導入——「スポーツのまち磐田」と言うとき、私たちは何を思い浮かべているか

磐田で「スポーツのまち」と言えば、たいていの人が同じ絵を思い浮かべます。

ヤマハスタジアムのスタンド。ジュビロード。メモリアルマラソン。そして、ジュビロ磐田。

私も、そう思っていました。

ところが8月17日、市のサイトに一つの告知が載りました。

「令和8年度いわたボッチャフェスティバル」。9月12日(土曜)、磐田市総合体育館。

ボッチャは、パラリンピックの正式競技です。白い目標球(ジャックボール)に向けて、赤と青のボールを6球ずつ投げ、どちらが近づけたかを競います。手で投げられない人は、ランプ(勾配具)という滑り台のような道具を使い、介助者に向きを伝えて転がします。

そして、この競技の面白いところは、ここです。

障がいのある人と、ない人が、同じルールで、同じコートで、対等に勝負できる。

市の告知にも、はっきり書いてあります。「障がいの有無にかかわらずどなたでもご参加いただけます」。

私はこの告知を読んで、少し考え込みました。ジュビロのまちに、もう一つのコートがある。けれど私は、そのコートの存在を、これまでほとんど意識してこなかった。

今日は、この1本のイベントを入り口にして、磐田の障がい者スポーツが、いまどのあたりにいるのかを書きます。

まず、事実を整理する——9月12日に何が開かれるのか

市の告知(ページ更新日2026年8月17日)を、そのまま並べます。

令和8年度いわたボッチャフェスティバルの開催概要を6項目のカードで整理した図。開催日時は2026年9月12日土曜日の午前9時15分から午後0時30分まで。会場は磐田市総合体育館、磐田市見付4075で、駐車場は210台、かぶと塚公園と共用。対象はどなたでもで磐田市内在住・在勤・在学の方、1チーム3人から5人で先着16チーム。参加料は1チーム500円で、5人で組めば1人あたり100円。申込締切は2026年9月2日水曜日で、告知が8月17日のため受付期間は実質2週間。フェスティバル内でボッチャ体験会が別に開かれ、先着25名、申込フォームも別。主催は磐田市と磐田市スポーツ推進委員会。障がいの有無にかかわらず参加でき、市は「会場には空調がなく、気温が高いことが予想されます」と注意事項に明記している。磐田市の公表資料から作成し、2026年8月18日に確認したもの。
図1 いわたボッチャフェスティバルの概要(磐田市「令和8年度いわたボッチャフェスティバルを開催します」ページ更新日2026年8月17日から作成)

参加できるのは、磐田市内在住・在勤・在学の方。1チーム3〜5人で申し込み、先着16チームまで。当日は試合形式で行われます。

参加料は1チーム500円。5人で組めば、1人あたり100円です。

申込締切は9月2日(水曜)。告知が出たのが8月17日ですから、受付期間は実質2週間ちょっとしかありません。

もう一つ、見落としやすいものが同じページにあります。フェスティバルの中で「ボッチャ体験会」が別に開かれます。先着25名。こちらは試合ではなく体験で、申込フォームもフェスティバルとは別です。

試合には出たくない、でも触ってみたい。その人のための入り口が、ちゃんと分けて用意されている。ここは、よく考えられていると思いました。

主催は磐田市と磐田市スポーツ推進委員会。そして、市はこう書き添えています。「ボッチャの選手として世界で活躍されている宮原陸人選手が来場されます」。

磐田に、障害者手帳を持っている人は7,572人います

ここで、数字を一つ置きます。

市の「第4期磐田市障害者計画」(令和6年度〜令和11年度)によれば、磐田市で障害者手帳を持っている人は、令和5(2023)年9月末現在で7,572人。市の人口166,933人に対して、4.54%です。

内訳は、身体障害者手帳4,769人、療育手帳1,610人、精神障害者保健福祉手帳1,193人。

22人に1人、と言い換えられます。小学校のクラスに1人か2人。町内会の班に、たいてい1人はいる、という規模です。

そして、この5年の動きに、はっきりした傾向があります。

手帳を持つ人の総数は増えているのに、身体障害者手帳の人は減っている。令和元年度の4,941人から、令和5年度は4,769人へ。かわりに増えているのが、療育手帳(1,492人→1,610人)と、精神障害者保健福祉手帳(908人→1,193人)です。精神は5年で3割増えました。

これは、磐田の人口が減っているなかでの数字です。市の人口は169,673人から166,933人へ減り、手帳所持者の対人口比は4.33%から4.54%へ上がりました。

もう一つ、全国の数字を並べます。スポーツ庁の令和5年度調査によれば、20歳以上の障害者で、週1回以上運動・スポーツをしている人は32.5%。同じ年の成人全体は52.0%でした。

およそ20ポイントの差です。

磐田市の障害者手帳所持者数の推移を積み上げ棒グラフで示し、右側に障害者と成人一般のスポーツ実施率を並べた図。手帳所持者の総数は令和元年度2019年が7,341人で対人口比4.33パーセント、令和2年度2020年が7,394人で4.37パーセント、令和3年度2021年が7,404人で4.42パーセント、令和4年度2022年が7,473人で4.46パーセント、令和5年度2023年が7,572人で4.54パーセント。令和5年度の内訳は身体障害者手帳4,769人、療育手帳1,610人、精神障害者保健福祉手帳1,193人。身体障害者手帳は令和元年度の4,941人から減り続けているのに対し、療育手帳は1,492人から1,610人へ、精神障害者保健福祉手帳は908人から1,193人へおよそ3割増えている。右側は週1回以上の運動・スポーツ実施率で、20歳以上の障害者が32.5パーセント、成人全体が52.0パーセントとおよそ20ポイントの差がある。第4期磐田市障害者計画とスポーツ庁の令和5年度調査から作成し、2026年8月18日に確認したもの。
図2 磐田市の障害者手帳所持者数の推移(「第4期磐田市障害者計画」より)と、週1回以上の運動・スポーツ実施率(スポーツ庁 令和5年度調査、全国)

評価——良いと思う点、三つ

まず、良いと思ったところを挙げます。

一つ目。「障がい者のための大会」にしなかったこと。

告知の対象欄は「どなたでも」です。障がいのある人だけを集めて別枠で開く、という形にしていません。家族や友達とチームを組んで、同じコートで試合をする。

これは、言葉の問題ではなく設計の問題です。「障がい者向け」と書いた瞬間に、それ以外の人は申し込まなくなり、当事者も「自分は対象なのか」と身構えます。その両方を避けている。

二つ目。1チーム500円という価格。

5人チームなら1人100円です。「行ってみて合わなかったら、それはそれでいい」と思える金額です。スポーツの入り口でいちばん効くのは、種目の魅力ではなく、失敗したときの損の小ささだと私は思っています。

三つ目。体験会を別に、25名分用意したこと。

チームを3人以上で組む、というのは、実はハードルです。一緒に行く人がいない人は、その時点で申し込めません。体験会が別枠であることで、1人でも行ける道が残っています。

注文したい点も、三つあります

ここからは、注文です。

1つ目。会場に空調がありません。

これは私が言っているのではなく、市自身が告知に書いています。体験会の注意事項に、こうあります。「会場には空調がなく、気温が高いことが予想されますので、ご承知のうえご参加ください」。

正直に書いてあることは、評価します。問題は、9月12日の午前中に、空調のない体育館で、車いすの人が3時間過ごすということです。

体温調節に障がいのある人がいます。脊髄を損傷した人は、汗をかく機能そのものが落ちている場合があります。薬の副作用で暑さに弱い人もいます。「暑いので承知のうえで」という一文は、健康な人には注意書きですが、ある人たちにとっては参加できるかどうかの分かれ目です。

この夏、私は暑さの記事を書きました。9月12日の磐田が涼しい保証は、どこにもありません。

2つ目。年に1回で終わってしまう。

先着16チーム、1チーム3〜5人。満員になっても、試合の参加者は最大80人です。体験会の25人を足して、105人。

手帳を持っている人が7,572人いる市で、年に1回、105人。

これは市を責めたいのではありません。イベントは、続きがあって初めて意味を持つ、という話です。9月12日にボッチャを面白いと思った人が、10月にどこへ行けばいいのか。市のサイトを見ても、その先が書かれていません。

3つ目。市のスポーツ事業のなかで、障がいに触れるものが2本しかない。

市の「スポーツ教室・イベント情報」に並んでいるのは、次の8本です。

8本のうち、障がいに正面から触れているのは、太字の2本です。

「第4期磐田市障害者計画」には、「文化・スポーツ・レクリエーション活動の充実」という項目があり、その中に「障がい者スポーツ大会への参加促進」「スポーツをする場の提供」が並んでいます。そして「スポーツ活動支援事業=各種スポーツ教室や体験会の開催」の担当課は、スポーツのまち推進課と明記されています。

計画には書いてある。担当課も決まっている。けれど、市民から見える形は、いまのところ年1回のフェスティバルと、親子向けの教室1本です。

対案・結論——四つ、提案します

第一に、9月12日の会場に、送風機と休憩スペースを置くこと。

空調の新設は、すぐにはできません。けれど、スポットクーラーと大型扇風機、そして日陰になる休憩コーナーは、その日のうちに用意できます。車いすのまま入れる休憩スペースがあるかどうかで、滞在できる時間が変わります。「承知のうえで」と書くなら、その隣に「こういう対策をしています」を書いてほしい。

第二に、当日、「次はここでできます」の紙を1枚配ること。

総合体育館の小体育場でも、交流センターでも、月1回でいい。ボッチャのボールを借りて打てる場所と日時を、A4で1枚。これがあるかどうかで、105人のうち何人が続けるかが決まります。新しい予算は、ほとんど要りません。

第三に、市のサイトに「障がいのある人のスポーツ」の入り口を1ページ作ること。

いまは、ボッチャの告知も、のびのびスポーツ教室も、8本並んだ一覧の中に埋もれています。県の障害者スポーツ大会(わかふじスポーツ大会)の情報も、市のサイトからはたどりにくい。

「障害者計画」には「情報提供をホームページ等で行い」と書かれています。その約束を、1ページにまとめて果たしてほしい。

第四に、告知を、もう2週間早く出すこと。

8月17日告知、9月2日締切。介助が必要な人は、この2週間で、送迎の手配と、当日付き添う人の予定と、体調の見通しを立てなければなりません。健康な人が「土曜、空いてるからやろうか」と決めるのとは、必要な時間が違います。

先着順で16チーム、という設計なら、なおさら早いほうがいい。準備に時間がかかる人ほど、先着に負けます。

最後に一言。

私は不動産の仕事で、車いすを使うようになったご家族のいる家を、何軒か見ています。

玄関に段差がある。廊下の幅が足りない。トイレのドアが内開きで、中で倒れたら開けられない。そういう家を、リフォームするのか、住み替えるのかという相談を受けます。

そのとき、いちばん重い言葉は、「もう、外には出ないから」です。

出ない前提で家を直すと、家はどんどん小さくなります。そして、出ない前提の暮らしは、驚くほど早く定着します。

だから私は、「9月12日の午前中、総合体育館に行く用事がある」というだけのことに、けっこうな意味があると思っています。

ボッチャは、立てなくてもできます。手で投げられなくてもできます。大きな声が出せなくてもできます。そして、家族に勝てます。

ジュビロのまちには、大きなスタジアムがあります。それは磐田の誇りです。けれど、あのピッチに立てる人は、この街に何人いるでしょうか。

総合体育館の床にテープで引いたボッチャのコートには、22人に1人が立てます。

9月2日まで、あと2週間です。3人集まれば、申し込めます。

出典(2026年8月確認)

  • 磐田市「令和8年度いわたボッチャフェスティバルを開催します」(ページ更新日2026年8月17日。開催日2026年9月12日〈土曜〉、午前9時15分〜午後0時30分。会場=磐田市総合体育館〈磐田市見付4075〉。対象=どなたでも〈磐田市内在住・在勤・在学の方〉。当日は試合形式、1チーム3〜5人で申込、先着16チーム。参加料1チーム500円。申込締切2026年9月2日〈水曜〉。主催=磐田市・磐田市スポーツ推進委員会。「障がいの有無にかかわらずどなたでもご参加いただけます」「ボッチャの選手として世界で活躍されている宮原陸人選手が来場されます」と記載。フェスティバル内で「ボッチャ体験会」を先着25名で別途開催し、申込フォームも別。体験会の注意事項に「会場には空調がなく、気温が高いことが予想されますので、ご承知のうえご参加ください」と記載。問い合わせ=スポーツ文化観光部 スポーツのまち推進課 電話0538-37-4832) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/sports_midokoro/sports_machizukuri/1008986/1012792.html
  • 磐田市「スポーツ教室・イベント情報」(掲載8件=いわたホームタウンスポーツフェスティバル、ウォーキングマップ、令和8年度いわたボッチャフェスティバル、発達支援親子のびのびスポーツ教室、パブリックビューイング〈明治安田J2リーグ ジュビロ磐田対栃木シティ〉、令和8年度親子ふれあい体育教室、令和8年度わくわくニュースポーツ教室、PEP TALK講座) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/sports_midokoro/sports_machizukuri/1008986/index.html
  • 磐田市「いわたチャレンジプラン 第4期磐田市障害者計画(令和6年度〜令和11年度)/第7期磐田市障害福祉計画・第3期磐田市障害児福祉計画(令和6年度〜令和8年度)」(障害者手帳所持者数の推移=令和元年度7,341人〈対人口比4.33%〉、令和2年度7,394人〈4.37%〉、令和3年度7,404人〈4.42%〉、令和4年度7,473人〈4.46%〉、令和5年度7,572人〈4.54%〉。令和5年度の内訳は身体障害者手帳4,769人、療育手帳1,610人、精神障害者保健福祉手帳1,193人。磐田市人口は令和元年度169,673人、令和5年度166,933人。各年度3月末日現在、令和5年度は9月末日現在。身体障害者手帳所持者は令和元年度4,941人から減少傾向、療育手帳は1,492人から、精神障害者保健福祉手帳は908人からいずれも増加傾向。「文化・スポーツ・レクリエーション活動の充実」の項に①障がい者スポーツ大会への参加促進 ②スポーツをする場の提供 ③文化・余暇活動の参加促進 ④居場所づくりへの支援を掲げ、「スポーツ活動支援事業=各種スポーツ教室や体験会の開催」の担当課をスポーツのまち推進課と明記) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/keikaku/kenkou_fukushi/1002713.html
  • スポーツ庁「令和5年度『障害児・者のスポーツライフに関する調査研究』の調査結果について」(令和6年3月19日公表。20歳以上の障害者の週1回以上の運動・スポーツ実施率32.5%〈前年度から1.6ポイント増〉、週3回以上18.1%。7〜19歳は週1回以上34.4%〈前年度から0.9ポイント減〉、週3回以上19.1%) https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/jsa_00168.html
  • スポーツ庁「令和5年度『スポーツの実施状況等に関する世論調査』の結果を公表します」(令和6年3月19日公表、令和5年11月調査。20歳以上の週1日以上のスポーツ実施率52.0%〈前年度から0.3ポイント減〉、年1回以上のスポーツ実施率76.2%) https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/jsa_00167.html
  • 磐田市「施設ガイド 磐田市総合体育館」(ページ更新日2025年2月26日。所在地=磐田市見付4075-1、電話0538-32-4236。利用時間=午前8時30分〜午後9時30分。休場日=第2火曜〈祝日の場合は翌日〉、12月29日〜1月3日。駐車場210台〈かぶと塚公園と共用〉。大体育場1,854平方メートル〈バレーボール3面〉、小体育場668平方メートル、武道場671平方メートル、トレーニング室211平方メートル。障がい者用駐車場、車いす使用者用トイレ、車いす対応出入り口、車いす対応エレベーター、点字ブロック、貸し出し用車いす、AEDを備える。指定管理者=NPO法人磐田市スポーツ協会。指定避難所・指定緊急避難場所〈地震・洪水〉) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shisetsu_guide/sporte_midokoro/okunaishisetsu/1003474.html
  • 公益財団法人 静岡県障害者スポーツ協会「わかふじスポーツ大会(静岡県障害者スポーツ大会)」(実施競技に陸上競技、水泳、アーチェリー、卓球、フライングディスク、ボウリング、バスケットボール〈車いす含む〉、ソフトボール、グランドソフトボール、バレーボール、サッカー、フットソフトボール、電動車椅子サッカー、ボッチャを掲載) https://shizuoka-parasports.jp/wakafuji/
  • 公益財団法人 日本パラスポーツ協会「ボッチャ」(ジャックボールと呼ばれる白い目標球に、赤・青のボールを6球ずつ投げ、より近づけたほうが勝ち。手で投げられない場合はランプ〈勾配具〉を使い、介助者を通じて競技できる。パラリンピックの正式競技) https://www.parasports.or.jp/paralympic/sports/boccia.html

※いわたボッチャフェスティバルの日程・定員・参加料・申込締切は磐田市のページ(更新日2026年8月17日)の記載にもとづくものです。先着制のため、締切日前に受付が終了する場合があります。体験会はフェスティバルとは申込フォームが異なります。参加を検討される際は必ず磐田市スポーツのまち推進課(電話0538-37-4832)または市の公式ページで最新の内容をご確認ください。障害者手帳所持者数は「第4期磐田市障害者計画」掲載の数値で、令和5年度は令和5年9月末日現在、それ以前は各年度3月末日現在です。スポーツ実施率の数値は全国調査によるもので、磐田市内の実施率を示すものではありません。宮原陸人選手の来場は磐田市の告知にもとづく予定であり、変更される場合があります。本記事の提案は筆者個人の意見であり、磐田市が検討していると確認したものではありません。最新の情報は磐田市・スポーツ庁・各競技団体の公式サイトでご確認ください。