はじめに——お見舞いを申し上げます

昨日、7月28日の午後4時27分。熊本県で最大震度7の地震が起きました。気象庁は「令和8年熊本地震」と命名しています。

亡くなられた方に心よりお悔やみを申し上げます。そして、いま被災地で不安な夜を過ごしている皆さま、ご家族の安否を案じている皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。余震はまだ続いています。どうか、ご無事で。

遠く静岡から、私にできることは多くありません。募金や支援の呼びかけは、確かな窓口が整ってから改めて書きます。今日この記事を書くのは、別の理由です。被災地の現実を、磐田に置き換えて考えておくこと。それが、離れた土地の人間にできる、せめてもの受け取り方だと思うからです。

被災された方の苦しみを「教訓」という言葉で消費するつもりはありません。ただ、私たちの足元は南海トラフの想定域です。次は、こちらかもしれない。その前提で、書かせてください。

まず、何が起きているか(7月29日時点)

国土交通省が7月29日14時現在でまとめた資料などから、事実を整理します。

地震は令和8年7月28日16時27分、震源は熊本県熊本地方、深さ16km(暫定値)、規模はマグニチュード7.1(暫定値)。震度7を宇城市と氷川町で観測し、熊本市・八代市・宇土市・美里町・益城町で震度6強。有明・八代海に津波注意報が出て、1時間41分後に解除されました。29日12時までに、震度3以上の地震が48回起きています。

ライフラインでは、7月29日12時時点で5県24自治体で断水などが発生し、最大断水戸数は約84,000戸。同時点でも2県11自治体で約84,000戸が断水中です。避難所は465か所に開設され、避難している方は約9,872人(29日12時時点)と伝えられています。九州新幹線は全線で運転を見合わせ、高速道路は3路線17区間が通行止め。橋の損傷も各所で出ています。

そして、資料を読んでいていちばん胸が詰まったのは、この一節でした。「熊本県では、29日から8月5日にかけて最高気温が35度以上の猛暑日となり、特に2日(日)は最高気温が40度の酷暑日となる見込み。危険な暑さがしばらく続く」。断水と停電の中で、避難所で、あるいは壊れかけた家で、この暑さを越えなければならない方がいます。

令和8年熊本地震の概況をまとめた図。発生は令和8年7月28日16時27分、震源は熊本県熊本地方、深さ16キロメートル、マグニチュード7.1、いずれも暫定値。最大震度7を宇城市と氷川町で観測し、熊本市・八代市・宇土市・美里町・益城町で震度6強。有明・八代海に津波注意報が16時29分に発表され18時10分に解除。7月29日12時までに震度3以上の地震が48回発生。水道は7月29日12時時点で5県24自治体で断水などが発生し、最大断水戸数は約84,000戸、同時点でも約84,000戸が断水中。避難所は465か所、避難者は約9,872人。九州新幹線は全線運転見合わせ、高速道路は3路線17区間が通行止め。気象の見通しでは熊本県は7月29日から8月5日にかけて最高気温35度以上の猛暑日、8月2日は40度の酷暑日の見込み。
図1 令和8年熊本地震の概況(国土交通省の被害状況等〈7月29日14時現在〉ほかから作成)

磐田に置き換える——書いてきたことが、全部つながった

この数字を、磐田の物差しで測り直します。すると、私がこの一年ほど書いてきたことが、不気味なほど一直線に並びました。

一つ目。断水、約8万4千戸。磐田市の世帯数は、令和8年6月末で72,400世帯です。熊本で断水している戸数は、磐田市の全世帯より多い。私は「管を入れ替えるのに154年かかる」と書き、その理由が土木技師不足だと市の資料に書かれていたことも書きました。今年の土木職の採用は、申込5人・合格4人です。古い管が地面の下にあるということは、揺れた瞬間に水が止まるということです。水道の値上げの話を家計の目線で書いてきましたが、値上げの本当の意味は、「揺れた日に、何日で水が戻るか」なのだと、今回の断水戸数を見て思い知りました。

二つ目。猛暑日の避難所。私は「体育館にエアコンを」という記事で、子どもの熱中症と災害時の避難所という二つの理由を書きました。当時は「あったほうがいい」という話でした。いま熊本で起きているのは、40度が予想される日に、避難所で夜を明かすという現実です。磐田でも熱中症の特別警戒アラートが出る夏に、もし地震が重なったら。エアコンのない体育館は、避難所ではなく別の危険な場所になります。

三つ目。連絡手段。ここは、正直に書きます。今日の午前、私は磐田市のLINEが約15時間半止まったという記事を書きました。障害の発生は7月28日16時57分ごろ。熊本の地震発生は、その30分前の16時27分です。市の告知に原因の記載はなく、両者に関係があるのかどうか、私には分かりません。断定は避けます。ただ、事実として時刻は近い。そして磐田市のLINEには、避難所・避難施設の検索機能が入っています。大きな地震のあと、その機能が使えなくなる——それが現実に起こりうるということだけは、はっきりしました。

熊本の現実を磐田に置き換えた3つの問いをまとめた図。1つ目は水で、熊本の断水は約84,000戸、磐田市の世帯数は令和8年6月末で72,400世帯であり、熊本の断水戸数は磐田の全世帯より多い。磐田の水道管は入れ替えに154年かかるとされ、その理由として土木技師不足が市の資料に書かれ、今年の土木職採用は申込5人・合格4人だった。2つ目は暑さで、熊本は7月29日から8月5日にかけて猛暑日、8月2日は40度の酷暑日の見込みであり、避難所は465か所・約9,872人。磐田の体育館にエアコンはあるか。3つ目は連絡で、磐田市のLINEが7月28日16時57分ごろから約15時間半止まり、そのLINEには避難所検索機能が入っている。原因は公表されておらず地震との関係は不明だが、大地震のあとに連絡手段が使えなくなることは現実に起こりうる。
図2 熊本の現実を、磐田の物差しで測り直す

評価——磐田の備えを、是々非々で見る

磐田市の備えについて、良い点を3つ挙げます。

1つ、デジタルハザードマップが整備され、自宅の浸水想定を誰でも確認できること。2つ、防災士の養成講座にサテライト会場を設け、地域の担い手を育てようとしていること。3つ、市が河川の水位やカメラ映像を公開し、水辺の危険を自分で確かめられるようにしていること。備えの土台は、確かにあります。

そのうえで、注文を3つ。

1つ。水の備えの「日数」を示してほしい。断水が起きたとき、磐田では何日で復旧できる見込みなのか。応急給水の拠点はどこに、何か所あるのか。「154年」という更新の数字と、「何日で水が戻るか」という数字は、市民にとっては同じ一つの問題です。後者を示してほしい。

2つ。夏の避難所の暑さ対策を、具体的に示してほしい。体育館のエアコン設置がどこまで進んでいるのか。停電時に動く電源はあるのか。冷房の効く施設を優先的に開ける段取りはあるのか。熊本の40度予報は、他人事ではありません。

3つ。連絡手段が止まった前提の手順を、平時に配ってほしい。今朝の記事でも書きましたが、LINEが止まったとき、LINEでは知らせられません。「スマホが使えないときの避難所の調べ方」を、紙一枚で、全戸に。地味ですが、いちばん確実です。

対案・結論——今日、家でできる3つ

行政への注文と同時に、私たち自身が今日できることを3つ書きます。専門的なことは書きません。今夜のうちに終わることだけです。

第一に、寝室の家具を固定する。地震で亡くなる方の多くは、倒れてきたものの下敷きになります。不動産の仕事で数えきれないほど家を見てきましたが、寝室にタンスや本棚が固定されずに置かれている家は、いまも本当に多い。ホームセンターで数千円です。今日の夕方、寝る前にできます。

第二に、水を用意する。一人一日3リットル、3日分。4人家族なら36リットル、2リットルのペットボトルで18本です。熊本の断水戸数を見たあとなら、この数字の意味が分かるはずです。ついでに、風呂の残り湯を抜かずに置いておく。トイレを流す水になります。

第三に、家族の集合場所と、連絡がつかないときの決めごとを話す。スマホが使えない前提で。「学校にいたら学校で待つ」「うちの避難先は○○小学校」——この程度の一言で構いません。元気なうちに家族で話しておくのは、実家じまいだけの話ではありませんでした。

最後に一言。私は不動産屋なので、古い家をたくさん見てきました。昭和56年5月以前の建物は旧耐震で、中古住宅の補助金にも耐震の要件が付いています。耐震診断と補強には市の制度があります。「うちは大丈夫だろう」と何十年も先送りにされた家を、私は何軒も知っています。かく言う私も、実家の耐震のことを本気で考えたのは、この記事を書きながらでした。

熊本の皆さまが、一日も早く水と電気と、涼しい場所を取り戻せますように。そして、その現実から目をそらさずに、私たちの足元を点検しておくこと。遠くの被災を、自分のまちの備えに変える。それが、いま磐田にいる私たちにできる、いちばん誠実な受け取り方だと思います。

出典(2026年7月29日確認)

  • 国土交通省「令和8年熊本地震による被害状況等について(第5報)」(令和8年7月29日14:00現在。発生日時・規模・各地の震度、津波注意報、震度3以上48回、水道は5県24自治体で断水等・最大断水戸数約84,000戸、道路・鉄道・空港の状況、熊本県の気象見通し=7月29日〜8月5日に最高気温35度以上・8月2日は40度の見込み) https://www.mlit.go.jp/saigai/saigai_260728.html
  • 気象庁による命名「令和8年熊本地震」(令和8年7月28日19時30分)ほか報道各社(避難所465か所・避難者約9,872人=7月29日12時時点)
  • 磐田市「磐田市の人口 令和8年度」(令和8年6月末現在=72,400世帯) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/profile/toukei/1005583.html

※被害状況は7月29日時点の速報値であり、今後変わることがあります。最新の情報は国・県・各報道機関の発表をご確認ください。磐田市のLINE通信障害と本地震との関係については、公表資料に記載がなく、本記事は関連を断定するものではありません。