Q. 少人数の店で、年休を計画的に取ってもらうには何から始めますか?

年休の計画的付与は、繰越分を含む付与日数のうち5日を残し、労使協定で取得日を決める仕組みです。磐田の小さな店では、残日数と希望の確認、営業と仕事の分担、就業規則の整備、労使協定の締結、周知と記録の順で準備します。店主だけで休暇日を決めて導入したことにはできません。

休みを先に決めると、店も暮らしも予定を立てられる

年次有給休暇の計画的付与は、休暇の日を労使であらかじめ決める仕組みです。働く人が家族との予定を組みやすくなり、店は営業や仕入れを準備しやすくなる。私は、この二つの利点から制度を考えたいと思います。

大石浩之(磐田市/不動産業)として、少人数で仕事を回す側の難しさは、休みの数だけでは測れないと考えます。この記事では、磐田駅周辺で店主と数人の従業員が働く小さな店を想定します。実在の店の勤務実態を取材した記事ではありません。レジ、発注、開閉店をどう分担するかという、導入前の考え方です。

厚生労働省は10月を年次有給休暇取得促進期間としています。2026年9月25日に同省のWEBマガジンと導入手続きのページを確認しました。WEBマガジン本文に公表日の記載は見当たらないため、2026年の新制度としては紹介しません。10月の勤務予定を見直す入口として扱います。

計画的付与に使えるのは、5日を除いた部分

厚生労働省の説明では、年休の付与日数から5日を除いた部分を、労使協定で計画的付与の対象にできます。前年度からの繰越分があれば、それも含めます。従業員の自由な取得のために、少なくとも5日を残す仕組みです。

意外に見落としやすいのは、今年付いた日数だけで計算しないことです。たとえば繰越分を含めて15日あり、まだ取得していないという単純な例なら、15日から5日を引いた10日が計画的付与の対象にできる範囲です。実際は付与日、取得済みの日数、有効な繰越分を個人ごとに確認します。

繰越分を含む年休15日を、自由な取得のために残す5日と計画的付与に使える最大10日に色分けした図
繰越込み15日があり、まだ取得していない場合の単純例。15−5=10日。厚生労働省の制度説明に基づく。2026年9月25日確認。

対象にできる10日を、必ず全部まとめて決める必要はありません。私は、先に上限を埋めるより、希望と営業の条件が合う日数から設計したいと思います。余白を残すことと、休暇を取りにくいまま放置することは違います。本人が選べる部分を確保したうえで、予定を具体化する考え方です。

なお、法定の年休付与日数が10日以上の人に年5日を確実に取得させる義務と、この「5日を残す」ルールは別です。厚生労働省も、毎年5日だけ取れればよいという意味ではないと説明しています。勤務表の休みの印だけで済ませず、取得の実績まで確認する必要があります。

導入の一歩目は、残日数と希望をそろえること

計画的付与の準備では、各従業員の年休の状況と休暇希望を確認します。店主の頭の中にある数字を使うより、管理している記録から付与日、繰越、取得済み日数をそろえる方が、話し合いの前提を合わせやすくなります。

私なら、まず従業員ごとに確認する欄を作り、希望日は個別に聞きます。家族の予定などを話しやすい人ばかりではありません。必要以上に休む理由を聞くのではなく、日程と調整できる範囲を聞く。何も希望が出ない場合も、休みが不要だと決めつけないようにしたいと思います。

パートだから対象外という整理もできません。厚生労働省は、雇用区分にかかわらず要件を満たす労働者に年休が付与されると説明しています。ただし日数は同じとは限りません。勤続期間や所定労働日数などを確認し、一律の日数を名簿に写さないことが出発点になります。

雇用上の説明を整理する際は、パートの待遇説明を扱った記事も参考になります。今回は待遇差の説明とは別に、本人の年休と希望を確認する作業です。制度の名称だけを伝えるより、何日あり、どこまで予定に組むのかが分かる説明にしたいところです。

営業を続ける店は、休む日と仕事の引継ぎを一緒に決める

厚生労働省は計画的付与の方式として、一斉付与、グループでの交替制付与、個人別付与を示しています。店を閉められるか、営業を続ける必要があるかで検討する方式が変わります。どの店にも一つの方式が最適だとは言えません。

磐田駅周辺の小規模店を想定すると、全員で休む方法には、お客様へ営業日をまとめて知らせやすい利点があります。交替や個人別なら営業を続けながら調整できる可能性があります。ただし、同じ時間に誰がどの作業をできるかまで見なければ、人数だけそろえても店は回りません。

私は、休暇の日を埋める前に、仕事の引継ぎ先を決めます。休めるはずの日に、レジの操作や発注の確認で本人へ電話をする計画では、休暇を支えたことにならない。少人数の商売だからこそ、業務の分担を曖昧にしたまま制度だけ入れない、というのが私の判断です。

店のレジで一人の従業員が締め作業を説明し、もう一人が手順をノートに書く水彩画
記事内容をもとに生成したイメージ。

私なら作業を「開店時」「営業中」「閉店時」に分け、代わる人と確認資料を一つずつ書きます。鍵の管理、納品の受け取り、返品対応なども候補です。全部を長い手順書にするのではなく、担当者がいない日に判断が止まりそうな作業から渡します。これは店の実情に合わせるための準備案です。

ただ、引継ぎを丁寧にするほど準備時間が必要になり、誰にどこまで覚えてもらうかで私も迷います。店主が全部肩代わりすれば済むとは考えません。地域で人手不足を支える考え方と合わせ、仕事を減らせる部分と、教える必要がある部分を分けて検討します。

就業規則を整え、書面で労使協定を結ぶ

厚生労働省の「導入に必要な手続き」は、就業規則への規定と労使協定の締結を示しています。協定の相手は、労働者の過半数で組織する労働組合、または過半数を代表する者です。店主がカレンダーへ印を付けるだけで始められる制度ではありません。

協定には、対象者、対象日数、具体的な方法、年休が少ない人の扱い、予定日を変更する場合の手続きを定めます。個人別方式では、計画表を作る時期や手続きも決めます。厚生労働省のページには規定例と協定例があるので、準備した店の条件を照らす入口として使えます。

私は、書式をそのまま埋める前に、従業員代表の選び方と自店の規則の整備を、社会保険労務士などに確認したいと考えます。人数が少ないことを理由に、合意の手順を省くべきではありません。書面ができたら、対象者が日程と変更時の連絡方法を読める形で周知します。

この計画的付与の労使協定自体は、労働基準監督署への届出が不要と公式に説明されています。届出不要は、書面不要という意味ではありません。就業規則の作成・変更に関する手続きは別に確認します。自店の人数や既存規則を伝えて相談する方が、必要な作業を絞れます。

年休不足者と変更時の扱いを、開始前に決めておく

一斉休業で計画的付与を行う場合、年休が足りない人への対応が必要です。厚生労働省は、新規採用者などで5日を超える年休がない人には、有給の特別休暇か、平均賃金の60%以上の休業手当という措置を案内しています。賃金の個別計算は専門家へ確認する項目です。

私は、全員休みにすると決めた後で、新人だけ給与が減ると伝える進め方には賛成できません。休暇を取りやすくする利点を生かすには、使う人の条件を先に数える必要があります。家計に関わる説明こそ、日程を周知する前にそろえておきたいと思います。

一事業者として公的な案内に望むのは、小さな店の記入例が、希望確認から不足者の扱いまでつながって見えることです。協定例が公開されている点は助かります。そのうえで、規則の紙と日々のシフトの間を埋める説明があれば、導入後の運用まで考えやすくなります。

今日できるのは、一人分の記録と一つの作業の確認

計画的付与に向けて今日できる準備は、従業員一人分の年休記録を確認し、その人が休む日に代わりが必要な作業を一つ書くことです。希望確認、方式の検討、規則と協定、周知、取得記録という順に進めれば、必要な相談が具体的になります。

生活の時間を記録する意味にも触れましたが、予定と実際は分けて見る必要があります。休暇の予定表が完成したら終わりではなく、実際に休めた日を記録し、休めなかった理由が仕事の偏りにないかを振り返る。私は、その確認までを店の運営に含めたいと思います。

最後に一言。

磐田の小さな店でも、休む日を先に決められる価値はあります。ただ、予定表の空欄を埋めるだけでは人は休めません。誰が仕事を引き受けるか、本人の選べる日が残っているか、給与の扱いに抜けがないか。私は、休暇を制度の名前からではなく、店と暮らしの段取りから整えたいと思います。

よくある質問

計画的付与を始める際に迷いやすい、決め方、二つの5日の違い、年休不足者の扱いに答えます。

店主がシフト表へ休みを書けば、計画的付与になりますか?

シフト表に書くだけでは、年次有給休暇の計画的付与制度を導入したことにはなりません。厚生労働省は、就業規則での定めと、過半数労働組合または過半数代表者との書面による労使協定が必要と説明しています。対象者、日数、方法、年休不足者への対応、変更手続きも確認します。個別の整備は労働局や社会保険労務士へ相談してください。

自由に使える5日と、年5日の取得義務は同じ意味ですか?

別のルールです。計画的付与では、労働者が自由に取得できる部分を少なくとも5日残します。一方、年5日の取得義務は、法定の年休付与日数が10日以上の労働者について、使用者が確実な取得を図るものです。取得記録と対象期間を個人ごとに確認し、五つの休みの印を付ければ終わりと考えないようにします。

入社直後で年休が足りない人も、店と一緒に休ませてよいですか?

事業場全体を休業して一斉に計画的付与をする場合、5日を超える年休がない新規採用者などへの対応が必要です。厚生労働省は、有給の特別休暇とするか、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う措置を案内しています。不足分を当然に欠勤控除せず、適用関係と賃金の計算は労働局や社会保険労務士へ確認してください。

著者・大石浩之の顔写真
大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

磐田市で小さな不動産業を営み、実家じまい・空き家・相続・介護に絡む相談を受けています。家計と段取りから考えます。プロフィール

出典(2026年9月確認)

確認日:2026年9月25日。

制度・日程・条件は変更される場合があります。最新情報と個別の扱いは担当窓口へ、専門的な判断は該当分野の専門家へご確認ください。