この記事について。本記事は要約版として先行公開していたものを、公的資料に基づいて全面的に書き直しました(本文の確認は2026年8月)。公開日は当時のままにしています。
導入――「スポーツのまち」という誇りは、どこから来ているのか
磐田は「スポーツのまち」だと言われます。Jリーグのジュビロ磐田、ジャパンラグビーリーグワンの静岡ブルーレヴズ、なでしこリーグの静岡SSUボニータ。プロチームのホームタウンが重なっているまちは、全国を見てもそう多くありません。
私は不動産と介護の仕事をしています。スポーツの現場に直接関わる立場ではありません。それでも、市外の人と話すと「磐田って、あのサッカーの強いまちでしょう」と言われることが今も多く、この誇りが地域の暮らしに実際に効いていることを感じます。
ただ、誇りと税金の使い方は、別に見る必要があります。どこまでが企業の負担で、どこからが市の公費が関わる部分なのか。今日は、この線引きを確かめながら、まちの誇りをどう支えるべきかを考えます。
まず事実――「スポーツのまち」は、何を根拠に言われているのか
磐田市自身が発表した資料によれば、株式会社ブランド総合研究所の「地域ブランド調査」において、磐田市は「スポーツのまち」として思い浮かぶ市町村ランキングで、2021年に初めて全国1位を獲得し、2023年に1位に返り咲きました。この調査では「プロスポーツのチームや選手」という項目でも、磐田市は全国1位です。
その後の2024年の調査では、磐田市は全国2位となり、1位は三重県鈴鹿市でした。磐田市と鈴鹿市が1年ごとに首位を入れ替えている状態が続いている、と報じられています。2025年以降の調査で磐田市が何位になったかは、本記事作成時点の公表資料からは確認できませんでした。
根拠になっているのは、住民ではなく全国の回答者の「思い浮かぶ」という認知調査である点も押さえておく必要があります。実際に住んでいる人の満足度調査ではなく、「磐田」と聞いて「スポーツのまち」を連想する人がどれだけいるか、というブランドイメージの調査です。それでも全国1〜2位を争う認知度は、他のまちにはなかなかない強みだと私は思います。
まず事実――ヤマハスタジアムは誰が持っているのか
ジュビロ磐田と静岡ブルーレヴズのホームスタジアムであるヤマハスタジアムは、施設の所有・運営管理をヤマハ発動機株式会社が行っています。1978年にヤマハ発動機サッカー部の本拠地として完成した経緯を持ち、クラブが自ら運営・管理する国内でも数少ないサッカー専用スタジアムのひとつです。つまり、ヤマハスタジアムの維持管理費は、磐田市の直接の公費負担ではなく、企業側の負担で成り立っているということになります。
もうひとつ押さえておきたい動きがあります。2026年1月29日、ヤマハ発動機株式会社は、ジュビロ磐田を運営する株式会社ジュビロの株式の過半数を第三者割当増資により取得し、子会社化しました。ジュビロ磐田の前身は1972年創部のヤマハ発動機サッカー部で、Jリーグ昇格後も30年以上ヤマハ発動機の支援を受けてきましたが、今回はじめて資本面でも子会社という関係になります。目的は、クラブの歴史や文化を尊重しながら経営基盤とガバナンスを強化することだと発表されています。
この一連の流れから分かるのは、ジュビロ磐田とヤマハスタジアムを支えているのは、まず第一にヤマハ発動機という企業だということです。磐田市が直接、クラブやスタジアムに公費を投じているという事実は、確認できた資料の範囲では見当たりませんでした。
まず事実――市の公費が関わる部分はどこか
一方で、市の公費が関わっているスポーツ関連の仕組みもあります。磐田市総合体育館をはじめとする25施設(磐田市総合体育館外24施設)は、指定管理者制度で運営されており、指定管理者は特定非営利活動法人磐田市スポーツ協会、指定期間は令和5年4月1日から令和10年3月31日までの5年間です。指定管理料の具体的な金額は、公表されているページからは確認できませんでした。この点は、確認できなかった事実として正直に書いておきます。
もうひとつ、公費が関わる仕組みとして移住就業支援金制度があります。東京23区在住者などが磐田市に移住し、県指定企業への就職などの要件を満たすと、単身60万円・世帯100万円(18歳未満の帯同者1人につき100万円加算、1世帯上限400万円)が支給される制度です。磐田市はこの制度の対象要件に、「静岡県西部地域で活動する、または磐田市と連携協定を締結し、地域のスポーツ振興に寄与しているチームのファンクラブ等に加入していること」という区分を加えており、対象チームにはジュビロ磐田、静岡SSUボニータ、静岡ブルーレヴズ、アザレアセブン、ブレス浜松、三遠ネオフェニックスが挙げられています。申請期限は令和9年1月15日までです。
評価――良い点を三つ
1つ、看板施設の維持を企業に頼り切っている構造ではないこと。ヤマハスタジアムが企業所有・企業運営であることは、市の財政にとっては軽い話ではありません。仮に磐田市が同規模のスタジアムを一から公費で維持していたら、負担ははるかに大きかったはずです。この構造自体は、市民にとって率直に助かる話だと思います。
2つ、市営施設の運営を丸ごと外部委託せず、地域のスポーツ協会に任せていること。指定管理者が特定非営利活動法人磐田市スポーツ協会という、地域に根ざした団体である点は、単なるコスト削減の外部委託とは違う意味を持ちます。地域のスポーツ振興という目的と、施設運営という実務が、同じ団体の中でつながっている形です。
3つ、移住支援という形で「誇り」を実利に変えていること。スポーツチームのファンクラブ会員という条件を移住支援金の対象に加えたのは、認知度の高さを単なる自慢で終わらせず、実際に人を呼び込む仕組みに変換しようとする試みです。うまく機能するかはこれからですが、発想としては筋が通っていると思います。
注文――三つ
1つ。指定管理料の金額を、市民が見やすい場所に示してほしい。磐田市総合体育館外24施設の指定管理者と指定期間は公表されていますが、指定管理料そのものの金額は、私が確認した範囲では見当たりませんでした。企業所有のヤマハスタジアムと違い、こちらは公費が入っている施設です。いくら払っているのかは、市民が最初に知りたい情報のはずです。
2つ。移住就業支援金の「スポーツファン区分」の実績を公表してほしい。制度ができたことと、実際に使われていることは別の話です。何人がこの区分で申請し、何人が磐田市に移住したのか。「静岡県初」とうたう以上、その効果を数字で見せてほしいと思います。
3つ。ヤマハ発動機の子会社化後も、市とクラブの関係を市民に説明し続けてほしい。2026年1月の子会社化で、ジュビロ磐田は資本面でもヤマハ発動機に一段近づきました。これ自体は民間企業間の話ですが、市が連携協定や後援を続けるのであれば、「市はクラブの何を、どこまで支えているのか」を、企業の経営判断とは別に、市民向けに整理して示す機会だと思います。
結論――誇りを守るとは、線引きを見える形にすることだ
まとめます。
磐田が「スポーツのまち」として全国上位の認知を得ているのは、確認できた資料の範囲で事実です。そしてその中核であるヤマハスタジアムとジュビロ磐田は、基本的にヤマハ発動機という企業の負担と経営判断で支えられており、磐田市が直接その維持費を負担しているわけではありません。
一方で、市営スポーツ施設の指定管理や、移住就業支援金のスポーツファン区分には、公費が関わっています。ここは金額や実績が、まだ十分に見える形になっていません。
まちの誇りを守るというのは、有名な施設やチームがあることに満足することではないと私は思います。どこまでが企業の力で、どこからが税金の力なのか。その線引きを、市民が確認できる形にしておくこと。それができて初めて、「スポーツのまち磐田」という看板を、これからも胸を張って掲げ続けられるのだと思います。
出典(2026年8月確認)
- 磐田市役所プレスリリース「磐田市が全国1位!~『スポーツのまち』として思い浮かぶ市町村ランキング~」(ブランド総合研究所「地域ブランド調査」における2021年初の全国1位、2023年1位返り咲き、「プロスポーツのチームや選手」項目で全国1位) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000102493.html
- 静岡ライフ「磐田市が『スポーツのまち』で全国2位 J1ジュビロや卓球金メダリストで認知」(地域ブランド調査2024における磐田市の順位が全国2位、1位は三重県鈴鹿市) https://www.shizuoka-life.jp/post-1080/
- ジュビロ磐田「ヤマハスタジアム」施設紹介ページ(スタジアムの所有・運営管理をヤマハ発動機株式会社が実施) https://jubilo-iwata.co.jp/stadium/yamaha
- ヤマハ発動機株式会社ニュースリリース「株式会社ジュビロの株式取得により子会社化へ」(2026年1月29日、第三者割当増資によりヤマハ発動機が株式会社ジュビロの株式の過半数を取得し子会社化) https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2026/0129/corporate.html
- 磐田市「指定管理者導入施設(総合体育館外24施設)」(指定管理者=特定非営利活動法人磐田市スポーツ協会、指定期間=令和5年4月1日〜令和10年3月31日) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/sangyou_business/shiteikanrisha_seido/shiteikanrisha_shisetsu/1002135.html
- 磐田市「移住就業支援金制度」(対象要件にスポーツチームのファンクラブ会員区分を明記。対象チーム=ジュビロ磐田・静岡SSUボニータ・静岡ブルーレヴズ・アザレアセブン・ブレス浜松・三遠ネオフェニックス。支援金=単身60万円・世帯100万円、18歳未満帯同者1人につき100万円加算、1世帯上限400万円。申請期限=令和9年1月15日) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/sangyou_business/shushoku/1007069.html
※磐田市総合体育館外24施設の指定管理料の金額、および2025年以降の「地域ブランド調査」における磐田市の順位は、本記事作成時点で公表資料から確認できませんでした。数値・制度は変更される場合があります。最新の情報は磐田市スポーツのまち推進課(0538-37-4832)または産業政策課へお問い合わせください。本記事は特定の候補者や政党の支持・不支持を目的とするものではありません。

