導入——本丸が、今日開きました

今日8月5日、磐田市が意見募集を始めました。第3次磐田市総合計画(案)に対するパブリックコメントです。

総合計画というのは、市の最上位の計画です。子育ても、福祉も、防災も、道路も、ごみも、その下に個別の計画がぶら下がる。市はこれを「羅針盤」と呼んでいます。今回の計画が対象とするのは、令和9年度から令和16年度までの8年間です。

ここで、少し個人的な話をします。私は7月に、「パブリックコメントを一行でいいから出してみよう」と呼びかけておきながら、自分が出せなかった記事を書きました。日曜の朝にコーヒーを淹れて市のサイトを開いたら、募集中の案件がひとつもなかったのです。あのとき私はこう書きました。「パブリックコメントは、案ができたタイミングで数週間だけ窓が開く仕組みです。常設の意見箱ではない。窓が開いていない日に行けば、閉まっている」。

その窓が、今日開きました。しかも、市の計画のなかでいちばん上に立つものの窓が。「無関心の値段」で、見ていない間に決まっていくものについて書いた私にとって、これは逃げられない日です。

だから今日は、素案41ページを実際に最後まで開いて書きます。そして、開いたからこそ見つけたことを、正直に書きます。

まず、締切と出し方

ここだけは先に書いておきます。読むのを途中でやめてもいいので、ここは持って帰ってください。

募集期間は、令和8年8月5日(水曜)から令和8年9月11日(金曜)まで。提出期限は9月11日午後5時15分必着、ただし郵送は9月11日付けの消印まで有効です。

出せる人は、市内に住所がある方だけではありません。市内の事業所に勤務する方、市内の学校に在学する方、市内に事務所または事業所を有する方も対象です。磐田で働いている、磐田の学校に通っている。それだけで、8年の計画に一行足せます。

提出方法は四つ。市役所本庁舎4階の企画の担当課の窓口へ直接、郵送、ファクス(0538-36-8954)、そして電子申請。意見書の様式はWord版とPDF版が用意されていますが、様式は任意です。書く項目は氏名または団体名、住所、年齢、電話番号(任意)、Eメールアドレス(任意)、該当ページ、そして意見。

閲覧は、本庁舎4階の企画の担当課、本庁舎2階の市政情報コーナー、各支所の市民生活課(いずれも午前8時30分から午後5時15分)、そして市ホームページ。閉庁日や時間外は、ホームページからなら読めます。説明動画も用意されています。

第3次磐田市総合計画(案)に対するパブリックコメントの概要をまとめた図。募集期間は令和8年8月5日水曜から令和8年9月11日金曜まで、提出期限は9月11日午後5時15分必着で、郵送の場合は9月11日付けの消印まで有効。対象者は市内に住所を有する方、市内の事業所に勤務する方、市内の学校に在学する方、市内に事務所または事業所を有する方。提出方法は市役所本庁舎4階の企画の担当課窓口への直接提出、郵送、ファクス0538-36-8954、電子申請の四つ。意見書の様式はWord版とPDF版があるが様式は任意で、記入項目は氏名または団体名、住所、年齢、電話番号は任意、Eメールアドレスは任意、該当ページ、意見。閲覧場所は本庁舎4階の企画の担当課、本庁舎2階の市政情報コーナー、各支所市民生活課がいずれも午前8時30分から午後5時15分まで、および市ホームページで、閉庁日や時間外はホームページのみ閲覧可能。資料は総合計画の素案がPDF約5メガバイトで41ページ、指標一覧が巻末資料として別PDF、ほかに説明動画がある。計画期間は基本構想が8年で令和9年度から令和16年度、基本計画は前期4年が令和9年度から12年度と後期4年が令和13年度から16年度、実施計画は3年で毎年度策定。意見募集結果は寄せられた意見の概要とそれに対する市の考え方を後日ホームページで公表するが、個別の回答はしないとされている。
図1 パブリックコメントの概要と、計画の三層構造(磐田市公表資料から作成)

素案には、何が書かれているか

素案は令和8年7月28日時点のもので、41ページあります。

まちの将来像は「〜共創で世界とつながるまち〜 多様な魅力と幸福感があふれる都市 磐田」。これは令和7年度に開かれた『磐田の将来都市像を考える若者会議』での若者たちの想いをもとに、市民投票の結果を踏まえて定めたと書かれています。

まちづくりの基本理念は「安心できるまち!共に創ろう魅力ある磐田」

計画は三層構造です。基本構想が8年(令和9〜16年度)、基本計画は4年ずつの前期(令和9〜12年度)と後期(令和13〜16年度)、実施計画は3年で毎年度見直し。

分野は七つ。産業・雇用/自治・共生・スポーツ・文化・観光/子育て・こども・若者・教育/福祉・健康/防災減災・消防・安全/都市基盤・環境/行政経営。

そして今回、私がいちばん価値があると思ったのが、巻末の指標一覧です。68本の指標が、定義つきで、現状値(令和7年)と目標値(令和12年)を並べて公開されています。

68の数字のうち、私が線を引いた10本

全部は書けないので、読んで手が止まったものを挙げます。

「学校内外のどことも『つながり』がない児童生徒数 14人 → 0人」。68本のうち、目標をゼロに置いた指標はこれだけです。年度末時点でどことも接点のない子どもが14人いる、と市は書いた。その14人を0にする、と。私はこの一行を、この計画でいちばん重い行だと思いました。

「避難所等までの上下水道管路の耐震化率 4.8% → 46.8%」。避難所62施設までの管路のうち、いま耐震化されているのが4.8%。漏水調査の記事で水道管の話を書きましたが、数字を見て息が止まりました。8年後でも46.8%です。

「消防団員充足率 68% → 100%」。条例定数に対して、いまは68%。

「市政への参画に関心がある市民の割合 46.1% → 50%」。この記事を書いている私にとって、他人事ではない数字です。

「外国人に対する差別や差別意識を感じない市民の割合 40.4% → 50%」。裏を返せば、いま約6割の市民が「差別や差別意識がある」と答えている。素案の本文にもそう書かれています。市の外国人比率は6.2%で県内5番目。

「アウトリーチによる困窮支援件数 15件 → 130件(令和9〜12年度累計)」。来庁が困難な生活困窮者、支援につながっていない生活困窮者への訪問相談。15件を、4年で130件に。これは後で書く職員募集の話に直結します。

「特定健診受診率 39.9% → 60%」「ごみの資源化率 21.4% → 27%」「オンライン化に対応している行政手続きの割合 86% → 100%」。この最後の一本は、11月2日の窓口短縮とセットで読むべき数字です。

そして「財政調整基金残高 68億円 → 40億円を下回らない」。目標が「増やす」ではなく「下回らない」。これから8年、貯金を取り崩しながら進む前提が、ここに書かれています。

第3次磐田市総合計画(案)の指標一覧68本から抜き出した10本の図。学校内外のどことも「つながり」がない児童生徒数は現状14人から目標0人で、68本のうち目標をゼロに置いた唯一の指標。避難所等までの上下水道管路の耐震化率は現状4.8パーセントから目標46.8パーセントで、対象は避難所等62施設まで。消防団員充足率は条例定数に対して現状68パーセントから目標100パーセント。市政への参画に関心がある市民の割合は市民意識調査で現状46.1パーセントから目標50パーセント。外国人に対する差別や差別意識を感じない市民の割合は現状40.4パーセントから目標50パーセントで、裏を返せば約6割の市民が差別や差別意識があると答えている。アウトリーチによる困窮支援件数は来庁が困難な生活困窮者や支援につながっていない生活困窮者への訪問相談支援件数で、現状15件から令和9年度から12年度の累計130件。特定健診受診率は国民健康保険に加入している40歳以上の市民のうち特定健診を受診した割合で現状39.9パーセントから目標60パーセント。ごみの資源化率は現状21.4パーセントから目標27パーセント。オンライン化に対応している行政手続きの割合は現状86パーセントから目標100パーセント。財政調整基金残高は現状68億円に対し目標は40億円を下回らないこと。いずれも現状値は令和7年、目標値は令和12年。
図2 68指標のうち、私が線を引いた10本(指標一覧から作成)

そして、いちばん大事な数字が入っていない

ここからが、この記事を書いた理由です。

素案の13ページ、第2章「将来人口の推計」を開いてください。こう書かれています。

磐田市の総人口は平成20年(2008年)の176,912人をピークに減少に転じており、令和8年(2026年)3月31日現在の総人口は163,757人。18年で1万3千人あまり減りました。ここまでは実数です。

続きがこうです。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、現状のまま人口減少が進んだ場合、令和17年には「○○○○○人」、令和32年には「○○○○○人」になると推計されています——と。

そして目標。【目標】令和16年度末 約「○○○,○○○人」。【目標】令和32年度末 約「○○○,○○○人」。

伏せ字ではありません。まだ入っていないのです。グラフの場所には「ここには、『将来人口の推計のグラフ』等について記載します」と書かれ、比較表の場所には「ここには、『社人研の推計条件との比較』について記載します」と書かれています。冒頭の市長挨拶も「ここには、市長挨拶文を記載します」のままです。

私が数えたところ、41ページの素案に、こうした未記載の印は14か所ありました。多くは図やイメージ図です。素案の段階で図版が間に合わないことは、実務としてあり得ます。そこは責めません。

けれど、目標人口だけは別です。

総合計画のすべては、人口の前提の上に乗っています。何人のまちとして道路を維持するのか。何人分の学校を残すのか。何人で消防団を組むのか。中古住宅の補助金の記事で私は「その補助金で人口は増えるのか」と書きました。その問いの答えにあたる数字が、意見を求める紙から抜けている。

市民は今日から9月11日まで、目標人口を知らないまま、8年間の計画に意見を書くことになります。

評価——それでも、良い点は三つある

批判だけで終わらせません。この素案には、はっきり評価すべきところがあります。

1つ、68の指標を、定義つきで全部出したこと。「耕作放棄地面積」なら農地法30条に基づく調査で遊休農地と判定された面積、というところまで書いてある。定義が書いてあるから、後で「達成した/していない」を市民が自分で検証できます。やった以上は結果を示してほしい、と私は何度も書いてきましたが、この計画は最初に物差しを公開した。

2つ、都合の悪い数字も載せたこと。上下水道管路の耐震化率4.8%、消防団員充足率68%、市民の約6割が外国人への差別意識を感じている、市内高校3年生の約7割が大学卒業後に市外での就職を希望している。隠していません。

3つ、「しあわせバイタル」という主観指標を持ち込んだこと。日々の充実感、他者への貢献感、地域・社会とのつながり、いきがい、経済的な安定、身体の健康、心の安定、人間関係の良好さ、自己実現、地域への愛着。この10項目で市民の実感を測る、と。数字で測れないものを測ろうとする姿勢自体は、私は買います。

注文——三つ

1つ。目標人口を、募集期間中に追加で公表してほしい。間に合わなかったのなら、間に合った時点で「素案を更新しました」と告知すればいい。そしてその分、締切を延ばすか、少なくとも「人口目標については追って意見を受け付けます」と書く。いちばん大事な数字を伏せたまま集めた意見で、8年を決めてはいけません。

2つ。いま意見を出せるのは、実質「前期4年分」だと明記してほしい。指標の目標値はすべて令和12年、つまり前期基本計画の期間までです。後期(令和13〜16年度)の指標は、4年後に改めて決まる。制度としては正しい設計ですが、「8年間の指針への意見募集」と聞いた市民は、8年分を見て書くつもりで来ます。一行、断り書きがほしい。

3つ。「個別の回答はいたしかねます」の、その先を。市は寄せられた意見の概要と、それに対する市の考え方を後日公表するとしています。個別に返事をしないのは、件数を考えれば当然です。けれど、せめて「何件寄せられ、そのうち何件を反映したか」を分野別に出してほしい。

ここで、7月の記事で調べた数字を思い出します。「(仮称)磐田市こども計画」の案に対するパブリックコメントは、30日間で意見43件、提出者28名でした。子育て世帯みんなに関わる計画で、28名。市の人口はおよそ16万人ですから、およそ5,800人に1人です。

今回は市の最上位計画で、37日間あります。28名を、超えられるかどうか。私はその数字も、後で公表してほしいと思っています。反映されなくてもいい。何人が書いたのかが分かるだけで、次の窓のとき、人はもう少し集まります。

結論——37日間、あります

提案をまとめます。第一に、目標人口の追加公表と、それに応じた意見受付の延長。第二に、いま出せる意見の射程(前期4年)の明記。第三に、意見の件数と反映件数の分野別公表。

そのうえで、読者のみなさんへ。

41ページのPDFを全部読む必要はありません。目次を開いて、自分に関係のある分野のページだけ見てください。子どもがいるなら分野3。親の介護があるなら分野4。台風や地震が心配なら分野5。ごみや道路なら分野6。

そして、指標一覧だけは見てほしい。4ページのPDFです。68本の数字が並んでいるだけですが、そこには「磐田市が8年かけて、どこを、どれだけ良くするつもりか」が全部書いてあります。目標が低いと思ったら、そう書けばいい。その指標がないと思ったら、それを書けばいい。

意見書は様式任意、電子申請もあります。名前と住所と年齢と、該当ページと、意見。それだけです。

私は「無関心の値段」で、見ていない間に家計から引き落とされていくものについて書きました。今回は逆です。見ている人の一行が、8年後の磐田に足される。締切は9月11日、37日間あります。

ついでに、7月の記事で市に出した提案をもう一度置いておきます。「窓が開いたことを、プッシュで知らせてほしい」。今日、市の最上位計画の窓が開きました。この一報が、どれだけの市民の手元に届いたか。それが、次の8年の「共創」がどれくらい本気かを測る、最初の物差しになります。

最後に、この計画の将来像をもう一度書いておきます。「共創で世界とつながるまち」。共に創る、と市が書いたのなら、創る側にまわる入口は、今日から9月11日まで開いています。私も書きます。目標人口のことを、書くつもりです。

出典(2026年8月5日確認)

  • 磐田市「第3次磐田市総合計画(案)に対するパブリックコメント」(2026年8月5日更新。募集期間=令和8年8月5日〜9月11日午後5時15分必着/郵送は9月11日付消印まで有効、対象者=市内に住所を有する方・市内の事業所に勤務する方・市内の学校に在学する方・市内に事務所または事業所を有する方、閲覧場所=本庁舎4階の企画の担当課・本庁舎2階市政情報コーナー・各支所市民生活課・市ホームページ、提出方法=直接提出・郵送・ファクス0538-36-8954・電子申請、意見書の様式は任意、意見募集結果は意見の概要と市の考え方を後日公表・個別の回答はしない。担当=企画部の担当課 電話0538-37-4805) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/kouhou_kouchou/publiccomment/1005813/1016711.html
  • 磐田市「第3次磐田市総合計画(素案)」資料1(令和8年7月28日時点、全41ページ。まちの将来像=「〜共創で世界とつながるまち〜 多様な魅力と幸福感があふれる都市 磐田」〈令和7年度『磐田の将来都市像を考える若者会議』および市民投票の結果を踏まえて決定〉、基本理念=「安心できるまち!共に創ろう魅力ある磐田」、三層構造=基本構想8年〈令和9〜16年度〉/基本計画は前期4年〈令和9〜12年度〉・後期4年〈令和13〜16年度〉/実施計画3年〈毎年度策定〉、7分野、総人口は平成20年〈2008年〉の176,912人をピークに減少し令和8年〈2026年〉3月31日現在163,757人、将来人口の目標値および社人研推計値は「○○○」等の未記載、冒頭に「ここには、市長挨拶文を記載します」の記載、外国人比率6.2%〈令和7年〉で県内5番目、自治会加入率80.3%、製造品出荷額等17,899億円で全国26位・県内3位、市内高校3年生の約7割が大学卒業後に市外での就職を希望、「しあわせバイタル」10項目) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/711/keikaku.pdf
  • 磐田市「指標一覧(巻末資料)」資料2(全4ページ、68指標。現状値は令和7年、目標値は令和12年。つながりがない児童生徒数14人→0人、避難所等までの上下水道管路の耐震化率4.8%→46.8%、消防団員充足率68%→100%、市政への参画に関心がある市民の割合46.1%→50%、外国人に対する差別や差別意識を感じない市民の割合40.4%→50%、アウトリーチによる困窮支援件数15件→130件〈令和9〜12年度累計〉、特定健診受診率39.9%→60%、ごみの資源化率21.4%→27%、オンライン化に対応している行政手続きの割合86%→100%、財政調整基金残高68億円→40億円を下回らない) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/711/shihyou.pdf

※本記事は令和8年7月28日時点の素案(資料1・資料2)を読んで作成しています。素案は今後、市民意見や審議の結果を踏まえて修正される可能性があります。未記載箇所についても、公表後に追記される可能性があります。意見の提出にあたっては、必ず市の最新の案内をご確認ください。