導入——書いた翌日に、現実に叱られた
一昨日と昨日、私はこの場で「意見の入り口」の話を書き続けました。そして昨日の記事では、はっきりこう提案しています。「市のLINEやメールで『今月はこの会議があります』と一報流すだけで、傍聴に行ける人は確実に増えます」と。
その提案を書いた、まさに同じ日のことです。市のサイトに、こんなお知らせが出ました。「磐田市LINE公式アカウント通信障害のお知らせ」。7月28日午後4時57分ごろからサービスが使えなくなり、復旧したのは翌29日の午前8時30分。およそ15時間半、止まっていたことになります。
正直、苦笑しました。プッシュ通知を推した翌日に、その通知の管が詰まった。今日は、この出来事を自分への問い直しとして書きます。便利な一本の管に、どこまで頼っていいのか。
まず、事実を整理する——あの中に、何が入っているか
障害の経過は、市の発表どおりです。7月28日午後4時57分ごろ発生、29日午前8時30分に復旧。市の告知を読む限り、原因はLINE側のサービス障害とみられます。市が何か失敗したという話ではありません。
問題は、あのアカウントに何が乗っているかです。磐田市のLINE公式アカウント(@iwata_city)を開くと、単なるお知らせ配信ではないことが分かります。防災メニュー(避難所・避難施設の検索)、子育てメニュー(幼児健診やイベントの予約)、家庭ごみメニュー(粗大ごみの申請、収集日の通知)、道路の通報、健幸メニュー(相談予約)、福祉メニュー(見守りサービス、介護認定の進捗確認)。
並べてみて、背筋が伸びました。これはもう、広報チャンネルではありません。スマホの中に置かれた、もう一つの市役所窓口です。粗大ごみを申し込む人も、健診を予約する人も、介護認定がどこまで進んだか確かめる家族も、ここを使っている。そして避難所を探す機能まで入っています。
今回の障害は、夕方から翌朝という時間帯でした。幸い、大きな災害も起きていません。けれども、これがもし台風の夜だったら。熱中症の特別警戒アラートが出る日だったら。デジタルハザードマップを見ようとした人が、避難所検索にたどり着けなかったら。「たまたま平時だった」で片づけてはいけない15時間半だと思うのです。
評価——良い点と、注文したい点
良い点を3つ挙げます。
1つ、復旧後すぐに、障害があったことを公表したこと。発生時刻と復旧時刻を書いて、サイトに残す。当たり前のようでいて、これをやらない組織はあります。記録を残す姿勢は評価します。2つ、LINEの作り込みが本格的であること。避難所検索から介護認定の進捗まで、ここまでメニューを揃えている自治体はそう多くありません。市役所の裏方仕事を軽くするという意味でも、正しい投資です。3つ、市にはほかにも発信の手段があること。広報いわた、いわたホッとメール、ホームページ、防災行政無線、各SNS。管は一本ではありません。
そのうえで、注文が3つあります。
1つ。「止まったことを、どう知らせるか」の設計です。今回の障害告知は市のホームページに載りました。しかし考えてみてください。LINEが止まったとき、LINEでは知らせられない。ふだんLINEしか見ていない人は、止まったことにも気づけません。「あれ、反応がないな」と思うだけです。障害時にどの経路で知らせるのか——ホッとメールなのか、ホームページなのか、防災行政無線なのか。あらかじめ決めて、市民にも周知しておくべきです。
2つ。災害時の代替手順を、平時から示すこと。避難所検索がLINEに入っているなら、「LINEが使えないときは、この方法で避難所が分かります」という一行が要ります。防災士養成講座の記事で地域防災の担い手の話を書きましたが、いざというとき頼りになるのは、結局「複数の道を知っていること」です。
3つ。デジタルに寄せるほど、寄れない人が残ること。私はATMが消えた記事で、現金と対面を頼る人のことを書きました。見付宿の会では申込が電子申請のみであることに注文をつけ、国保税の記事では税率表が画像で読めないことを書きました。便利にするほど、その便利さの外側にいる人の孤立は深くなります。今回止まったのはLINEですが、明日止まるのは別の何かかもしれません。
対案・結論——それでも私は、プッシュ通知を推す
ここで、昨日の自分の提案を撤回するつもりはありません。審議会やパブリックコメントの告知は、やはりLINEやメールで流すべきです。市民に届かない告知は、告知ではないからです。
ただし、条件を付け加えます。3つです。
第一に、同じ情報を、必ず二経路以上で出すこと。LINEで流したものは、ホームページにも必ず残す。広報いわたにも載せる。手間は増えますが、これが冗長性というものです。一つ止まっても情報が死なない設計が、公共の仕事には要ります。
第二に、障害時の連絡経路を、平時に決めておくこと。「LINEが止まったら、ホッとメールとホームページで知らせます」——この一行を、LINEの案内ページに書いておく。それだけで、慌てる人は減ります。
第三に、紙と電話と回覧を、最後の一本として残すこと。効率だけを考えれば、紙は無駄に見えます。しかし紙は、電気が止まっても、サーバーが落ちても、届いたところに留まり続けます。いちばん古い手段が、いちばん壊れにくい。これは災害の多い土地に住む者の実感です。
最後に一言。今回の障害は、たまたま平日の夕方から朝でした。誰も困らなかったかもしれません。だからこそ、いま考えておくべきだと思うのです。私たちは便利さを手に入れるとき、たいてい、それが止まる日のことを考えません。私自身、昨日「LINEで流してほしい」と書いたとき、LINEが止まる可能性を一行も考えていませんでした。便利な道具を勧めるなら、それが使えない日の道筋まで一緒に用意する。それが、公共の情報を扱うということなのだと、15時間半の障害に教わりました。
出典(2026年7月確認)
- 磐田市「磐田市LINE公式アカウント」(通信障害のお知らせ=7月28日午後4時57分ごろ発生・7月29日午前8時30分復旧、搭載メニュー=防災/子育て/家庭ごみ/道路通報/健幸/福祉) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/kouhou_kouchou/socialmedia/1011768/index.html
- 磐田市「広報・広聴」(広報いわた、いわたホッとメール、SNS、防災行政無線などの発信手段) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/kouhou_kouchou/index.html
※障害の原因や詳細は、市の公表内容に基づいています。最新の復旧状況は磐田市公式サイトでご確認ください。