導入——「家計連載」の、続きを書かなければならない

この場で私は、水道料金の値上げ審議を書き、下水道使用料の「135円は通過点」を書いてきました。暮らしにかかるお金の話を、逃げずに数字で見る。勝手に「家計連載」と呼んでいますが、今日はその続きを書かなければなりません。

国民健康保険税——国保税です。令和8年度と9年度の税率が改定され、被保険者一人あたり平均で年間約9,700円の増額が見込まれています。自営業の方、退職して会社の健康保険を抜けた方、パートで社会保険に入っていない方。国保は、そういう人たちの保険です。不動産業も自営業ですから、これは私自身の話でもあります。

まず、事実を整理する

磐田市の国保は、支出に対して収入が足りない、厳しい財政運営が続いています。税率は平成20年度から長く据え置かれてきましたが、それでは持たなくなり、令和4年度から計画的な改定が始まりました。今回の令和8・9年度改定は、その続きにあたります。

追い打ちになった事情もあります。国保の運営は平成30年度から県単位に変わり、市は県に「事業費納付金」を納める仕組みになっていますが、県が行ってきた納付金の負担軽減措置が、令和8年度以降は実施されない方針が示されました。外から効いていたクッションが、外れるわけです。

今回の改定には、値上げとは別の、大きな構造変更が含まれています。資産割の廃止です。磐田の国保税はこれまで、所得割・資産割・均等割・平等割の4つの物差しで計算されてきましたが、令和8年度からは所得割と均等割の2方式に変わります。固定資産税を納めている人にさらに上乗せする資産割は、「家や畑を持っているからといって、払う力があるとは限らない」という批判が長くあった仕組みです。年金暮らしで土地だけある、という世帯には重かった。この廃止は、全国的な流れでもあります。

もうひとつ、市の改定とは別枠で、国の制度として令和8年4月分から「子ども・子育て支援金」がすべての医療保険に上乗せされています。国保だけの話ではありませんが、通知書の金額には効いてきます。

磐田市の国民健康保険税、令和8・9年度改定の骨子をまとめた図。被保険者一人あたり平均で年間約9,700円の増額見込みで、実際の増減は世帯の所得や資産の状況によって異なる。背景は、支出に収入が追いつかない国保財政と、県の事業費納付金の負担軽減措置が令和8年度以降実施されない方針。税率は平成20年度から据え置かれ、令和4年度から計画的改定が始まっている。構造変更として、所得割・資産割・均等割・平等割の4方式から資産割と平等割をなくし、所得割と均等割の2方式へ移行。別枠で、令和8年4月分から国の子ども・子育て支援金が全医療保険に上乗せされている。
図1 令和8・9年度改定の骨子(磐田市公表資料から作成)

評価——良い点と、注文したい点

良い点を3つ挙げます。

1つ、一気にやらず、計画的に刻んでいること。令和4年度から段階を踏み、今回も8・9年度の2か年で示す。据え置きを続けて限界で一気に跳ね上げるより、ずっと誠実なやり方です。水道・下水道の記事でも同じことを書きましたが、「早めに、小刻みに、理由を示して」が値上げの作法だと思います。

2つ、資産割の廃止。固定資産は収入を生むとは限らず、固定資産税との二重負担感も強かった。持ち家の年金世帯や、田畑を相続してしまった世帯には、負担が軽くなる方向に働きます。時代に合った見直しです。

3つ、軽減の仕組みが手厚いこと。所得に応じた7割・5割・2割の軽減は申請不要。未就学児の均等割は半額、18歳未満の子ども・子育て支援金分は全額軽減。産前産後4か月間の軽減、倒産・解雇などで職を失った人は前年所得を3割とみなして計算する軽減もあります。値上げの記事だからこそ、先に書いておきます。使える軽減は、ちゃんとある。

そのうえで、注文が3つあります。

1つ。「平均9,700円増」の中身が見えないことです。市も「実際の増減額は世帯の所得や資産の状況によって異なります」と書いていますが、市民が知りたいのはまさにそこです。資産割が消えて所得割が上がるのなら、土地持ちの年金世帯は下がり、働き盛りの自営業世帯は平均より大きく上がる、という構図になるはずです。誰が下がって、誰が9,700円では済まないのか。モデル世帯での試算例を示さなければ、「平均」はかえって不信を生みます。

2つ。肝心の税率表が、画像で貼られていることです。市のページの改定税率は画像形式で、読み上げソフトが読めず、検索にも引っかからず、スマホでの拡大も不便です。高齢の加入者が多い国保で、これはいちばん避けるべき掲載方法です。表のテキスト化(HTML化)は、その日のうちにできる改善です。

3つ。軽減が「知っている人だけのもの」になりかねないこと。申請不要の軽減は自動で効きますが、産前産後や失業の軽減は申請が要ります。納税通知書を見て「高くなった」とだけ感じて封筒を閉じる人に、「あなたはこの軽減が使えるかもしれません」がどう届くのか。通知書と同封物の書き方が、問われます。

磐田市の国民健康保険税で使える主な軽減をまとめた図。所得に応じた7割・5割・2割の軽減は申請不要。未就学児は均等割が半額で申請不要。18歳未満は子ども・子育て支援金の均等割分が全額軽減で申請不要。産前産後は出産月の前月から4か月間、所得割と均等割が軽減され、申請が必要。倒産・解雇・雇い止めなどの非自発的失業者は前年所得を30パーセントとみなして計算され、申請が必要。災害・疾病・失業など特別な事情で納付が難しいときは相談により減免の可能性がある。
図2 使える軽減は、ちゃんとある(磐田市公表資料から作成)

対案・結論——「平均」ではなく「わが家」で示す

3つ提案します。

第一に、モデル世帯別の増減表の公表。年金暮らしの夫婦(持ち家あり)、自営業の4人家族、単身のパート勤務——代表的な5世帯ほどで、改定前後の年額を並べる。資産割廃止で下がる世帯があるのなら、それも堂々と示せばいい。「平均9,700円増」より、「わが家はどうなる」に答える表のほうが、納得は確実に深くなります。

第二に、税率表のテキスト化と、試算ページの充実。画像の表をHTMLに直し、所得と家族構成を入れればおおよその税額が出る試算シートを置く。値上げをお願いする側の、最低限の礼儀だと思います。

第三に、納税通知書に「軽減の案内」を同格で載せること。金額の通知と、使える軽減・相談窓口の案内を、同じ紙面の同じ大きさで。そして滞納の前に相談してもらう導線を太くする。国保税の滞納は、住まいの契約やローンの審査にも影を落とします。不動産の現場で、それで苦労するお客様を何人も見てきました。払えないときに黙って滞納するのが、いちばん損なのです。

最後に一言。国保は、加入者に高齢の方と所得の低い方が多いという、構造的に苦しい保険です。市の努力だけで黒字にできるものではなく、県の納付金と国の制度設計に大きく左右されます。だから私は、今回の改定そのものを頭ごなしに責める気はありません。ただ、水道でも下水道でも書いたとおり、値上げの説明は「理由」と「わが家の金額」と「使える助け」の三点セットであるべきです。通知書が届いたら、金額だけ見て封筒を閉じないでください。軽減の欄まで読む。分からなければ市役所か、私たちのような身近な相談先に聞く。家計連載の結論は、いつも同じです。数字から目をそらさないことが、いちばんの防衛策です。

出典(2026年7月確認)

  • 磐田市「国民健康保険税の税率改定」(令和8・9年度改定、一人あたり平均年間約9,700円増の見込み、資産割廃止・2方式化、県の負担軽減措置終了、平成20年度からの据え置きと令和4年度からの計画的改定) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kurashi_tetsuzuki/zeikin/kokuminkenkouhokenzei/1010644.html
  • 磐田市「国民健康保険税の軽減・減免」(7割・5割・2割軽減、未就学児の均等割半額、18歳未満の子ども・子育て支援金分全額軽減、産前産後・非自発的失業者の軽減ほか) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kurashi_tetsuzuki/zeikin/kokuminkenkouhokenzei/1006944.html
  • 磐田市「国民健康保険税」(制度概要・計算方法) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kurashi_tetsuzuki/zeikin/kokuminkenkouhokenzei/index.html

※税率・軽減の内容は変更される場合があります。個別の税額・軽減の適用可否は、磐田市国保年金課または税務窓口でご確認ください。