この記事について。2026年6月に、磐田市の2026年度6月補正予算案について書いた記事を、その後に確定した事実で書き直しました(本文の確認は2026年8月)。公開日は当時のままにしています。
導入——「小さな2つの工事」から、市政の姿勢が見える
磐田市の2026年度6月補正予算を見て、私が最初に思ったのは「堅実だ」という一言でした。派手な新規事業はほとんどなく、傷んだ施設を直し、防災の備えを一段厚くする。そういう内容です。
具体的には、竜洋なぎの木会館の内壁等改修工事に5,122万7千円、そしてB&G財団の支援制度を活用した防災拠点の整備事業に3,540万4千円(うち防災倉庫などの工事費は902万1千円)が計上されています。どちらも地味ですが、暮らしと防災に直結する話です。
ただ、私がこの記事で確かめたいのはそこだけではありません。「批判されないための予算」と「次に進むための予算」は、見た目は似ていても中身が違います。今回の6月補正が磐田市にとってどちらなのかを、市が公表した資料から具体的に見ていきます。
まず事実——6月補正予算(第2号)の中身
磐田市が公表した「一般会計補正予算(第2号)説明資料」(令和8年6月)によると、今回の補正額は歳入歳出それぞれ1億8,412万1千円の減額です。補正前の一般会計予算772億2,036万円に対し、補正後は770億3,623万9千円になります。「補正」というと増額のイメージがありますが、今回は全体で見れば減額の予算です。
減額の主な理由は、体育施設等管理事業(体育施設照明灯のLED化)の2億7,498万9千円の減額です。市の資料には「令和7年度補正予算に計上したことによる体育施設照明灯LED化に要する経費の減額」と説明されています。つまり、LED化の工事費はすでに前年度の補正予算で措置済みで、今回はその重複分を整理して落としたということです。二重に予算を積んでいたわけではなく、会計年度をまたぐ事務の整理と読むのが妥当でしょう。
あわせて確認しておくと、令和8年度にはこの6月補正のほかにも、5月補正予算(第1号)と6月補正予算(第3号)が公表されています。第1号は見付交流センターと青城交流センターの空調設備の緊急修繕にあてる増額、第3号は市内の全公立小中学校への水筒対応型冷水機の設置にあてる増額でした。いずれも暮らしに近い、地味だが必要な工事です。今回取り上げる第2号は、このなかで唯一「全体としては減額」になっている補正、という位置づけになります。
この大きな減額の陰に隠れがちですが、増額されている事業もあります。目立つのは次の2つです。
ひとつは、竜洋なぎの木会館施設管理事業。内壁等の改修工事費として5,122万7千円が増額され、事業費は7,147万5千円から1億2,270万2千円になりました。主な事業費は工事請負費5,122万7千円で、所管は文化振興課です。
もうひとつは、新規事業として立ち上がった防災拠点・災害時相互支援体制構築事業。3,540万4千円が計上され、内訳は工事請負費902万1千円(防災倉庫の整備など)と備品購入費2,182万8千円(救助ボートや車両、ドローンなど)です。所管は危機管理課です。
このほかにも、担い手農業者の認定・育成支援事業に452万5千円、移住・定住促進事業のチラシ作成等に200万円、校内教育支援センターの支援員配置に交付金517万2千円が交付決定に伴い計上されるなど、小さな増額が積み重なっています。全体としては、新しい大きな事業を始めるための補正ではなく、すでに走っている事業の実情に合わせて数字を整える補正、というのが今回の性格だと私は見ています。
もう一つの事実——防災倉庫の裏にある、全国ネットワークの仕組み
防災拠点・災害時相互支援体制構築事業について、もう少し詳しく見ておきます。これは公益財団法人B&G財団の支援制度を活用した事業です。
B&G財団は全国470か所・389自治体のネットワークを持つ団体で、「防災拠点の設置及び災害時相互支援体制構築事業」として、全国に100か所の防災拠点整備を目指しています。市の資料によれば、令和7年度までに全国84か所が整備済みで、磐田市が加わると静岡県内では牧之原市、掛川市に次いで3例目になります。
事業の中身は、全国統一仕様の油圧ショベルと運搬用トラックの現物支給(この分は予算計上なし)、かぶと塚公園総合体育館南側での防災倉庫の整備、そして救助ボート、車両、ドローン、ベルトコンベアー、水循環型手洗器、自動ラップ式トイレといった防災資機材の配備です。あわせて、重機操作や避難所の環境改善についての人材育成研修も行われます。
ここで私が注目したいのは財源です。歳入3,540万4千円のうち、B&G財団からの支援金が3,277万2千円を占め、市の一般財源は263万2千円にとどまります。つまり、市が自前で用意するお金を最小限に抑えながら、防災力を底上げする仕組みになっています。
今後のスケジュールは、令和8年7月上旬に補正予算の議決、7月中旬から令和9年3月にかけて防災倉庫の整備・資機材の購入・現物支給の受領、令和8年9月にB&G財団との災害時応援協定の締結、という順序で進む見込みです(市の資料に基づく想定)。
評価——良い点を三つ
1つ、老朽化した施設に、先送りせず手を入れたこと。竜洋なぎの木会館は地域で使われてきた文化施設で、内壁の傷みは使う人にとって切実な問題です。「いつかやる」ではなく、今回の補正で具体的な工事費として計上したことは、率直に評価します。
2つ、防災の備えを、市の持ち出しを抑えながら厚くしたこと。B&G財団の支援制度を使ったことで、市の一般財源はわずか263万2千円に抑えられています。この金額で救助ボートやドローン、油圧ショベルの現物支給まで含む防災拠点が整うのであれば、財政運営としては理にかなった選択だと思います。
3つ、前年度計上済みの事業をきちんと整理し、減額したこと。LED化の工事費を令和7年度補正で措置し、今回はその重複分を精算する形で減額しています。予算を膨らませたままにせず、実態に合わせて整理する姿勢は、堅実さの表れだと私は受け止めています。
注文——三つ
1つ。「次に何を優先するのか」を、あわせて示してほしい。
今回の補正は、老朽施設の改修と防災の底上げという、どちらも必要な内容です。ただ、これらは「批判されにくい」テーマでもあります。市民が知りたいのは、この先どんな施設整備を予定していて、何を優先していくのかという見通しです。個々の補正の説明だけでなく、中期的な優先順位も、あわせて発信してほしいところです。
2つ。防災倉庫の整備後、住民への周知と訓練の計画を早く示してほしい。
資機材が届いても、使い方や置き場所を住民が知らなければ、いざというときに活きません。令和8年7月中旬から令和9年3月にかけて整備が進む見込みですが、整備が終わった後、いつ、どのように住民に周知し、訓練に組み込むのかは、まだ見えていません。整備と同時並行で、この計画も詰めてほしいと思います。
3つ。なぎの木会館の改修後、どう使っていくのかを伝えてほしい。
内壁の改修は必要な工事ですが、それ自体は目的ではなく手段です。改修後にこの施設をどう活用していくのか、地域の文化活動や竜洋地区の住民にとってどんな意味を持つ場所にしていくのか、市の考えを聞かせてほしいと思います。
結論——堅実だが、次の一手の説明が足りない
今回の6月補正予算(第2号)を数字で見る限り、内容は堅実です。老朽施設の改修に手を入れ、防災の備えを外部資金も活用しながら厚くし、前年度計上済みの事業は整理して減額する。財政運営としては、批判される要素の少ない予算だと思います。
しかし、私がこの記事の冒頭に書いた「何もしないから、批判されないでいいのか」という問いへの答えは、まだ半分しか出ていません。堅実であることと、将来に向けた見通しを示すことは、別の話だからです。個々の工事や事業の説明は丁寧でも、それらが磐田市全体としてどこに向かっているのかという文脈は、今回の補正資料からは見えてきません。
竜洋なぎの木会館の改修も、防災拠点の整備も、それ自体は良い取り組みです。だからこそ「これで終わり」にせず、活用計画や住民周知といった次の一手を、早めに、具体的に示してほしい。批判されない予算の先に、市民が「次はこうなる」と見通せる磐田の市政があるかどうかを、私はこれからも確かめていきます。
出典(2026年8月確認)
- 磐田市「令和8年度 補正予算」(6月補正予算(第2号)の概要=補正額1億8,412万1千円の減額、補正前772億2,036万円→補正後770億3,623万9千円。事業内容は「B&G財団の防災拠点設置事業支援金を活用した防災資機材整備、竜洋なぎの木会館の内壁改修工事、体育施設照明灯LED化など」) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/gyouzaisei/yosan/1016426.html
- 磐田市「一般会計補正予算(第2号)説明資料」(令和8年6月、PDF)(歳出予算補正内容=竜洋なぎの木会館施設管理事業「内壁等改修工事に要する経費の増額」工事請負費5,122万7千円〈補正前7,147万5千円→補正後1億2,270万2千円、所管:文化振興課〉、防災拠点・災害時相互支援体制構築事業〈新規〉3,540万4千円〈工事請負費902万1千円・備品購入費2,182万8千円、所管:危機管理課〉、体育施設等管理事業△2億7,498万9千円「令和7年度補正予算に計上したことによる体育施設照明灯LED化に要する経費の減額」など) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/426/R8.2.pdf
- 磐田市「公益財団法人B&G財団の支援制度を活用した防災拠点の整備について」(同説明資料内、危機管理課、令和8年6月)(全国470か所・389自治体のネットワーク、全国100か所を目標に令和7年度までに84か所整備、県内では牧之原市・掛川市に次いで3例目。防災倉庫はかぶと塚公園総合体育館南側に整備。事業費3,540万4千円の財源はB&G財団支援金3,277万2千円・一般財源263万2千円。スケジュールは令和8年7月上旬に補正予算の議決、7月中旬〜令和9年3月に整備・購入・現物支給の受領、令和8年9月にB&G財団と災害時応援協定を締結の想定)
※金額は原資料の千円単位の数値を万円表記に置き換えたもので、四捨五入はしていません。防災拠点整備のスケジュールは市の資料に基づく想定であり、確定した予定ではありません。竜洋なぎの木会館の改修後の活用計画、防災倉庫整備後の住民周知の具体的な方法・時期については、2026年8月時点で市の公表資料に記載が確認できませんでした。予算の内容や事業の進み方は、今後の議会審議や執行状況により変わる場合があります。最新の内容は磐田市財政課または各所管課にご確認ください。

