Q. パートを3人雇っています。10月から紙を増やせと聞いたんですが、本当ですか。

本当です。2026年10月1日から、パート・有期雇用の方を雇い入れるとき(契約更新のときも含む)の労働条件通知書に、「待遇の違いの内容と理由の説明を求めることができる」旨を書くことが義務になります。既存の4項目に1行足す形です。違反は10万円以下の過料。9月中に様式を直せば間に合います。

導入——10月1日に増えるのは、紙ではなく1行

厚生労働省が2026年8月3日、Webマガジンのコラム「いま注目! 厚労省のススメ」で「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント」を公表しました。施行は2026年(令和8年)10月1日です。

磐田で商売をしている側から、先に結論だけ書きます。10月1日以降にパート・アルバイトの方を雇い入れるとき、そして契約を更新するときに、労働条件通知書へ1行足す必要があります。足すのは「正社員との待遇の違いについて、その内容と理由の説明を求めることができます」という趣旨の一文です。新しい書類が1枚増えるのではありません。今使っている紙の中に、1行増えます。

私は磐田市で小さな不動産業をしています。社会保険労務士ではないので、個別の様式づくりや手当の当てはめについては専門家に確認してください。それでもこの記事を書くのは、磐田の小さな店にとって2026年の秋が、制度の変更が4つ同時に来る季節だからです。9月30日にインボイスの2割特例が終わり、10月1日にカスハラ対策が義務になり、10月15日に静岡県の最低賃金が1,154円になる。そこへ、このパート・有期の改正が重なります。

まず、事実を整理する——2026年10月1日から変わる3点

厚生労働省のコラム(2026年8月3日掲載)に書かれている内容を、そのまま並べます。改正の枠組みは「同一労働同一賃金」で、正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。2020年4月から順次施行されてきた仕組みを、さらに一歩進めるための改正だと説明されています。

ポイント① 雇い入れ時の労働条件明示事項が追加されます。パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたとき(労働契約の更新時も含みます)には、これまで「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つを書面の交付等により明示することが義務付けられていました。今回、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨の明示が必要になります。4項目が5項目になる、という変更です。

ポイント② 「同一労働同一賃金ガイドライン」が改正されます。厚生労働省によると、裁判例などを踏まえて、賞与・退職手当・各種手当・福利厚生についての記載が見直されました。家族手当は「相応に継続的な勤務が見込まれる」パート・有期雇用労働者に対し正社員と同一の手当を支給しなければならない。住宅手当は正社員と同一の転居を伴う配置の変更があるパート・有期雇用労働者に対し同一の手当を支給しなければならない。夏季冬季休暇は、パート・有期雇用労働者に対し正社員と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない。この3つが具体例として挙げられています。

ポイント③ 企業に求められる雇用管理上の措置の内容が変わります。待遇の相違等について説明するときは、「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかによることが必要になります。賃金を決めるときは、職務の内容や成果、意欲、能力、経験といった要素を公正に評価し、昇給に反映するなど公正な評価に基づいて決定することが求められます。加えて、正社員等への転換制度の内容や転換実績をパート・有期雇用労働者に明示するよう努めること、それらをウェブサイトで定期的に公表することが望ましいとされました。

罰則の根拠も書いておきます。短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)は、第6条第1項の明示義務に違反した者を、第31条で「十万円以下の過料」と定めています。今回追加される1行も、この第6条第1項に基づく明示事項です。

2026年10月1日に施行されるパートタイム・有期雇用の改正3点を並べた一覧表。ポイント①は雇い入れ時の明示事項の追加で、これまでの4項目(昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口)に「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨を追加して5項目になる。ポイント②は同一労働同一賃金ガイドラインの改正で、家族手当は相応に継続的な勤務が見込まれる場合に正社員と同一支給、住宅手当は同一の転居を伴う配置変更がある場合に同一支給、夏季冬季休暇は同一付与。ポイント③は雇用管理上の措置の変更で、説明は資料を活用した口頭説明か全て記載した資料の交付のいずれか、賃金は職務の内容・成果・意欲・能力・経験を公正に評価して決定、正社員等への転換実績の公表は努力とされる。注記として、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条第1項の明示義務違反は第31条で十万円以下の過料と定められている。
図1 厚生労働省 Webマガジン コラム「いま注目! 厚労省のススメ」「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント」(2026年8月3日掲載)から作成(2026年8月26日確認)。具体的な様式や自社の手当への当てはめは個別性が高いため、労働局や社会保険労務士など専門家へご確認ください。

数えてみる——10万円は、時給1,154円で86.6時間分

私は不動産屋なので、金額は必ず自分の商売の単位に割り戻して見る癖がついています。今回の「10万円以下の過料」も、同じようにやってみます。以下は筆者のごく粗い概算です。

静岡県の最低賃金は、2026年10月15日から1,154円になります。10万円をこの時給で割ると、約86.6時間分。1日5時間で働くパートの方なら約17日分の人件費にあたります。週4日勤務なら、1か月を超える計算です。小さな店にとって、これは「うっかり」で払える金額ではありません。

一方で、避けるための作業量はどれくらいか。パートが3人の店で、契約更新が年1回なら、直す紙は年に3枚。しかも様式を1回直せば、以後は同じ紙を使い回せます。厚生労働省が示している労働条件通知書の記載例では、「次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる」という趣旨の一文と、部署名・担当者の職氏名・連絡先を書く形になっています。作業は1回、罰は17日分。この非対称が、今回の改正のいちばん実務的な性格です。

過料の上限額10万円を静岡県最低賃金で割り戻した概算表。過料の上限は10万円で、パートタイム・有期雇用労働法第31条の上限額。静岡県最低賃金は1,154円で2026年10月15日発効。10万円を1,154円で割ると約86.6時間分。1日5時間勤務なら約17日分で、週4日なら1か月を超える。パート3人で年1回更新の店なら直す紙は年に3枚で、様式を一度直せば使い回せる。過料は上限額であり、必ず10万円が科されるという意味ではない。
図2 過料の上限額10万円を、静岡県最低賃金(時給1,154円、2026年10月15日発効)で割った筆者のごく粗い概算(2026年8月26日確認)。「約17日分」は1日5時間勤務を仮定した場合です。

評価——良い点と、注文したい点

良いと思った点を、先に3つ数えます。

一つめ。「聞いていい」と紙に書かせたこと。説明を求める権利そのものは、2020年4月から順次施行されてきた仕組みの中にすでにありました。あったのに、使われてこなかった。権利があることを知らせるいちばん安い方法は、本人が必ず受け取る紙に1行書くことです。広報でも研修でもなく通知書に置いたのは、実務として筋が通っています。

二つめ。説明の方法を2つに絞ったこと。「資料を活用し口頭で」か「全部書いた資料を交付」か。この限定は、雇う側にとってはむしろ楽になります。何をやれば足りるのかが決まったからです。これまでは、立ち話で済ませたものが説明にあたるのかどうかが判然としませんでした。線が引かれると、小さな店ほど守りやすい。

三つめ。手当と休暇の具体例まで踏み込んだこと。家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇という、実際に差がつきやすい3つを名指ししました。抽象論のガイドラインは、現場では「うちは関係ない」で終わります。手当の名前で書かれていれば、給与明細を開いて確かめられます。

そのうえで、注文を2つ。私は制度をつくる側ではありません。磐田で商売をしている一事業者の要望として読んでください。

1つ。様式のひな形を、磐田の窓口に紙で置いてほしい。厚生労働省は労働条件通知書の記載例をPDFで公表しています。ただ、パートを3人雇っている店の店主は、PDFを探しません。2026年8月26日時点で、私はこの改正の案内を磐田市の公式サイトに見つけられませんでした。見落としの可能性はあります。市が国の改正を広報する義務を負っているわけではないことも承知しています。それでも、商工会議所・商工会の窓口や、市の企業支援の相談窓口に記載例のコピーが1枚置いてあるかどうかで、9月中に直せる店の数はまるで変わります。制度は、知っている人だけが得をする。それが一番よくない。

2つ。「相応に継続的な勤務が見込まれる」の線引きを、例で示してほしい。家族手当を正社員と同一に支給しなければならないかどうかは、この一語で決まります。ところが、契約が何か月なら該当するのか、更新が何回続けば該当するのかは、コラムの記述からは読み取れません。言葉の意味が分からないまま「支給しなければならない」とだけ言われると、小さな店は手当そのものを廃止する方向に動きます。それは待遇改善とは逆の結果です。判断の物差しを、金額ではなく期間の例で示してもらえると助かります。

ここは私の考えです——効くのは手当の話より、1行のほうだ

ここから先は事実ではなく、私の考えです。この改正について磐田の事業者から相談を受けた場面が手元にないので、体験ではなく意見として書きます。

見出しになりやすいのは、家族手当や夏季冬季休暇のほうです。金額が動くからです。けれど、磐田の小さな店で実際に効くのは、通知書に足す1行のほうだと私は思っています。「待遇の違いの説明を求めることができます」と紙に書いた瞬間、書いた側は必ず一度、自問することになります。聞かれたら、自分は説明できるのか。

説明できない差は、たいてい理由があって差になったのではなく、誰も理由を考えないまま差のまま置かれてきたものです。私は不動産の仕事で、そういう「なんとなくそのまま」をたくさん見ます。境界の杭が実際とずれたまま何十年も置かれている土地と、正社員にだけ出ている手当は、放置されてきた事情がよく似ています。誰も困っていなかったから、誰も動かなかった。

正直に書くと、この1行が磐田の時給や手当を実際に動かすのかどうか、私には見当がついていません。紙に書いてあることと、店の休憩室で言い出せることのあいだには、まだ距離があるからです。説明を求めた人が気まずくならない店かどうかは、制度ではなく店主が決めています。ここは分からないまま書いておきます。

対案・結論——9月中にできる確認は、3つ

一つめ。今使っている労働条件通知書を、今日1枚出してきてください。「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つが書いてあるかを見ます。この4つが揃っていない様式なら、10月を待たずに直すところがあります。揃っていれば、あとは1行足すだけです。

二つめ。10月1日以降に契約更新が来る人を、名前で書き出してください。今回の明示義務は、雇い入れ時だけでなく労働契約の更新時も含みます。4月更新でそろえている店なら、実際に紙が必要になるのは来春です。10月更新の人がいるなら、9月中が締切になります。誰の更新がいつかを紙に書き出すだけで、慌てる日が特定できます。

三つめ。家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇が、正社員だけに出ていないかを確認してください。給与規程がなくても、直近の給与明細を並べれば分かります。差があること自体は、すぐに違反を意味しません。問われるのは、その差に説明できる理由があるかどうかです。理由が言えない差が1つでも見つかったら、そこが最初に相談すべき論点になります。

今日、結論を出す必要はありません。今日の成果は、「10月1日に何が変わるか」と「うちの紙が今どうなっているか」の2つを知った状態です。そのうえで判断が要る部分は、静岡労働局雇用環境・均等室や社会保険労務士に持ち込めば、話が早く済みます。

最後に一言。

磐田駅前のジュビロードを歩くと、シャッターの隣で開いている店が何軒もあります。開いている店の多くは、家族と、パートの方が数人という構成です。その数人が、店の営業時間そのものを支えています。冒頭に並べた4つの変更は、9月30日から10月15日までの16日間に集中しています。

制度を1つずつ見れば、どれも筋が通っています。けれど、受け取る側は1つずつ受け取っているわけではありません。同じ店主が、同じ9月に、4つ同時に読まされる。私は、この重なり方のほうを見てほしいと思っています。国の改正と市の窓口は別の話だと言われればそれまでですが、紙を直すのは、どちらの世界でも同じ店主です。

よくある質問

Q. 2026年10月から、パートタイム・有期雇用のルールは何が変わりますか。

厚生労働省によると、2026年(令和8年)10月1日から3点が変わります。1つめは雇い入れ時の労働条件明示事項の追加で、「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨の明示が義務になります。2つめは同一労働同一賃金ガイドラインの改正で、家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の考え方が明確化されます。3つめは雇用管理上の措置の変更で、説明方法が2つの方法のいずれかに限定されます(2026年8月26日確認)。

Q. 労働条件通知書には何と書けばよいですか。書かないとどうなりますか。

厚生労働省が示す労働条件通知書の記載例では、「次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる」という趣旨の一文と、部署名・担当者の職氏名・連絡先を書く形になっています。短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律は、第6条第1項の明示義務に違反した者を第31条で「十万円以下の過料」と定めています。個別の様式づくりは社会保険労務士など専門家にご相談ください。

Q. 家族手当や夏季冬季休暇は、パートにも必ず出さないといけませんか。

厚生労働省のコラムによると、改正後の同一労働同一賃金ガイドラインでは、家族手当は「相応に継続的な勤務が見込まれる」パートタイム・有期雇用労働者に正社員と同一の手当を支給しなければならないとされました。住宅手当は正社員と同一の転居を伴う配置の変更がある場合、夏季冬季休暇は正社員と同一の付与が必要とされています。ただし自社の手当がどれに当たるかの判断は個別性が高く、労働局や専門家への確認が要ります。

著者・大石浩之の顔写真

大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

磐田市で小さな不動産業を営み、実家じまい・空き家・相続・介護にからむご相談を一件ずつ受けています。 理念より、家計と段取りで考えます。 プロフィール

出典(2026年8月確認)

  • 厚生労働省 Webマガジン コラム「いま注目! 厚労省のススメ」/「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント」(2026年8月3日掲載、2026年8月26日確認。改正3点=①雇い入れ時〈労働契約の更新時も含む〉の労働条件明示事項に「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨を追加、既存の明示事項は「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つ。②同一労働同一賃金ガイドラインの改正で家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の考え方を明確化。③説明方法を「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかに限定、賃金は職務の内容・成果・意欲・能力・経験を公正に評価して決定、正社員等への転換制度の内容・転換実績の明示に努め、ウェブサイトでの定期的な公表が望ましい) https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/column/20260803.html
  • 厚生労働省・都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」(リーフレット、2026年8月26日確認。施行日=令和8年10月1日) https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001698017.pdf
  • 厚生労働省「労働条件通知書の記載例」(2026年8月26日確認。記載例=「次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。部署名/担当者職氏名/連絡先」) https://www.mhlw.go.jp/content/001698010.pdf
  • 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号、e-Gov法令検索、2026年8月26日確認。第6条第1項=労働条件に関する文書の交付等、第31条=第6条第1項の規定に違反した者は十万円以下の過料に処する) https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000076
  • 厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法とは」(2026年8月26日確認。「パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善を進めるため『同一労働同一賃金ガイドライン』等が改正され令和8年10月から施行・適用されます」と記載) https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/reform/
  • 本連載の既報:静岡の最低賃金1,154円は10月15日から(記事0240)、カスハラ対策は10月1日から義務(記事0263)、106万円の壁は10月に撤廃(記事0257)、インボイス2割特例は9月30日で終了(記事0267)

※本文中の「約86.6時間分」「約17日分」は、過料の上限10万円を静岡県最低賃金1,154円(2026年10月15日発効)で割った筆者のごく粗い概算で、1日5時間勤務を仮定したものです。過料は上限額であり、必ず10万円が科されるという意味ではありません。「2026年8月26日時点で磐田市の公式サイトに案内を見つけられなかった」という記述は筆者が確認した範囲のことで、見落としの可能性があります。労働条件通知書の様式づくり、自社の手当が改正後のガイドラインのどれに当たるかの判断、契約更新時の取り扱いなどは個別性が高いため、静岡労働局雇用環境・均等室や社会保険労務士など専門家にご確認ください。制度・数値は変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。