導入——3年生の引退で終わらない、今年の8月

夏の大会が終わりました。3年生が引退して、新チームになる。毎年8月の、見慣れた景色です。

ただ、今年の8月は、その先が違います。

磐田市の公式サイトには、こう書いてあります。

「令和8年9月から、学校では休日の部活動を行わず、それに代わる活動として地域クラブ活動『SPO☆CUL IWATA』を実施します。」

令和8年9月は、来月です。

つまり、この夏の大会は、多くの子にとって「学校の部活として土日に活動した、最後の夏」だったということになります。

この話は、何年も前から「地域移行」「地域展開」という名前で議論されてきました。私もこのサイトで何度か書いています。ただ、議論として書いてきたものが、来月から、ただの生活になります。

そして生活になった瞬間、いちばん先に効いてくるのは理念ではありません。金額と、送り迎えです。

市が公表している参加費は月2,000円(休日のみの活動の場合)。数字だけ見れば、大きくありません。

ただ私は、不動産の仕事で家計の話を聞く立場にいます。月2,000円という金額は、家計の中でいちばん微妙な位置にある額です。払えないほどではない。けれど、他の何かと重なった瞬間に、いちばん先に切られる。

今日は、来月から始まるこの仕組みを、家計の側から読みます。

まず、事実を整理する——金額は、もう表になって出ている

感情論にしないために、市が公表している内容から確認します。

1.いつから、何が変わるか。

市の「磐田市の部活動改革」のページに、はっきり書かれています。令和8年9月から、学校では休日の部活動を行わない。代わりに地域クラブ活動「SPO☆CUL IWATA」を行う。

「SPO☆CUL IWATA」自体は、いきなり始まるものではありません。令和6年5月にスタートし、2年以上かけて試してきた枠組みです。市のページには令和8年2月改訂の「ロードマップ」「グランドデザイン」「ガイドライン」「クラブ運営規程」が並んでいます。

2.どこでやるか。

市は「学校で実施している部活動種目について、種目ごとに市内を1~3程度のエリアに分け、クラブを設置していく予定」と書いています。

ここは、あとで効いてきます。これまでは「自分の中学校」でした。これからは「エリアのどこか」です。

3.いくらかかるか。

ここが今日の本題です。市は金額を、回数に応じた段階で公表しています。

そして、市はこう付け加えています。「クラブごとで追加の活動費が必要になる場合もあります。」

実際、先行しているクラブの募集を見ると、そのとおりになっています。専用サイトに載っているクラブでは、ピックルボールクラブが2,000円/月、ブルーレヴズラグビークラブが3,000円/月(活動費を含む)、ボードゲーム研究会が参加費2,000円/月に活動費500円/月という書き方です。

4.払えない家庭はどうするか。

市は、ここにも先に手を打っています。「SPO☆CUL IWATA応援ファンド」という基金を作り、企業からの寄附を募っています。企業版ふるさと納税や、地域応援自動販売機の売上の一部を原資にして、経済的な負担が難しい家庭の参加費支援と、クラブの活動費支援に充てるという説明です。

問い合わせ先は教育部 放課後活動課 放課後活動支援グループ(0538-37-4828、平日8時30分~17時15分)。参加申込は随時受け付けとされています。

磐田市の地域クラブ活動SPO☆CUL IWATAの参加費を、活動回数ごとに5段階で示した表の図。休日のみ月2回以内は1,000円/月で12か月続けると年12,000円。休日のみは2,000円/月で年24,000円。休日に平日1日を加えると3,000円/月で年36,000円。平日2日で4,000円/月・年48,000円。平日3日で5,000円/月・年60,000円。右側の横棒は金額の目安を長さで表しており、回数が増えるほど棒が長くなる。表の下には、このほかにクラブごとの活動費が別にかかる場合があると記されている。出典は磐田市の公表資料で、2026年8月15日に確認したもの。金額は今後変更される場合がある。
図1 参加費は、活動回数に応じた5段階で公表されている(磐田市の公表資料から作成)

評価——良い点は3つ、注文は4つ

ここまでを踏まえて、まず良いと思う点を3つ書きます。

1つ目。金額を、先に、表で出したこと。

これは、当たり前のようでいて、当たり前ではありません。この種の制度は、「詳細は後日」のまま始まって、あとから請求が積み上がるのがよくある形です。磐田市は、活動回数ごとの5段階を先に公表しました。親が電卓を叩ける状態で始まる——これは評価します。

2つ目。「払えない家庭」の受け皿を、制度が始まる前に作ったこと。

応援ファンドは、参加費を集め始めてから「困っている人がいるらしい」と気づいて作られたものではありません。先に作ってある。順番が正しい。

3つ目。日付を言い切ったこと。

「順次」「段階的に」で逃げず、令和8年9月と書いた。これは先生の働き方の話と裏表です。土日に学校が抱えていた時間を、本当に手放すと決めた日付が、市民の側から見えるところに置いてある。

そのうえで、注文を4つ書きます。

1つ目。月2,000円は、単独では小さく、重なると大きい。

月2,000円は年24,000円です。きょうだいが2人いれば年48,000円。平日も入れて月4,000円のクラブなら、1人でも年48,000円になります。

そこに活動費が乗ります。月500円でも年6,000円。さらに、部活の時代からある費用——ユニフォーム、シューズ、道具、遠征費——は、そのまま残ります。

私が言いたいのは「高い」ということではありません。家計に効くのは月額ではなく、年額の合計だということです。

2つ目。いちばん重いのは、お金ではなく送り迎えかもしれない。

ここが、私がこの制度でいちばん心配している点です。

これまでは、子どもは自転車で自分の中学校へ行けばよかった。これからは、種目ごとに1~3程度のエリアに分けたクラブへ行きます。磐田市は、旧磐田・福田・竜洋・豊田・豊岡が合併した市です。市内を2つに割っただけで、端から端は相当な距離になります。

先行クラブの活動時間を見ると、土曜または日曜の8時から12時土曜9時から12時といった枠が並んでいます。

土曜の朝8時に、子どもを別の地区まで送る。12時に迎えに行く。これができる家と、できない家があります。

共働きで土曜も仕事の家。ひとり親の家。車が1台しかない家。祖父母が送迎を担っていて、その祖父母が免許を返した家。月2,000円は払えても、土曜の朝の1時間が出せない家庭は、確実にあります。

そして、この負担は参加費の表には1円も載りません。

3つ目。応援ファンドの「使い方」が、まだ親の側から見えない。

基金があることは分かりました。では、どうやって申し込むのか。誰が対象なのか。いくらまで出るのか。

私が見た範囲では、そこが市民向けのページで明確になっていません。書かれているのは「経済的な負担が難しい家庭の参加費支援等に充てる予定」という趣旨までです。

9月まで、あと半月です。

お金の心配がある家庭ほど、「聞きに行く」という行動のハードルが高い。これは、私が実家じまいや相続の相談で毎回見ていることです。制度があっても、申請の窓口が見えないと、その人は制度がないのと同じ場所に立たされます。

4つ目。「入らない」という選択の扱いが、まだ静かすぎる。

これまで、部活は「原則みんな入る」空気の中にありました。学校の中にあったからです。

来月からは、学校の外にある、お金を払って入る任意の団体になります。当然、入らない子が出ます。

その子が「うちは金がないから入れなかった子」だと見られない設計になっているか。ここは、金額表よりよほど大事なところです。「入らないのも普通の選択です」と、市が先に、はっきり言葉にしてほしい。

地域クラブ活動に参加する家庭の負担を、参加費の表に載るものと載らないものに分けて並べた図。表に載るものは2つで、参加費が休日のみ月2,000円で年24,000円、活動費がクラブにより月500円などで年6,000円。表に載らないものは3つで、用具やユニフォームは部活の時代から変わらず必要で種目により差があること、送迎はエリア制で活動場所が遠くなり土曜の朝8時に送って12時に迎えに行く必要があること、遠征や大会の費用は移動と参加の実費で回数により変動すること。図の下部には、月2,000円は払えても土曜の朝の1時間が出せない家庭があると書かれている。参加費と活動費は磐田市および専用サイトの公表資料により2026年8月15日に確認したもので、用具・送迎・遠征の負担は筆者の整理。
図2 家計に効くのは月額ではなく、送迎まで含めた合計(磐田市の公表資料と筆者の整理から作成)

対案・結論——「表に載らない負担」を、表に載せる

提案を4つにまとめます。

第一に、参加費の減免を「申請」ではなく「自動」に近づけること。

市は、就学援助という形で、すでにどの家庭が厳しいかを知っています。その認定を受けている世帯には、応援ファンドの支援をこちらから案内する。申請書を待つのではなく、先に紙を送る。「知っている情報を、もう一度本人に申告させない」——これだけで、届く数は変わります。

第二に、送迎の負担を、参加費と同じ表に載せること。

クラブの募集ページに、参加費と並べて「活動場所」「集合時間」「公共交通で行けるか」「自転車で何分か」を書く。親が最初に知りたいのは、月額よりもここです。

そのうえで、送迎ができない家庭のための現実解——同じ地区の子をまとめて乗せる仕組み、あるいは活動場所を輪番にする運用——を、クラブ任せにせず市が型を示してほしい。「送迎は各家庭で」と書いた瞬間に、参加できる子は選別されます。

第三に、9月からの数か月を「試す期間」として明示すること。

初月は無料、あるいは途中でやめたら日割りで返す。入ってみないと分からないものに、年額で判を押させない。合わなかった子が、金銭的な理由で辞められなくなるのがいちばんよくない形です。

第四に、1年後に「実際にいくらかかったか」を集めて公表すること。

参加費、活動費、用具代、交通費。家庭が1年間に実際に払った合計額を、匿名でいいから集めて出す。制度の善し悪しは、募集要項ではなく、通帳の側にしか出ません。

最後に一言。

私は不動産の仕事で、家計が苦しくなっていく過程を、順番まで含めて何度も見てきました。

いちばん先に消えるのは、家賃でも保険でもありません。子どもの習い事です。

相続や住み替えの相談の中で、親御さんがふと「あの頃、続けさせてやれなかった」と漏らす場面があります。金額は、たいてい月に数千円の話です。数千円のことを、10年経っても覚えている。それくらい、この種の支出は家の中で重い意味を持ちます。

だから私は、月2,000円という数字そのものには反対しません。指導者に対価を払わずに続く仕組みなど、もうありません。ただで続いてきた土日は、先生の時間で埋められていただけです。

言いたいのは一つです。

払えるかどうかで、子どもの土曜日が決まる形にしないでほしい。

そのために市がやるべきことは、金額を下げることではなく、払えない家庭に先に手を伸ばすことと、送迎という「表に載らない参加費」を表に載せることだと思っています。

来月から、土日の学校のグラウンドは静かになります。その静けさが、先生が休めた証拠であってほしい。子どもが行き場をなくした証拠であってほしくない。

出典(2026年8月確認)

  • 磐田市「磐田市の部活動改革」(「令和8年9月から、学校では休日の部活動を行わず、それに代わる活動として地域クラブ活動『SPO☆CUL IWATA』を実施します。」「学校で実施している部活動種目について、種目ごとに市内を1~3程度のエリアに分け、クラブを設置していく予定です。」「参加費は月2,000円です。(休日のみの活動の場合。平日も実施するクラブは、活動回数により加算されます。)」。令和8年2月改訂の「ロードマップ」「ロードマップ資料編」「グランドデザイン」「ガイドライン」「クラブ運営規程」を掲載。問い合わせは教育部 放課後活動課 放課後活動支援グループ、電話0538-37-4828) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kyoiku/1014890/1014895/1012656.html
  • 磐田市「新たな地域クラブ活動『SPO☆CUL IWATA』」(参加費は休日のみ月2回以内1,000円/月、休日のみ2,000円/月、休日+平日1日3,000円/月、休日+平日2日4,000円/月、休日+平日3日5,000円/月。「クラブごとで追加の活動費が必要になる場合もあります」。「SPO☆CUL IWATA応援ファンド」を創設し、企業版ふるさと納税や地域応援自動販売機の売上の一部を原資に、経済的な負担が難しい家庭の参加費支援やクラブ活動費支援に充てる旨を記載。参加申込は随時受付) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kyoiku/1014890/1014895/1013130.html
  • 磐田市地域クラブ活動「SPO☆CUL IWATA」専用サイト(クラブ別の会費と活動日の記載。ピックルボールクラブ2,000円/月、ブルーレヴズラグビークラブ3,000円/月〈活動費を含む・火曜、金曜 午後5時~午後7時〉、ボードゲーム研究会は参加費2,000円/月+活動費500円/月〈日曜13:00~16:00・各学年10名程度〉、男子バスケットボールのクラブは土曜または日曜8:00~12:00、土曜9:00~12:00など。問い合わせ0538-37-4828〈平日08:30~17:15〉) https://sgrum.com/web/spocul_iwata/
  • 磐田市教育委員会事務局組織(放課後活動課の所管を掲載) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kyoiku/kyouikuiinkai/1002411.html

※参加費・活動費・活動日・活動場所は、クラブごとに異なり、今後変更される場合があります。記載した金額は2026年8月15日時点で磐田市および「SPO☆CUL IWATA」専用サイトに掲載されていた内容です。応援ファンドによる支援の対象・申請方法・上限額については、筆者が確認した範囲では市民向けページに具体的な記載が見当たらず、本記事の「就学援助と連動させる」等の提案は筆者個人の意見であり、磐田市が検討していると確認したものではありません。実際の参加手続き・費用・減免の可否については、必ず磐田市教育部放課後活動課および各クラブにご確認ください。