この記事について。これは磐田で不動産・介護の仕事をしている大石ひろゆきが、一本の映画をきっかけに考えたことを綴る余談です。上映日程や作品の基本情報は出典に基づいて確認していますが、内容の受け止め方は筆者個人の感想であり、映画の結末やあらすじを詳しく明かすものではありません(本文の確認は2026年8月)。

導入——不動産と介護の現場から、映画の話を書く理由

ふだんこのサイトでは、磐田市政や行政のAI活用について、できるだけ事実に基づいて書いています。今日はその手を止めて、一本の映画の話をさせてください。

私は磐田で不動産の仕事をしながら、介護の相談も受けています。実家じまいや空き家のご相談で伺うお宅では、「そろそろ」という言葉の奥に、ご本人やご家族の「看取り」への向き合い方が透けて見えることがあります。だからでしょうか、静岡で上映されると知った映画『お別れの歌』のタイトルと「生前葬」というテーマが、妙に気になりました。

政治や制度の話ではありません。ただ、日々の仕事で「別れ」に接する立場として、素直に感じたことを書き残しておきたいと思います。

普段の記事では、行政の取り組みを事実に基づいて評価したり、注文をつけたりしています。今回はその型を少し外れて、私自身の受け止め方をそのまま書く回にします。裏取りが必要な部分(上映日程や作品の基本情報)はきちんと確認したうえで、それ以外の感想の部分は「私はこう感じた」という一人称のまま残しておこうと思います。

まず事実——静岡東宝会館での上映は6月19日から

『お別れの歌』は、柴田啓佑監督による作品です。雪村夢大役に濱正悟さん、歌川ハルコ役に今泉佑唯さん、夢大の祖父・雪村シゲル役に六平直政さんが出演しています。

公開は2026年4月17日、東京・シモキタエキマエシネマK2からスタートしました。満席の回が続いたことから上映が延長され、全国での公開が順次拡大していったと報じられています。

そして静岡東宝会館では、2026年6月19日(金)から7月2日(木)までの上映が決まりました。この記事の公開日と重なる時期です。栃木・宇都宮ヒカリ座(5月8日〜14日)、大阪・第七藝術劇場(6月13日〜19日)、長野・上田映劇(7月3日〜)など、各地の劇場を順に巡っていく形での公開だったようです。

主題歌には、浪漫革命の新曲「愛を込めて」が起用されています。派手な宣伝を大々的に打つタイプの大作映画ではなく、一つの劇場から始まって、口コミとともに上映館を広げていった作品のようです。「満席回が続いたことによる延長」という経緯そのものが、観客の反応が先にあって公開規模が後からついてきたことを示しています。私はこの広がり方に、静かな説得力を感じました。

映画『お別れの歌』の上映の広がり。2026年4月17日に東京で公開後、満席が続き上映延長・全国拡大。静岡東宝会館では6月19日から7月2日まで上映
図1 『お別れの歌』上映の広がり。静岡東宝会館は6月19日〜7月2日。

物語の入り口——「生前葬」という切り口

あらすじの範囲で紹介すると、老人ホームを抜け出したおじいちゃんが、自分は末期がんだと思い込み「生前葬をあげたい」と言い出すところから物語が動き出します。孫とその恋人が、招くべき人を探す旅に同行することになる、というのが公開されている筋書きです。

「生前葬」という言葉を、私は実務の中で聞いたことがほとんどありません。一般的な葬儀の相談や、実家じまい・お墓の整理といった相談は日常的にお受けしますが、「生きているうちに、自分の葬儀をする」という発想そのものが、多くの人にとってまだ馴染みの薄いものだと思います。だからこそ、この映画が「別れを準備する旅」として描かれていること自体に、興味を惹かれました。

結末やディテールをここで明かすつもりはありません。公開されている情報の範囲で言えるのは、これが深刻な題材を扱いながらも、ドタバタとした人捜しの旅として描かれる作品らしい、ということです。「死」というテーマを正面から重く描くのではなく、旅と人捜しという動きのある形に載せている点に、私はこの作品の工夫を感じました。

不動産の仕事をしていると、「亡くなってから初めて、故人の交友関係の広さに驚く」というご家族の言葉を聞くことがあります。誰に感謝を伝えたかったのか、誰を大切に思っていたのか。それは、本人が元気なうちにしか、本人の口から聞くことができません。「生前葬をあげたい」という祖父の思いつきが、結果として「招くべき人を探す旅」になるという構造そのものが、この当たり前だけれど見過ごされがちな事実を、物語として体現しているように思えます。

私の現場から見えること——生前葬と看取り

ここからは、あくまで私個人の感想として読んでください。

介護や不動産の相談で伺うお宅では、「元気なうちに、身の回りを整理しておきたい」という声を、以前よりよく聞くようになった気がします。実家の片づけ、相続の相談、施設探し。どれも「別れ」を先取りして準備する行為だと、私は感じています。生前葬というのは、その延長線上にある、もっとも直接的な形の一つなのかもしれません。

一方で、実際に看取りの場面に立ち会う方々からは、「準備していたつもりでも、いざとなると違った」という言葉も聞きます。生前葬で伝えたはずの感謝の言葉と、実際に別れが訪れた瞬間の気持ちは、必ずしも同じではないのだろうと想像します。この映画が「別れの準備」から「まだ生きている今」への視点の転換を描いているのだとすれば、そこは私の実感とも重なる部分があると感じました。あくまで想像の範囲ですが。

もう一つ、私が仕事の中で強く感じているのは、「片づける」ことと「別れる」ことは、似ているようで違うという点です。実家の家財を整理し、名義を整え、空き家を売却する。この一連の作業は、ある意味で「生前葬」に近い準備行為だと思います。書類上、物理上の整理は進みます。けれど、そこに気持ちの整理が伴っているかどうかは、また別の話です。制度や手続きをどれだけ整えても、「まだ生きている今」を大切にする姿勢そのものは、誰かが代わりにやってくれるものではありません。この映画のタイトルが、そのことを静かに突きつけてくるように感じています。

生前葬と一般的な葬儀の違いを整理した図。生前葬は本人が生きているうちに感謝を伝える場、一般的な葬儀は本人が亡くなった後に故人を偲ぶ場
図2 「生前葬」と一般的な葬儀の違い(筆者整理)。

結び——まだ生きている今を

正直に言うと、私はまだこの映画を、静岡での上映期間に合わせて観に行こうと決めただけで、実際には観ていません。ですから「傑作だ」とも「こういう映画だ」とも言い切ることはできません。ただ、タイトルと題材を知っただけで、自分の仕事と重なる部分をこれだけ考えさせられたのは、久しぶりのことでした。

静岡東宝会館での上映は、2026年6月19日から7月2日までです。生前葬や看取りに縁のある仕事をしている方はもちろん、そうでない方にも、「まだ生きている今」というタイトルの視点は、静かに響くものがあるのではないかと思います。私自身も、上映期間のうちに一度、劇場に足を運んでみるつもりです。

この記事は、いつもの「事実を並べて、注文をつける」形式ではありません。ただ、一本の映画のタイトルから、自分の仕事につながる考えを引き出せたこと自体が、私にとっては小さな収穫でした。磐田で日々の暮らしに向き合う一人として、こういう余談も、これからときどき書いていきたいと思います。

出典(2026年8月確認)

  • 映画.com「お別れの歌」作品情報(監督=柴田啓佑、出演=濱正悟〈雪村夢大〉・今泉佑唯〈歌川ハルコ〉・六平直政〈雪村シゲル〉、公開日=2026年4月17日) https://eiga.com/movie/105742/
  • 映画.com ニュース「柴田啓佑監督の長編最新作『お別れの歌』満席回続出 上映再々延長&全国公開拡大決定!」(静岡東宝会館の上映期間=6月19日(金)〜7月2日(木)。東京・シモキタエキマエシネマK2=4月17日〜5月28日、栃木・宇都宮ヒカリ座=5月8日〜14日、大阪・第七藝術劇場=6月13日〜19日、長野・上田映劇=7月3日〜、京都・アップリンク京都=8月28日〜9月3日) https://eiga.com/news/20260509/11
  • 浪漫革命 OFFICIAL SITE「新曲『愛を込めて』が、映画『お別れの歌』の主題歌に決定!」 https://romankakumei.com/contents/1053618
  • 映画『お別れの歌』公式サイト https://owakarenouta-movie.com/

本文中の映画の内容紹介は、各出典で公開されている範囲の情報にとどめ、結末やディテールには触れていません。生前葬と看取りに関する記述は、筆者が不動産・介護の現場で受けた相談の範囲での実感であり、統計や学術的な調査に基づくものではありません。上映期間や劇場は変更される場合がありますので、実際に観に行かれる際は各劇場の公式情報をご確認ください。