Q. 磐田のふるさと納税って、近くの市と比べて多いんですか。
令和7年度の受入額は26,951件・7億6,651万4,000円。総務省の調査では浜松市26億7,035万円、袋井市13億5,980万円です。人口が磐田の約半分の袋井が、磐田の1.77倍を集めています。1人あたりでは磐田4,696円、袋井15,629円で、3.3倍の差です。
導入——「7.67億円」は、多いのか少ないのか
磐田市の令和7年度のふるさと納税の受入額は、26,951件・7億6,651万4,000円でした。磐田市の「ふるさと納税 寄附金の活用」のページ(更新日2026年7月8日)には「令和7年度は26,951件、766,514,000円のご寄附をいただきました。寄附をしていただいた皆様、本当にありがとうございました。」と書かれています。件数も金額も、令和5年度から2年続けて増えました。
ただ、7.67億円という数字だけを見せられても、それが多いのか少ないのかは分かりません。私は不動産の仕事をしているので、金額を見るとまず「何と比べた額なのか」を探す癖がついています。土地の値段も、坪単価だけ言われても意味がなく、隣の区画と比べて初めて高いか安いかが決まる。ふるさと納税も同じです。
比べる材料は、2026年7月31日にそろいました。総務省が「ふるさと納税に関する現況調査結果」を公表し、令和7年度の実績が全国の市町村分まとめて出ています。この記事では、磐田市の7.67億円を、浜松市・袋井市をはじめとする静岡県内の市町と並べます。順位を競うためではなく、磐田の位置を確かめるためです。
まず、事実を整理する——令和7年度の受入額を、県内で並べる
総務省の令和8年度現況調査(令和7年度実績)によると、静岡県内の主な市の受入額は次のとおりです。焼津市114億2,349万6,410円(768,869件)、静岡市39億5,170万9,237円(222,546件)、浜松市26億7,035万5,891円(96,926件)、袋井市13億5,980万6,000円(57,327件)、藤枝市11億6,941万1,193円(71,299件)、磐田市7億6,651万4,000円(26,951件)、掛川市4億9,041万1,000円(28,594件)、森町3億8,492万9,000円(2,845件)、菊川市1億1,836万4,703円(4,862件)。
磐田市の26,951件・766,514,000円は、市の公式ページの数値と1円まで一致しています。市が出している数字と、国がまとめた数字が同じであることは、先に確かめておきました。
全体の規模も置いておきます。令和7年度の全国の受入総額は1兆3,314億円、件数は5,963.0万件。静岡県内の合計は584億3,300万円、3,169,271件です。磐田市の7.67億円は、静岡県内の合計の1.31%にあたります。
磐田市自身の推移も見ておきます。市のページには平成21年度からの全年度が表で載っています。ピークは平成29年度の16億1,726万4,874円。令和5年度に5億1,411万5,100円まで落ち込み、令和6年度6億4,455万9,100円、令和7年度7億6,651万4,000円と回復しました。令和5年度からの2年で49.1%増えた計算です。ただし、平成29年度の47.4%までしか戻っていません。
1人あたりに割り戻す——袋井の15,629円と、磐田の4,696円
金額の大小は人口に引きずられるので、1人あたりに割り戻します。磐田市の人口は163,224人(令和8年7月末現在)、浜松市は760,935人(令和8年8月1日現在の推計人口)、袋井市は87,007人(令和8年8月1日現在)です。
1人あたりの受入額は、磐田市4,696円、浜松市3,509円、袋井市15,629円。袋井市は磐田市の3.3倍です。ここがこの記事でいちばん申し上げたいところで、人口が磐田市の53.3%しかない袋井市が、受入額では磐田市の1.77倍を集めています。同じ遠州、車で30分ほどの距離、同じように農産物のある市です。それでこの差がついている。
逆に、浜松市は人口が磐田市の4.66倍あるのに、受入額は3.49倍にとどまります。1人あたりで見れば、磐田市のほうが浜松市より上です。「大きい市が有利」という単純な話ではないことが、この2つの比較で分かります。
流出の側も見ます。令和8年度課税で、磐田市民が他の自治体へ寄附したことによる市の住民税の控除額は5億8,216万7,920円。控除を受けた市民は13,106人です。この方たちの寄附額の合計は11億1,280万514円で、1人あたり約84,908円を他市へ寄附している計算になります。13,106人は、磐田市の人口の8.0%です。
1人あたりで受入から控除を引くと、磐田市は+1,129円、袋井市は+12,288円、浜松市は−2,112円。浜松市は、集めた額より出ていった額のほうが大きい。人口の多い都市に共通して起きていることで、浜松市の努力不足という話ではありません。
手元にいくら残るのか——1万円の寄附で、市に残るのは約5,210円
受入額は、そのまま市が使える額ではありません。返礼品の調達費、送料、広報費、決済手数料、事務費がかかります。総務省の調査には、この募集費用が項目ごとに載っています。磐田市の令和7年度の募集費用は、返礼品調達2億2,749万6,134円、送付3,088万8,150円、広報693万8,451円、決済4,988万4,455円、事務5,191万2,209円。合計3億6,711万9,399円で、受入額の47.89%です。
差し引くと、磐田市が事業に使える分は3億9,939万4,601円。受入額の52.11%です。1万円を磐田市に寄附すると、市の手元に残るのは約5,210円ということになります。この率は浜松市44.85%、袋井市48.80%で、3市とも5割弱が募集費用に消えています。制度上、返礼品の調達費は寄附額の3割以内、募集費用の総額は5割以内という決まりがあるので、どこも上限近くまで使っている形です。
私の商売の感覚で言うと、これは仲介手数料の話に似ています。3,000万円の家を売っても、手数料や登記費用や引越し代を引けば、手元に残る額はもっと少ない。売主の方に最初に伝えるのは、売買代金ではなく手残りの額です。ふるさと納税も、7.67億円ではなく3.99億円のほうが、市の家計簿に載る数字だと私は考えています。
使い道も見ておきます。令和7年度の充当額は、「将来を担う子どもたちへの支援」2億3,000万円、「津波・防災対策への取組み」1億8,832万8,000円、「スポーツのまちづくりへの支援」1,045万9,530円。津波・防災の分は、天竜川河口付近から太田川河口付近にかけての海岸堤防の整備に充てられていて、市が施工する分は令和8年度の完成が目標とされています。そして令和8年度から、使い道に「中学生の地域クラブ活動応援」と「磐田市立総合病院の運営支援」が加わりました。
評価——良い点を3つ、注文したい点を3つ
まず、良い点を3つ数えます。ひとつ目。受入額と件数を、平成21年度から令和7年度まで全年度、1枚の表で公表していることです。17年分の推移が誰でも追えます。43件・78万5,000円だった平成21年度から、16億円台のピークを経て、5億円台まで落ち、いま7.67億円。都合の悪い年を消していないところを、私は評価します。落ちた年が見えるから、回復も評価できます。
ふたつ目。使い道を分野別に示し、しかも充当額まで金額で出していることです。「子どもたちのために使います」で終わらせず、2億3,000万円と書いている。寄附する側は、自分の1万円がどの列に足されるのかを見て選べます。
みっつ目。令和8年度から、使い道に市立総合病院の運営支援と中学生の地域クラブ活動応援を加えたことです。この2つは、磐田で今いちばん現金が要る場所です。病院は21億円の赤字を抱えていて、部活の地域展開は各家庭に月2,000円前後の負担が生まれ始めている。返礼品で全国と競うより、この2つに寄附が集まるほうが、磐田の暮らしには早く効きます。
そのうえで、一事業者として注文を3つ書きます。ひとつ目。流出側の数字を、磐田市自身の言葉で載せてほしい。市のページに出ているのは受入額と件数だけで、市民13,106人が他市へ寄附したことによる控除額5億8,216万7,920円は、総務省の資料を開かなければ分かりませんでした(2026年8月29日確認)。この連載では2026年5月にも同じ注文を書いています。3か月たっても、まだ市のページには出ていません。良いニュースと悪いニュースを同じ棚に並べてほしい、という話です。
ふたつ目。募集費用の率を載せてほしい。47.89%という数字は、総務省の資料からしか読めません。「1万円のご寄附のうち、市の事業に使えるのは約5,210円です」と書いてある自治体に、私は不誠実さを感じません。むしろ信用します。返礼品の写真の隣にこの一行があれば、寄附する側は納得して選べます。
みっつ目。袋井市との差を、市自身で分析して公表してほしい。人口が半分の市に、受入額で1.77倍、1人あたりで3.3倍の差をつけられています。返礼品の構成なのか、参加している事業者の数なのか、ポータルサイトでの見せ方なのか。私は「袋井に勝て」と言いたいのではありません。なぜ違うのかを調べた結果を、市民と市内の事業者に見せてほしい。返礼品を出しているのは市ではなく、市内の事業者です。何が効くのかが分かれば、動くのは事業者の側です。
対案・結論——寄附する前に、今日できる確認
数字を並べた結論から言います。磐田市のふるさと納税は、県内では中位、1人あたりでは浜松市を上回り、袋井市に大きく離されている。そのうえで、寄附する側・市民の側で今日できる確認を3つ書きます。
第一に、磐田市に寄附するなら、使い道を選んでください。令和8年度は、子ども、津波・防災、スポーツのまちづくりに加えて、中学生の地域クラブ活動応援と市立総合病院の運営支援が選べます。どこに入れるかを決めない寄附と、決めた寄附では、市に届く情報の量が違います。どの列に票が集まったかは、次の年度の事業の組み立てに効きます。
第二に、自分が他市にいくら寄附しているかを、6月に届いた住民税の決定通知書で確かめてください。寄附金税額控除の欄に額が出ています。磐田市では13,106人が控除を受け、1人あたり約84,908円を他市へ寄附している計算です。その額がそのまま、磐田市の税収から引かれています。返礼品を選ぶこと自体は制度が認めた行為で、私は否定しません。ただ、自分の選択がどこに効いているのかは、知ったうえで選ぶほうがいい。
第三に、返礼品を探すなら、磐田市のページからポータルサイトへ入ってください。磐田市のページには個別の返礼品リストは載っておらず、「お礼の品は、新たな品の追加など随時更新されています。最新の情報は、各サイトをご覧ください」として20のポータルサイトへ案内する形です。市のページを一度通ることで、使い道の分野と充当額も一緒に目に入ります。制度の問い合わせ先は、経済産業部の商工業振興グループ(電話0538-37-4904)です。
最後に一言。体験ストックに該当する記録がないので、ここからは私の意見として書きます。正直に言うと、私はふるさと納税という仕組みそのものに、まだ賛成しきれていません。全国で1兆3,314億円が動き、そのうち約半分が返礼品と手数料に消えていく。住んでいる市への納税が、返礼品の質で移動していく。この設計が、地方にとって本当に得なのかどうか、私には答えが出ていません。
それでも、磐田に住んで磐田で商売をしている以上、「磐田は取りにいくな」とは言えません。制度がある以上、取らなければ出ていく一方です。だから私は、賛成しきれないまま、磐田市には取りにいってほしいと思っています。そのうえで望むのは、順位を上げることより、7.67億円のうち市に残るのが3.99億円だという事実を、市が自分の言葉で市民に見せることです。数字を隠さない市は、寄附する側からも信用されます。返礼品では焼津市に勝てなくても、そこでなら勝てると私は考えています。
よくある質問
Q. 磐田市のふるさと納税の受入額は、浜松市や袋井市と比べてどうですか。
令和7年度の受入額は、磐田市が26,951件・7億6,651万4,000円、浜松市が96,926件・26億7,035万5,891円、袋井市が57,327件・13億5,980万6,000円です(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」令和8年7月31日公表)。人口が磐田市の約半分の袋井市が、磐田市の1.77倍を集めています。
Q. 1万円を磐田市に寄附すると、市の手元にはいくら残りますか。
約5,210円です。磐田市の令和7年度の募集費用は3億6,711万9,399円で、受入額7億6,651万4,000円の47.89%にあたります(総務省の現況調査より筆者が計算)。返礼品の調達費、送料、広報費、決済手数料、事務費の合計です。残る52.11%が、市が事業に使える分になります。
Q. 磐田市に寄附するとき、使い道は選べますか。
選べます。磐田市は「将来を担う子どもたちへの支援」「津波・防災対策への取組み」「スポーツのまちづくりへの支援」などの分野を示し、令和8年度からは「中学生の地域クラブ活動応援」と「磐田市立総合病院の運営支援」が加わりました。令和7年度の充当額は子ども分野2億3,000万円、津波・防災分野1億8,832万8,000円などです。
出典(2026年8月確認)
- 磐田市「ふるさと納税 寄附金の活用」(ページ番号1002779、更新日2026年7月8日、2026年8月29日確認。「令和7年度は26,951件、766,514,000円のご寄附をいただきました。」/平成21年度〜令和7年度の受入件数・金額の一覧/令和7年度充当額=将来を担う子どもたちへの支援230,000,000円、津波・防災対策への取組み188,328,000円、スポーツのまちづくりへの支援10,459,530円/令和8年度から「中学生の地域クラブ活動応援」「磐田市立総合病院の運営支援」を追加/問い合わせ=経済産業部 商工業振興グループ、電話0538-37-4904) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/fukusato_nouzei/1002779.html
- 磐田市「ふるさと納税(寄附金)制度」(更新日2026年7月30日、2026年8月29日確認。個別の返礼品リストの掲載はなく「お礼の品は、新たな品の追加など随時更新されています。最新の情報は、各サイトをご覧ください」として20のポータルサイトへ案内) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/fukusato_nouzei/1002778.html
- 総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)」(自治税務局市町村税課、令和8年〈2026年〉7月31日公表、2026年8月29日確認。令和7年度〈令和7年4月1日〜令和8年3月31日〉の実績。全国計1兆3,314億円・5,963.0万件、静岡県内合計584億3,300万円・3,169,271件) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/archive/
- 総務省「各自治体の令和7年度受入額等」(Excel、2026年8月29日確認。焼津市11,423,496,410円・768,869件、静岡市3,951,709,237円・222,546件、浜松市2,670,355,891円・96,926件、袋井市1,359,806,000円・57,327件、藤枝市1,169,411,193円・71,299件、磐田市766,514,000円・26,951件、掛川市490,411,000円・28,594件、森町384,929,000円・2,845件、菊川市118,364,703円・4,862件。磐田市の募集費用=返礼品調達227,496,134円、送付30,888,150円、広報6,938,451円、決済49,884,455円、事務51,912,209円、合計367,119,399円。浜松市の募集費用合計1,197,629,178円、袋井市663,636,096円) https://www.soumu.go.jp/main_content/001084989.xlsx
- 総務省「令和8年度課税における住民税控除額等」(Excel、2026年8月29日確認。磐田市=控除適用者13,106人、寄附金額1,112,800,514円、市町村民税控除額582,167,920円。浜松市=69,338人・4,277,079,683円、袋井市=6,925人・290,678,301円) https://www.soumu.go.jp/main_content/001085012.xlsx
- 磐田市「磐田市の人口 令和8年度」(令和8年7月末現在、更新日2026年8月17日、2026年8月29日確認。総人口163,224人、世帯数72,421世帯) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/profile/toukei/1005583.html
- 袋井市「人口と世帯数」(令和8年8月1日現在、更新日2026年8月7日、2026年8月29日確認。87,007人・37,798世帯) https://www.city.fukuroi.shizuoka.jp/soshiki/8/2/gaiyo/1422534745982.html
- 浜松市「推計人口・人口動態(令和8年度)」の集計表(令和8年8月1日現在、更新日2026年8月28日、2026年8月29日確認。760,935人) https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/3762/suikeijinkou-jinkoudoutai_r08.xlsx
- 本連載の既報:ふるさと納税、磐田市の収支はマイナス1.56億円(記事0031)、予算は772億円に「戻った」(記事0039)、アローマメロンと次郎柿を、次の世代へ(記事0063)、救急車6,011台を受けとめて、21億円の赤字(記事0067)、夏の大会が終わって、土日の部活が学校から消える(記事0236)
※本文の「1人あたり4,696円・3,509円・15,629円」「1.77倍」「3.3倍」「53.3%」「47.89%」「52.11%」「約5,210円」「3億9,939万4,601円」「+1,129円・+12,288円・−2,112円」「約84,908円」「8.0%」「1.31%」「49.1%増」「47.4%」は、公表値をもとにした筆者の計算です。受入額から募集費用と市町村民税控除額を単純に差し引くと約1億8,277万円のマイナスになりますが、市町村民税の減収額は普通交付税の算定を通じて一部が補填される仕組みがあり、磐田市が令和8年度の交付団体にあたるかどうかを私は確認できていません。そのため本文では「赤字額」としての断定はしていません。受入額の年度は令和7年4月1日〜令和8年3月31日、住民税控除額は令和8年度課税分(令和7年1月〜12月の寄附に対応)で、対象期間が一致しません。返礼品の個別の品目・寄附額はポータルサイト側で随時変わります。制度・金額・使い道の区分は変更される場合があります。控除の上限額や手続きの可否は個別の所得や家族構成で変わるため、最終的にはお住まいの市町村の税の窓口、または税理士にご確認ください。
