導入——言った以上は、やらなければならない

前回の記事で、私はこう書きました。「パブリックコメントを、一行でいいから出してみる」。読者のみなさんに勧めた以上、まず自分がやらなければ、ただの口先です。

そこで今日は、実践編です。日曜の朝、コーヒーを淹れて、磐田市のサイトを開きました。書く内容も、頭の中でだいたい決めていました。ところが——結論から言うと、私の一行は、出せませんでした。その顛末を書きます。そして、代わりに見つけたものの話をします。

体験——「意見など募集中の案件」を開いたら

磐田市のサイトには「パブリックコメント」のページがあり、その中に「意見など募集中の案件」という一覧があります。開いてみると——現在、募集中の案件はひとつもありませんでした。

考えてみれば、当たり前のことでした。パブリックコメントは、計画や条例の「案」ができたタイミングで、数週間だけ窓が開く仕組みです。常設の意見箱ではない。窓が開いていない日に行けば、閉まっている。私は「出してみよう」と呼びかけながら、窓がいつ開くのかを知らなかったのです。

では、窓が開いたとき、どれくらいの人が通るのか。直近の大きな案件を見てみます。「(仮称)磐田市こども計画」の案に対するパブリックコメントは、令和7年1月20日から2月18日までの30日間で、意見43件・提出者28名でした。子育て世帯みんなに関わる計画で、です。磐田市の人口はおよそ16万人。28名は、およそ5,800人に1人。前回書いた「無関心」と、「関心の入り口の狭さ」が、この一つの数字に同居しています。

パブリックコメントを出そうとした体験の流れをまとめた図。前回の記事で一行でいいから出してみると宣言し、市のサイトの意見など募集中の案件を開いたところ、募集中の案件は0件だった。パブリックコメントは計画や条例の案ができたタイミングで数週間だけ窓が開く仕組みで、常設の意見箱ではない。直近の大きな案件である磐田市こども計画の案へのパブリックコメントは、令和7年1月20日から2月18日の30日間で意見43件・提出者28名。人口およそ16万人の磐田市で、およそ5,800人に1人だった。
図1 実践編の顛末——窓は閉まっていた。開いたときも、通ったのは28名

それでも探したら、常設の「ドア」があった

窓が閉まっているなら、ドアを探すしかありません。市のサイトを掘っていくと、見つけました。「いわたのくらしラボ」——磐田市が導入している、オンラインの意見交換プラットフォーム(Liqlid)です。

仕組みはこうです。市がまちづくりに関するテーマを立て、参加者が意見や提案を投稿する。他の参加者の投稿に「いいね」やコメントもできる。利用者登録は無料で、読むだけなら登録も要りません。パブリックコメントのような期間限定の窓ではなく、テーマが立っている間は、いつでも書き込める。

そして、テーマの一覧を見て、思わず声が出ました。「空き家を活用した掛塚まちづくりについて」。空き家。私の本業のど真ん中です。竜洋の掛塚は、天竜川の河口に栄えた廻船問屋のまちで、古い家並みが残る地区。そこの空き家活用について、市が意見を募っている。見付宿の記事で「旧東海道の空き店舗をまず一軒動かそう」と書いた私です。書きたいことは、いくらでもあります。

ところが——正直に白状します。書き込もうとして、手が止まりました。本業の、ど真ん中すぎるのです。空き家活用の議論の場に、現役の不動産業者が「こうすべきです」と書き込めば、それは意見ではなく営業と受け取られかねない。まちづくりの公の場は、利害を持つ者ほど、発言に慎重であるべき場所です。だから今回、私はここに書き込むのをやめました。二度目の空振りです。恰好がつきません。

その代わり、二つだけ書いておきます。一つ。もし市や地域の側から、空き家の調査や台帳づくりに業者の手が要るという話になれば、そのときは正式な形で喜んで協力します。順番は、あちらから。それが筋だと思っています。二つ。だからこそ、利害のないみなさんの一行にこそ、価値があります。たとえば——「掛塚の古い家並みが好きです。空き家の中を見られる見学会があれば行ってみたい」。この程度でいいのです。売り込むもののない人の素朴な一行は、業者の百行より、行政に効きます。

評価——良い点と、注文したい点

今回の体験から、磐田市の「意見の入り口」を是々非々で整理します。

良い点は3つ。1つ、常設のオンライン参加の場を持っていること。この種のプラットフォームを入れている自治体は、まだ多くありません。磐田は意見の受け皿という点で、実は進んでいる側です。2つ、閲覧に登録が要らないこと。まず読むだけ、ができる敷居の低さは大事です。3つ、テーマの立て方が「掛塚の空き家」のように具体的なこと。「まちづくりについてご意見を」では書けない人も、具体的なテーマなら書けます。

注文も3つ。1つ、存在が知られていなさすぎること。市政を一年以上追いかけている私が、今回初めてたどり着きました。サイトの奥にあり、パブリックコメントのページからの案内も見当たらない。2つ、意見の入り口が分散していること。パブリックコメント、くらしラボ、広報広聴課への電話や手紙——それぞれ別の場所にあり、「意見を言いたい」と思った市民がどこへ行けばいいのか、一目で分かりません。3つ、窓が開いたことを知らせる仕組みがないこと。パブリックコメントの募集開始を、市民が自分から見に行かないと気づけない。28名という数字の少なくとも一部は、これで説明がつくはずです。

磐田市に意見を届ける3つの入口をまとめた図。1つ目はパブリックコメントで、計画や条例の案に対して数週間だけ窓が開く期間限定の正式な手続き。2つ目はいわたのくらしラボで、オンラインの常設プラットフォーム。利用者登録は無料で、閲覧だけなら登録不要。空き家を活用した掛塚まちづくりなどのテーマに意見や提案を投稿できる。3つ目は広報広聴課への電話・手紙・窓口で、テーマを問わずいつでも届けられる。注文として、この3つの入口を1ページにまとめ、パブリックコメントの募集開始を知らせる通知の仕組みをつくることを提案している。
図2 磐田市に意見を届ける、3つの入口(2026年7月確認)

対案・結論——窓の「開閉」を、知らせてほしい

提案は3つです。

第一に、「意見の総合入口」を1ページつくる。パブリックコメント、くらしラボ、広報広聴課の連絡先を一枚に並べ、「いま出せる意見はこれ」と一目で分かるページです。つくるのに大きな予算は要りません。

第二に、パブリックコメントの募集開始を、プッシュで知らせる。市のLINE公式アカウントなり、メール配信なりで、「本日から○○の意見募集が始まりました。締切は○日」と一報入れる。窓が開いたことさえ知れば、一行書く人は増えます。28名を280名にする最短の道は、たぶんこれです。

第三に、出た意見の「その後」を、分かりやすく返す。こども計画の43件には、市の考え方がPDFで公表されています。手続きとしては誠実です。ただ、PDFを開く人は多くない。「いただいた意見で、案がここ変わりました」の一覧を、本文のページに数行でいいから載せる。前回も書きましたが、返事のない投書箱に二度目の手紙は来ないのです。

最後に一言。今日の記事は、二重の空振りの記録です。パブコメを出すと宣言して窓が閉まっていて、代わりに見つけたドアの前では、本業が理由で手が止まりました。恰好のつかない話ですが、これも正直に書いておきます。利害を持つ者は、公の場での一行に慎重であるべきだ——それも、この連載で学んだことの一つだからです。「いわたのくらしラボ」、読むだけなら登録も要りません。まず覗いてみてください。そして次にパブリックコメントの窓が開いたら、この連載で必ずお知らせします。そのときこそ、一緒に一行、書きましょう。今度は私も、利害のない一市民として書けるテーマを待っています。

出典(2026年7月確認)

  • 磐田市「意見など募集中の案件 パブリックコメント」(2026年7月27日時点で募集中案件の掲載なし) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/kouhou_kouchou/publiccomment/1005813/index.html
  • 磐田市「(仮称)磐田市こども計画(案)に関するパブリックコメント結果」(募集期間 令和7年1月20日〜2月18日、意見43件・28名) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/kouhou_kouchou/publiccomment/1002568/1015355.html
  • 磐田市「オンラインプラットフォーム(いわたのくらしラボ/Liqlid)」(利用者登録無料・閲覧は登録不要、テーマ「空き家を活用した掛塚まちづくりについて」ほか) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/1006207/1015443.html / https://iwata-city.liqlid.jp/

※募集状況・テーマは変更される場合があります。最新情報は磐田市公式サイトおよび「いわたのくらしラボ」でご確認ください。