Q. 磐田市の避難所機能の現状と、地域や事業所が確認すべき備えとは?
磐田市内では小中学校体育館などの指定避難所と、公園などの一時避難場所が区分されています。体育館の空調設置や備蓄の充実など市の取り組みが進む一方、事業所や在宅避難者への支援、夜間水害時の誘導には課題が残ります。自前備蓄による分散避難と平時の動線確認が重要です。
秋分を迎え、風水害と地震への備えを再確認する
秋分の日の連休を迎え、秋雨前線や台風シーズンの本格化を前に、地域や職場での防災意識が高まる時期となりました。磐田市は天竜川の下流に位置し、海・川・台地が混在する地形的特性から、水害対策と南海トラフ地震への備えの双方が日常的に求められています。
大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)です。私は磐田市見付で事業を営みながら、介護施設の運営や不動産実務を通じて、地域の安全や建物・土地の維持管理に携わってきました。事業を営む側、市民として暮らす側の両方の目線から、現場の実情に即した防災のあり方を考えています。
磐田市では「指定緊急避難場所」と「指定避難所」が明確に区分され、市のハザードマップや公式情報で公表されています。今回の記事では、2026年9月23日時点で確認できる市の防災計画や避難所運用の実態を踏まえ、良い点と現場からの注文を整理します。
一時避難場所と指定避難所の役割を混同しない
災害時にまず混乱しやすいのが、「避難場所」と「避難所」の言葉の違いです。この2つは役割も開設手順も全く異なります。
| 名称 | 指定緊急避難場所 | 指定避難所 |
|---|---|---|
| 主な施設 | 近隣の公園、学校グラウンド、広場 | 小中学校の体育館、交流センター |
| 目的 | 迫り来る危険(津波・火災・水害)からの緊急退避 | 自宅倒壊・浸水等で暮らせない場合の一定期間滞在 |
| 滞在期間 | 一時的(数時間程度) | 数日~数週間・数か月 |
| 備蓄物資 | 原則なし | 食料、飲料水、毛布、簡易トイレ等 |
地震が発生した直後や、近くで火災が発生した際には、まず近隣の一時避難場所に身を寄せます。しかし、そこに食料や寝具があるわけではありません。揺れが収まり、安全が確認された後に、自宅が損壊して居住継続が難しい場合に向かうのが指定避難所です。
「とりあえず学校へ行けば何とかなる」という思い込みは危険です。大雨の警戒レベル3や4で開設される水害避難所は、土砂災害や浸水の恐れがない高台や堅牢な建物に限定して開設されるため、普段の投票所や最寄りの学校が必ず開いているとは限らないからです。
市の取り組みの良い点:小中学校体育館の機能強化と計画の透明性
私は、磐田市の防災行政における良い点を2つ評価します。第1は、指定避難所となる市立小中学校の体育館において、耐震化の完了に加えて、停電時にも稼働するLPガス発電設備やスポットエアコンの配備が計画的に進められてきた点です。
夏の酷暑や冬の底冷えの中、空調のない板張りの体育館に何日も滞在することは、特に高齢者や乳幼児にとって命に関わる過酷な環境です。避難所の環境改善を「贅沢」と捉えず、避難生活での災害関連死を防ぐための基礎インフラとして整備してきた姿勢は、高く評価されるべきです。

第2は、市のハザードマップや指定避難所一覧がウェブ上で整理され、地区ごとの危険箇所と合わせて誰でも閲覧できる状態になっている点です。以前の避難所開設ルールと持参品の確認記事でも触れましたが、公式情報へのアクセスが整っていることは、市民が平時のうちに確認行動を起こすための大前提になります。
事業者の現場目線からの2つの注文
その一方で、地元で事業を営む一人の事業者として、現場の視点から注文したい点が2つあります。
第1の注文は、「在宅避難者および事業所内待機者への物資配布ルートの具体化」です。大地震が発生した場合、市内の全住民が体育館に入れるわけではありません。建物の倒壊を免れた世帯は自宅にとどまる「在宅避難」が基本となります。また、事業所では従業員や来店客を安全に館内へ留め置くケースが生じます。
しかし、現在の物資供給や安否確認の枠組みは、指定避難所に集まった人を基準に設計されがちです。避難所に身を寄せていない在宅避難者や小規模事業所が、どこで給水を受け、どのように物資の配給情報を受け取れるのか、その動線が地域ごとにまだ十分に周知されていません。
第2の注文は、「夜間の大雨警報発令時における避難所開設の誘導支援」です。近年多発する局地的な豪雨や台風接近では、深夜から未明にかけて急激に河川水位が上昇することがあります。暗闇の中で車を使って避難所へ向かう行為は、冠水道路への転落など極めて高い危険を伴います。
避難情報が発令されたとしても、暗い夜間に無理に移動すべきか、自宅の2階以上で過ごす垂直避難を選ぶべきか、その判断基準をより具体的で分かりやすいメッセージとして市民に届けてほしいと願います。
今日からできる確認と地域での助け合い
行政の避難所整備に頼り切るのではなく、私たち市民や地域事業者が今日できる現実的な準備があります。
家庭や事業所での最優先事項は、「最低7日分の水・非常食・簡易トイレの備蓄」です。公的な支援物資が被災後すぐに各所へ行き渡ることは困難です。最初の数日間を自力で持ちこたえる備えを持つことが、結果として公設避難所の過密を防ぎ、本当に支援を必要とする方へ物資を行き渡らせる最大の地域貢献になります。
一時避難場所と指定避難所の秋の点検記事でも整理したように、家族や従業員と避難先や集合場所のルールを一度言葉にして共有しておくことが何よりの減災につながります。
最後に一言。
災害への備えは、特別な装備を揃えることだけではありません。地域のどの施設がどう機能し、どこで誰と助け合うかを平時に知っておくことです。行政の着実な避難所機能の強化を認めつつ、在宅や事業所も含めたきめ細かな救援ルートが確立されることを期待します。
よくある質問
一時避難場所と指定避難所の違いは何ですか?
一時避難場所は災害の危険から身を守るための一時的な集合場所(近隣の公園や広場など)で、宿泊滞在はできません。一方、指定避難所は被災後に自宅へ戻れない住民が一定期間滞在生活を送るための施設(小中学校の体育館や交流センターなど)です。
避難所が開設されているかどうかはどうやって確認しますか?
磐田市の防災行政無線、市公式LINE、安心安全メール、および市公式ウェブサイトの災害情報ページで開設された避難所が随時公表されます。すべての避難所が一斉に開くわけではないため、必ず開設情報を確認してから移動します。
事業所として地域の避難所とどう連携すべきですか?
自社従業員や顧客の安全確保を最優先にしつつ、最低3日~7日分の水や食料、簡易トイレを自前で備蓄して公設避難所の負担を減らす「分散避難」に協力することが基本となります。また、自治会や近隣事業所と平時から連絡体制を確認しておきます。
出典(2026年9月23日確認)
掲載内容は2026年9月23日時点です。制度・日程・条件は変更される場合があります。最新情報と個別の扱いは担当窓口へ、専門的な判断は該当分野の専門家へご確認ください。

