導入——三本の記事が、一日に集まってしまった
この三日間で、私は三本の記事を書きました。市のLINEが約15時間半止まった話。令和8年熊本地震から磐田が受け取るべきことの話。そして磐田でも落雷で停電していた話です。
書き終えてから気づきました。三本とも、同じ7月28日の出来事なのです。
先に、いちばん大事なことを書きます。この三つに因果関係があるとは、私には言えません。熊本の地震と磐田の落雷は無関係でしょう。LINEの障害についても、市の告知に原因の記載はありません。地震の影響なのか、雷の影響なのか、まったく別のことなのか——分からないものを、分かったふりで結びつけるのは、防災の話でいちばんやってはいけないことです。
それでも、この一日を並べて書いておきたいと思いました。理由は一つです。因果は分からなくても、「重なったときに何が消えるか」は分かるからです。
まず、7月28日を時刻順に並べる
事実だけを、時計の順に置きます。
16時27分。熊本県熊本地方でマグニチュード7.1の地震。宇城市と氷川町で最大震度7。有明・八代海に津波注意報が出て、18時10分に解除されました。
16時57分ごろ。磐田市のLINE公式アカウントが使えない状態になりました。復旧は翌29日の午前8時30分。およそ15時間半です。
同じ7月28日。磐田市内では落雷により、一部地域で停電が発生しました。市の告知によれば、29日午前9時の時点でまだ復旧作業が続いていました。時刻は公表されていません。
そして翌29日、市は「LINE公式アカウント障害復旧のお知らせ」と「市内一部地域の停電とクーリングシェルターのご案内」を、それぞれ出しています。
もう一度書きます。三つを結ぶ線があるかどうかは、分かりません。ただ、この日、磐田の一部の家では「電気がない」状態が続き、同じ時間帯に、市が持つ連絡手段の一つが使えなくなっていた——この二つが事実として重なったことだけは、確かです。
重なると、何が消えるのか
ここからが本題です。停電と、連絡手段の停止。この二つが同じ家に同時に来ると、何が起きるのか。順に潰してみます。
テレビは映りません。停電ですから当然です。インターネットも使えません。光回線の機器やWi-Fiのルーターは、コンセントで動いています。停電すれば、家の中の電波は消えます。
残るのは、スマホの電池と携帯回線です。ところが、そのスマホで市のLINEを開こうとしたら、この日は使えませんでした。磐田市のLINEには、避難所・避難施設の検索、粗大ごみの申請、介護認定の進捗確認、道路の通報まで入っています。つまりスマホの中の市役所窓口です。その窓口が、閉まっていた。
市のホームページは動いていました。だから情報を取る道は残っていました。しかし——ふだんLINEしか見ていない人は、「市が何か言っているかどうか」を確かめる手段を失っていたことになります。しかも、停電した家のスマホの電池は、時間とともに減っていきます。
ここで浮かび上がるのが、単一障害点という考え方です。仕組みの中に「そこが壊れたら全部止まる一点」があると、システムはその一点の強さしか持てません。今回、幸いにも被害は小さく、朝までに復旧が進みました。しかしもし、これが台風の夜だったら。地震のあとだったら。電気がなく、ネットがなく、市のLINEも止まっている——そのとき、磐田の市民に情報を届ける道は、何本残っているでしょうか。
評価——磐田の手持ちを、数えてみる
悲観的な話ばかりではありません。磐田市は、情報を届ける管を複数持っています。良い点として3つ挙げます。
1つ、防災行政無線(同報無線)があること。屋外のスピーカーから流れる音は、停電した家にも届きます。電池も回線も要りません。いちばん古い手段が、いちばん壊れにくい。2つ、いわたホッとメールという別経路があること。LINEが止まっても、メールは別の仕組みで動きます。3つ、ホームページを止めなかったこと。今回、障害の告知はホームページに出ました。当たり前のようでいて、これが最後の砦になりました。
そのうえで、注文を3つ。
1つ。「どれが止まったとき、どれで知らせるか」の対応表が、市民に示されていないことです。LINEが止まったらホッとメールとホームページ。停電したら防災行政無線。この一枚の表があるだけで、慌てる人は確実に減ります。私はLINE障害の記事で同じことを書きましたが、今回の停電を見て、いよいよ必要だと思いました。
2つ。停電の告知が、停電している人に届く経路で出されたのか分からないこと。ホームページに載せても、その家ではネットが使えません。前の記事でも書きましたが、停電の告知だけは、停電しても届く手段で出す必要があります。防災行政無線で「○○地区で停電しています。涼しい場所は△△です」と流すだけでも、意味は大きい。
3つ。市の側にも「単一障害点」の点検表がほしいということです。LINEに窓口機能を集めるのは効率的で、私はその方向自体には賛成です。ただ、集めるほど、そこが止まったときの空白は大きくなります。避難所検索のように命に関わる機能は、LINE以外の道も同時に用意しておくべきです。
対案・結論——「最後の一本」を決めておく
提案は3つ。行政に2つ、私たち自身に1つです。
第一に、非常時の情報の「最後の一本」を決めて、公表すること。何が起きても、ここを見れば(聞けば)分かる——その一本を、市がはっきり決めて、平時に周知しておく。私は防災行政無線とホームページの二本立てが現実的だと思います。決まっていれば、市民は迷いません。
第二に、指定施設の一覧に、非常時に使える情報を足すこと。前の記事で書いた「非常電源の有無」に加えて、「停電時の問い合わせ先」も。停電と暑さと情報の不足は、いつも一緒に来ます。ばらばらの課がばらばらに出している情報を、一枚に束ねてほしい。
第三に、私たち自身の備えです。電池で動くラジオを一台、家に置いてください。数千円です。停電しても、電波は流れています。あわせて、モバイルバッテリーを一つ。スマホの電池は、情報だけでなく家族との連絡にも要ります。昨日の記事で「家具の固定と水の備え」を書きましたが、今日はここに「ラジオと電池」を足させてください。
最後に一言。7月28日は、たまたま三つが重なった日でした。熊本では震度7、磐田では落雷と停電、そして市のLINEの停止。因果関係は分かりません。分かるのは、こういう日が実際にあるということだけです。そして次にこの三つが重なる日は、被害がこれほど小さいとは限りません。この連載で、私は繰り返し「入り口を太くしてほしい」と書いてきました。今日はそれを、少し言い換えます。入り口は、太くするだけでなく、二つ以上あってほしい。一つしかない入り口は、閉まった瞬間にゼロになるからです。
出典(2026年7月30日確認)
- 国土交通省「令和8年熊本地震による被害状況等について(第5報)」(令和8年7月28日16時27分発生、M7.1、最大震度7=宇城市・氷川町、津波注意報16:29発表〜18:10解除) https://www.mlit.go.jp/saigai/saigai_260728.html
- 磐田市「磐田市LINE公式アカウント」(通信障害=7月28日午後4時57分ごろ発生・7月29日午前8時30分復旧、搭載メニュー=防災/子育て/家庭ごみ/道路通報/健幸/福祉) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/kouhou_kouchou/socialmedia/1011768/index.html
- 磐田市「市内一部地域の停電とクーリングシェルターのご案内」(7月28日の落雷により市内一部地域で停電、7月29日午前9時時点で復旧作業中) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/bousai_anzen/1016797.html
- 磐田市「広報・広聴」(広報いわた、いわたホッとメール、SNS、防災行政無線などの発信手段) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/kouhou_kouchou/index.html
※三つの出来事の因果関係については、公表資料に記載がなく、本記事は関連を断定するものではありません。LINE通信障害の原因、停電の発生時刻・地域・戸数は公表されていないため、確認できた範囲で記述しています。