導入——先に、二つ断っておきます

8月4日、磐田市が一つの告知を出しました。「期日公売を実施します」。市税の滞納処分で差し押さえた財産を、入札にかけて売るという知らせです。

この記事を書くにあたって、先に二つ断っておきます。

一つ。私は不動産業者です。つまり、この種の公売に参加しうる立場にあります。だからこの記事では、物件の善し悪しや、買い時かどうかといった評価は一切書きません。書くのは、「なぜ市が土地を売るのか」という市政の話だけです。

二つ。誰の土地なのかは、書きません。公売の告知には所在地が載っています。市が公表している情報ですから、記事でも所在地には触れます。ただ、その先——誰が滞納したのか、なぜそうなったのか——には一切踏み込みません。そして読者のみなさんにも、詮索しないでいただきたい。差し押さえに至る事情は、たいてい、外から見て分かるものではありません。

そのうえで書きます。今日いちばん伝えたいのは、公売そのものではなく、そこに至る前に、降りる道があるということです。

まず、事実を整理する

市の告知によれば、納税の公平性を確保するため、国税徴収法に基づく市税等の滞納処分により滞納者から差し押さえた財産を、期日入札の方法で公売します。

日程は、公売期日が令和8年10月8日(木曜)午後3時から。参加申込が同日午後3時から3時30分、入札が3時30分から4時、開札が午後4時。売却決定は10月30日(金曜)です。会場は磐田市役所西庁舎3階の302・303会議室。

公売財産は一件、売却区分番号 第2026F001号、静岡県磐田市見付3355-1外の土地。見積価格28,080,000円、公売保証金2,810,000円です。市のページには公図、地積測量図、そして北側・東側・南側の現地写真まで公開されています。

当日の持ち物も具体的です。公売保証金は必ず現金で持参。281万円を現金で、ということです。加えて身分証明書、陳述書、印章(スタンプ不可)。代理人が入札する場合は委任状と委任者の印鑑証明書。そして営利法人または不動産業を営む方のみ、収入印紙200円が必要とされています。共同入札の様式も用意されています。

なお磐田市には、この期日公売とは別にインターネット公売の仕組みもあります。担当は企画部収納課です。

磐田市の期日公売の概要をまとめた図。市は納税の公平性を確保するため、国税徴収法に基づく市税等の滞納処分により滞納者から差し押さえた財産を期日入札の方法で公売する。公売期日は令和8年10月8日木曜の午後3時から、参加申込は同日午後3時から3時30分、入札は3時30分から4時、開札は午後4時、売却決定は10月30日金曜。会場は磐田市役所西庁舎3階の302・303会議室。公売財産は売却区分番号第2026F001号、静岡県磐田市見付3355-1外の土地で、見積価格は28,080,000円、公売保証金は2,810,000円。公図、地積測量図、北側・東側・南側の現地写真が公開されている。当日の持ち物は、公売保証金を必ず現金で持参すること、身分証明書、陳述書、印章でスタンプ不可、代理人の場合は委任状と委任者の印鑑証明書、営利法人または不動産業を営む方のみ収入印紙200円。担当は企画部収納課。
図1 期日公売の概要(磐田市公表資料から作成)

ここに至るまでの、五つの段階

ここからが本題です。差押えと公売は、ある日突然やってくるものではありません。市のサイトには「市税の滞納と延滞金」というページがあり、そこに流れが書かれていました。

第一段階、滞納の発生。口座振替なら、まず振替不能の通知が届きます。この通知で納めることができます。

第二段階、督促状の発送。納期限が過ぎてから約20日後。督促状でも納めることができます。

第三段階、催告書の発送。随時発送されます。市のページには、この段階についてこう書かれています。「法的に差押可能な状態です」。

第四段階、財産調査。国税徴収法に基づいて、財産が調べられます。

第五段階、差押・換価。見つけた財産を差し押さえ、換価して市税に充てる。今回の公売は、この最後の段階です。

そして市のページには、この流れの直後に、こう添えられていました。

「納めたくても納められない、そんなときは早めに納税相談をしてください」。

忘れてはいけないのが、延滞金です。納期限を過ぎると、納期限の翌日から完納の日まで、日数に応じて延滞金がかかります。令和8年の率は、納期限の翌日から1か月までが年2.8%、1か月を経過した日からは年9.1%。放置した期間が長いほど、元の税額とは別に積み上がっていきます。

降りる道は、用意されている——市税の猶予制度

そしてもう一つ、市のサイトには「市税の猶予制度」というページがありました。今日、私がいちばん知ってほしいのはこれです。

市の説明によれば、災害、病気、事業の休廃業などにより市税を一時に納付することができないと認められる場合、あるいは一時に納付することで事業の継続または生活の維持が困難となるおそれがあると認められる場合には、市税の納付を一定期間猶予できる制度があります。「徴収猶予」と「換価の猶予」の二つです。

申請の手引き、申請書、財産収支状況書といった様式まで、市のページに揃っています。問い合わせは収納課収納グループ(0538-37-4906)。

さらに、このページには続きがありました。市税以外の料金についても相談に応じるとして、介護保険料(高齢者支援課 0538-37-4769)、後期高齢者医療保険料(国保年金課 0538-37-4863)、上下水道料金センターの連絡先が並べてあります。

つまり、公売という出口の反対側に、ちゃんと入口が用意されている。これは評価すべきことです。私は国保税の記事で「払えないときに黙って滞納するのが、いちばん損」と書きました。その言葉に、市の側の裏付けを見つけた思いです。

市税を滞納した場合の流れと、途中で降りる道を整理した図。第一段階は滞納の発生で、口座振替の場合は振替不能通知が発送され、その通知で納めることができる。第二段階は督促状の発送で、納期限が過ぎてから約20日後に発送され、督促状でも納めることができる。第三段階は催告書の発送で随時発送され、市のページには法的に差押可能な状態ですと書かれている。第四段階は財産調査で、国税徴収法に基づき財産が調査される。第五段階は差押と換価で、見つけた財産を差し押さえ換価して市税に充てる。今回の公売はこの最後の段階にあたる。延滞金は令和8年の率で納期限の翌日から1か月までが年2.8パーセント、1か月を経過した日からは年9.1パーセント。一方で市税の猶予制度があり、災害、病気、事業の休廃業などにより一時に納付できない場合や、一時に納付すると事業の継続または生活の維持が困難となるおそれがある場合には、徴収猶予と換価の猶予により納付を一定期間猶予できる。市税以外にも介護保険料、後期高齢者医療保険料、上下水道料金の相談窓口が案内されている。
図2 滞納から公売までの五段階と、途中で降りる道

評価——良い点と、注文したい点

良い点を3つ挙げます。

1つ、手続きが完全に公開されていること。日程、会場、見積価格、保証金、持ち物、必要な様式。公図も地積測量図も現地写真も。公売は、公正さがいのちです。誰でも同じ情報を見て、同じ条件で入札できる。この透明さは、行政の仕事として正しい。

2つ、陳述書の提出を求めていること。暴力団員等の排除を確認する手続きです。公の財産を売る以上、当然の備えです。

3つ、猶予制度がきちんと整備され、他の料金の窓口まで並べてあること。介護保険料も、後期高齢者医療保険料も、上下水道料金も。「無関心の値段」で私は「窓口が分かれていても、相談する側の生活は分かれていない」と書きましたが、このページはその発想でつくられています。

そのうえで、注文が3つあります。

1つ。公売の告知に、猶予制度への案内がないことです。公売のページを読むのは、入札したい人だけではありません。「うちも滞納がある」と胸がざわつきながら読む人もいるはずです。その人に、あの一行——「納めたくても納められない、そんなときは早めに納税相談を」——が届いてほしい。公売のページの末尾に、猶予制度へのリンクを一本置くだけでいい。

2つ。保証金が「現金持参」であること。281万円を現金で持ち歩くのは、率直に言って不安です。安全面でも、実務面でも。振込や保証小切手を認めている自治体もあります。スマホ教室の申込が電話であることを評価した私が言うのも妙ですが、ここは現代化してよい場面だと思います。

3つ。結果が公表されるかどうか、書かれていないこと。落札されたのか、いくらだったのか、あるいは不調だったのか。補助金の記事でも漏水調査の記事でも同じことを書きましたが、やった以上は、結果まで示してほしい。滞納した市税がいくら回収できたのかは、納税者全体に関わる数字です。

対案・結論——「差し押さえる市」より、「相談される市」へ

提案を3つ書きます。

第一に、公売の告知と猶予制度を、必ずセットで出すこと。公売は市の強さを示す手続きですが、その隣に「相談してください」を置いておく。強い手続きの横にこそ、やわらかい入口が要ります。

第二に、督促状と催告書の紙面に、猶予制度を大きく書くこと。滞納している人がいちばん確実に読む紙は、ホームページではなく、その封筒です。国保税の記事で「納税通知書に軽減の案内を同格で載せてほしい」と書いたのと、同じ発想です。

第三に、公売の結果の公表。落札額、あるいは不調。件数と回収額。年に一度でいい。「納税の公平性を確保するため」と掲げているのですから、その成果も公平に見せてほしい。

最後に一言。不動産の仕事をしていると、差押えの登記が入った土地建物を、何度も見てきました。登記簿には「差押」の二文字が並ぶだけですが、その裏には必ず事情があります。事業がうまくいかなくなった。病気をした。介護が始まって働けなくなった。その人がだらしなかった、という単純な話ばかりではありません。

だからこの記事は、滞納した誰かを責めるために書いたのではありません。書きたかったのは、たった一行です。督促状が来た段階でも、催告書が来た段階でも、まだ降りる道はある。市税の猶予制度があり、介護保険料にも、上下水道料金にも相談窓口があります。延滞金は年9.1%で積み上がっていきます。黙っている時間が、いちばん高くつきます。

10月8日、市役所の西庁舎で、一つの土地が競りにかけられます。その日を、遠い誰かの話にしないために。封筒が来たら、開けてください。そして、電話をかけてください。

出典(2026年8月4日確認)

  • 磐田市「期日公売」(2026年8月4日更新。国税徴収法に基づく市税等の滞納処分により差し押さえた財産の期日公売、公売期日=令和8年10月8日15:00〜/売却決定=10月30日/会場=市役所西庁舎3階302・303会議室、公売財産=第2026F001号 磐田市見付3355-1外 土地/見積価格28,080,000円/公売保証金2,810,000円、当日の持ち物=公売保証金〈現金〉・身分証明書・陳述書・印章、代理人は委任状と印鑑証明書、営利法人または不動産業を営む方は収入印紙200円、担当=企画部収納課) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kurashi_tetsuzuki/zeikin/1015942.html
  • 磐田市「市税の滞納と延滞金」(滞納発生→督促状→催告書→財産調査→差押・換価の流れ、「納めたくても納められない、そんなときは早めに納税相談をしてください」、令和8年の延滞金率=納期限の翌日から1か月まで年2.8%・1か月経過後は年9.1%) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kurashi_tetsuzuki/zeikin/shizei_noufu/1007996.html
  • 磐田市「市税の猶予制度」(徴収猶予・換価の猶予。災害・病気・事業の休廃業等で一時に納付できない場合、または納付により事業の継続や生活の維持が困難となるおそれがある場合に納付を一定期間猶予。申請の手引き・申請書・財産収支状況書を掲載。収納課0538-37-4906。介護保険料〈高齢者支援課0538-37-4769〉、後期高齢者医療保険料〈国保年金課0538-37-4863〉、上下水道料金センターの相談窓口も案内) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kurashi_tetsuzuki/zeikin/shizei_noufu/1001378.html

※公売の条件・日程は変更される場合があります。入札を検討される方は、必ず磐田市の期日公売説明書および注意事項をご確認ください。猶予制度の適用可否は個別の事情によります。納付にお困りの場合は、放置せず、まず市の収納課または各担当課へご相談ください。