導入——採用情報は、市政のいちばん正直な資料です
8月4日、磐田市のサイトに一つの募集が出ました。「福祉相談課の会計年度任用職員募集」。募集人員は1人です。
職員募集のページは、地味です。ふつうは求職中の人しか読みません。けれど私は、採用情報こそ市政のいちばん正直な資料だと思っています。市がどの仕事に人を置きたいのか、どんな条件で探しているのか、いつまでに欲しいのか。土木職の採用試験に申し込んだのが5人だったという記事を書いたのも、同じ理由でした。
今回の募集を読んで、私は少し手が止まりました。業務内容の一行目に、こう書かれていたからです。
「生活保護ケースワーク」。
募集の中身を、正確に
まず事実を並べます。
募集人員は1人。勤務場所は磐田市健康福祉部福祉相談課、磐田市国府台57-7、磐田市総合健康福祉会館(iプラザ)です。
雇用期間は、令和8年9月1日から令和9年3月31日まで。7か月です。
勤務は祝日と年末年始を除く月曜から金曜、午前8時30分から午後5時(休憩60分)。
業務内容は、福祉相談課生活支援グループに関わる業務——生活保護ケースワーク、パソコン操作、窓口・電話対応、庶務。
必要な経験等として、パソコン操作ができること(ワード・エクセル等を業務で使用)、生活保護ケースワーカーの経験があれば尚可。
必要な免許・資格は、社会福祉士または社会福祉主事任用資格、そして普通自動車免許(AT限定可)。
給与は月給243,731円。通勤手当は規定により通勤距離によって異なります。健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険に加入。
応募方法は、所定の履歴書を郵送。締切は令和8年8月14日必着です。送付先はiプラザ3階の福祉相談課生活支援グループ宛。選考は書類選考の上、面接(令和8年8月18日実施予定)。
ケースワークとは、どういう仕事か
生活保護のケースワーカーは、書類を処理する仕事ではありません。
担当する世帯を訪問し、暮らしの状況を見て、就労や医療や介護につなぎ、家計を一緒に考え、ときには家族関係の話まで聞く。相手が心を開いてくれるかどうかに、仕事の成否がかかっています。
だから、ケースワークは「関係」の仕事です。誰が担当するかで、届き方が変わる。信頼が育つのに時間がかかり、担当が代わればまた一からになる。
そのことを踏まえて、もう一度、雇用期間を見てください。
令和8年9月1日から令和9年3月31日まで。7か月。
会計年度任用職員という制度は、法律に基づく正式な仕組みです。会計年度、つまり年度の終わりまでを一つの単位として任用する。だから9月に採用すれば3月31日まで、というのは制度上まったく正しい。市が何か手を抜いているわけではありません。
けれど、制度が正しいことと、仕事に合っていることは、別の話です。
9月に着任して、担当世帯の顔と名前を覚え、訪問を重ねて、ようやく相手が本音を話し始めるころに3月が来る。更新される可能性はありますが、募集の紙に書いてあるのは3月31日までです。
この募集は、三つの記事とつながっている
この一枚の募集は、私がこの1週間に書いてきた記事と、正面からつながります。
一つ、生活保護費の追加給付。8月1日、私は最高裁判決を踏まえた生活保護費の追加給付について書きました。申し出れば戻ってくるお金がある、と。あの手続きを実際に受け、説明し、書類を書く手伝いをするのが、この募集で来る人です。
二つ、総合計画の指標。今日公開した第3次総合計画(案)の記事で、私はこの指標に線を引きました。「アウトリーチによる困窮支援件数 15件 → 130件(令和9〜12年度累計)」。来庁が困難な生活困窮者、支援につながっていない生活困窮者への訪問相談を、8倍以上に増やす。訪問は、人が足で行くものです。この目標を掲げる市が、いま現場の1人を7か月契約で探している。
三つ、窓口の時間短縮。昨日書いた11月2日からの窓口受付時間の変更で、市は理由の一つに「職員の働き方改革」を挙げました。時間外勤務を減らしたい、と。その願いは、正規職員だけのものではないはずです。この募集の勤務時間は午前8時30分から午後5時。生活保護のケースワークが、いつも定時で終わる仕事だとは、私には思えません。
評価——良い点を三つ
批判の前に、この募集の良いところを挙げます。
1つ、資格要件を明示していること。社会福祉士または社会福祉主事任用資格。誰でもいいから座らせる、という募集ではありません。専門職として求めている。
2つ、給与額を具体的に書いていること。月給243,731円。「市の規定による」で濁していません。会計年度任用職員の待遇としては、決して低い水準ではないと思います。応募する側が生活設計を立てられる書き方です。
3つ、選考の日程まで示していること。締切8月14日、面接8月18日実施予定。いつ結果が動くのかが分かる。これは応募者にとって、ありがたい情報です。
注文——三つ
1つ。応募方法が、郵送のみであること。
所定の履歴書を郵送、8月14日必着。電子申請はありません。
市は総合計画(案)で「オンライン化に対応している行政手続きの割合 86% → 100%」を目標に掲げ、11月からは窓口を短くして電子申請を拡充すると言っています。その市が、自分の職員を採る手続きは紙と郵便です。
締切まで10日。郵便の日数を考えれば、実質はもっと短い。専門資格を持つ人に、10日で履歴書を書いて投函させる。いま働いている人ほど、間に合いません。
2つ。7か月という期間を、どう考えているのかを書いてほしい。
更新の可能性があるのか。次年度も同じ枠を置くのか。それが書かれていないと、応募する側は「3月で終わる仕事」として読みます。資格を持ち、経験もある人ほど、そう読んだら応募しません。
「勤務成績等により再度の任用があり得ます」の一行があるだけで、応募数は変わるはずです。書けない事情があるのなら、それも含めて説明してほしい。
3つ。ケースワーカー1人あたりの担当世帯数を、公表してほしい。
生活保護のケースワーカーの配置には、国が定める標準の考え方があります。磐田市の現状がその標準に対してどうなのか、私は市の公表資料から確認できませんでした。だからここは、断定せずに書きます。
足りているのなら、そう示せばいい。足りていないなら、なおさら示すべきです。この募集が「欠員の補充」なのか「体制の強化」なのかで、読み方はまったく変わります。1人という数字の意味が、いまは分かりません。
結論——いちばん重い相談を、いちばん短い契約で受けている
提案をまとめます。第一に、職員募集にも電子申請を。第二に、再度の任用の可能性について一行の記載を。第三に、ケースワーカーの配置状況の公表を。
そのうえで、この記事の本当の結びを書きます。
市は今日から、8年間の総合計画への意見を募集しています。将来像は「共創で世界とつながるまち」、基本理念は「安心できるまち!共に創ろう魅力ある磐田」。「安心」を土台にする、と書かれています。
その安心が、いちばん細くなっている場所はどこか。私は、生活保護の窓口だと思います。そこに来る人は、たいてい、他のどこにも行き場がなくなってから来ます。
その相談を受ける席が、いま1つ空いていて、9月1日から3月31日までの契約で埋められようとしている。制度としては何も間違っていません。けれど、私はここに、磐田市の——そして全国の自治体の——いちばん苦しい部分が出ていると思いました。
最後に、もし読者のなかに社会福祉士や社会福祉主事任用資格をお持ちの方がいたら。締切は8月14日必着、面接は8月18日、勤務はiプラザ3階です。詳細は市のページと、そこにある履歴書の様式をご覧ください。
私は不動産の仕事をしていて、生活が行き詰まった方の相談を受けることがあります。家を手放すかどうかという話は、たいてい、それだけでは終わりません。そういうとき、最後に頼りになるのは制度ではなく、話を聞いてくれる人が一人いるかどうかでした。
その一人を、市はいま探しています。7か月という短い紙の向こうに、確かに必要とされている席があります。
出典(2026年8月5日確認)
- 磐田市「福祉相談課の会計年度任用職員募集」(2026年8月4日更新。募集人員1人、勤務場所=磐田市健康福祉部福祉相談課〈磐田市国府台57-7 磐田市総合健康福祉会館iプラザ〉、雇用期間=令和8年9月1日から令和9年3月31日まで、勤務日及び勤務時間=祝日・年末年始を除く月〜金曜日の午前8時30分〜午後5時〈休憩60分〉、業務内容=福祉相談課生活支援グループに関わる業務/生活保護ケースワーク/パソコン操作/窓口・電話対応/庶務、必要な経験等=パソコン操作ができる方〈ワード・エクセル等を業務で使用〉・生活保護ケースワーカーの経験があれば尚可、必要な免許・資格=社会福祉士又は社会福祉主事任用資格・普通自動車免許〈AT限定可〉、給与等=月給243,731円・通勤手当は規定により通勤距離によって異なる、加入保険等=健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険、応募方法=所定の履歴書を郵送〈締切日:令和8年8月14日必着〉、選考方法=書類選考の上、面接を実施〈令和8年8月18日実施予定〉。担当=健康福祉部 福祉相談課 生活支援グループ 電話0538-37-4797) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/shokuin_saiyou/1007738/1016471.html
- 磐田市「第3次磐田市総合計画(案)に対するパブリックコメント」および「指標一覧(巻末資料)」(アウトリーチによる困窮支援件数=現状15件→令和9〜12年度累計130件、オンライン化に対応している行政手続きの割合=現状86%→目標100%、まちの将来像「〜共創で世界とつながるまち〜 多様な魅力と幸福感があふれる都市 磐田」、基本理念「安心できるまち!共に創ろう魅力ある磐田」) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/kouhou_kouchou/publiccomment/1005813/1016711.html
※募集内容・締切・選考日程は変更される場合があります。応募を検討される方は、必ず磐田市の募集ページおよび担当課へ直接ご確認ください。なお本記事は、市が公表した募集要項の記載内容のみに基づいて書いています。磐田市におけるケースワーカーの配置人数や担当世帯数、この募集が欠員補充か増員かについては、市の公表資料から確認できていません。
