uploads/2026/07/84e210b4725b6d814264244257f78b84.pdf
- 磐田市観光協会「別紙3 観光協会準備品一覧」(LED電球ゴールド100球190本、しっぺい・ハート立体LED電球1台、テーブルツリー部材、楠木アーチ部材、シューティングラタン216球9本、しっぺい足跡19本、ストリングスライト50セット※令和7年度購入など全16項目) https://kanko-iwata.jp/wp2/wp-content/uploads/2026/07/26ede60e2e239999ade01ba5295b2bfc.pdf
- 磐田市観光協会「令和7年度磐田駅北口広場イルミネーション業務プロポーザルの実施について」および同実施要領(事業費上限額2,400,000円、公告日令和7年6月11日、契約締結予定令和7年7月31日、10年目、企画提案書は6部提出) https://kanko-iwata.jp/2025/07/post-15003/
- 磐田市観光協会「『令和7年度 磐田駅北口広場イルミネーション業務』プロポーザルの審査結果について」(委託予定事業者=有限会社WEIHNACHTEN) https://kanko-iwata.jp/wp2/wp-content/uploads/2025/07/0711.pdf
- 磐田市「令和8年度 当初予算」(一般会計771億9,000万円) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/gyouzaisei/yosan/1015750.html
※金額・日程は、2026年8月16日時点で磐田市観光協会が公開している実施要領・仕様書・審査結果によります。実施要領には「スケジュールについては変更となる可能性があります」と記載されており、契約締結日や契約金額は今後変わる場合があります。事業費上限額2,500,000円は委託業務の上限であり、実際の契約金額は本記事の執筆時点で公表されていません。電気代の負担者および事業費の原資の内訳についても、公開されている書類からは確認できなかったという趣旨であり、負担や支出がないという意味ではありません。本文中の提案および「250万円は住宅1軒の外構工事1件分」といった比較は筆者個人の意見・感覚であり、磐田市や磐田市観光協会が検討していると確認したものではありません。最新の情報は磐田市観光協会および磐田市の公式サイトでご確認ください。
