導入——二つの告知を、並べて読む
7月末、磐田市が出した告知の中に、二つ気になるものがありました。
一つは、7月の総ざらいの記事でも触れた話。令和8年11月2日から、市役所の窓口の受付時間が「8時30分〜17時15分」から「9時〜16時30分」に変わります。あわせて、マイナンバーカードを使った証明書のコンビニ交付が100円安くなります。窓口を短くし、デジタルへ誘導する——そういう設計です。
もう一つが、7月31日更新の「スマートフォン教室を開催します」。市が、市民にスマホの使い方を教えるという告知です。
窓口を短くする市が、同じ時期にスマホを教えている。この二つは、対にして読むべきものです。そして中身を確かめてみて、私はひとつ、素直に評価したい点を見つけました。
まず、事実を整理する
市の告知によれば、対象は磐田市民。内容は初心者向けで、カメラ、インターネット検索、LINE、そして生成AIなどの基礎的な内容を学びます。定員は各交流センターで先着10名。全4回で、連続性があるため4回とも参加できる方が対象です。費用は無料。持ち物はスマートフォン、筆記用具、飲み物。
会場と日時は添付のPDFに載っており、申込は受講を希望する交流センターに電話で。受付開始は8月18日(火曜)午前9時からです。担当は企画部DX推進課。
ここで、今日いちばん書きたい一行に行き当たりました。申込みは「電話で」。
私はこの連載で、参加の入り口が電子申請だけになっていることを、何度も指摘してきました。見付宿の未来を考える会の申込がフォームのみだったとき。こどもまんなかキャッチフレーズの応募がフォームのみだったとき。スマホの使い方を習いたい人に、スマホでの申込を求めない。当たり前のようでいて、この当たり前ができていない募集を、私はいくつも見てきました。だから今回は、先に評価を書いておきます。
評価——三つ、素直に良いと思う点
良い点を3つ挙げます。
1つ、申込が電話であること。先ほど書いたとおりです。交流センターに電話をかければ申し込める。「無関心の値段」で私は「入り口のバリアフリー」を求めましたが、これはその実例です。教える相手のことを考えて設計されている。
2つ、全4回の連続講座であること。一回だけの体験会なら、その場は分かった気になっても、家に帰ると忘れます。4回通って手を動かせば、身につく可能性はぐっと上がる。一回きりのワークショップに注文をつけてきた立場としては、この設計は支持したい。
3つ、生成AIまで教えること。正直、これには驚きました。初心者向けの講座で、カメラや検索と並んで生成AIが入っている。私はこの連載で「行政のAIは進めるべきだ」と書いてきましたが、それは職員の業務の話でした。市民に、それも高齢の方が多いであろう教室でAIを教える。踏み込んだ判断だと思います。使えれば、調べもの一つとっても暮らしは変わります。
そのうえで、注文が3つあります。
1つ。先着10名という受け皿の小ささです。各交流センターで10名。磐田市の人口は約16万人で、そのうち高齢者は相当な数にのぼります。10名という枠は、必要としている人の数に対して、あまりに小さい。受付開始は8月18日9時からですから、電話が集中することも予想されます。
2つ。「4回とも参加できる方」という条件。学ぶ設計としては正しいのですが、通院や介護、家族の都合で4回すべては難しい方もいます。いちばん教室を必要としている人ほど、予定が読めないことがある。補講の回や、動画での振り返りがあると、こぼれる人が減ります。
3つ。これが本題です。「止まったときどうするか」も、あわせて教えてほしい。私は先日、磐田市のLINEが約15時間半止まった話を書きました。市のLINEには避難所検索まで入っています。教室でLINEの使い方を教えるのなら、「使えないときは、こちらへ」という一枚も一緒に渡してほしい。便利な道具を教えるときは、それが使えない日の道筋まで教える。それが公共の講座の責任だと思います。
対案・結論——「教えてから、短くする」の順番で
提案を3つ書きます。
第一に、11月2日までに、教室の回数と枠を増やすこと。窓口が短くなる日は決まっています。順番として、教えるのが先、短くするのが後であってほしい。各センター10名では、11月までに間に合う人数は限られます。回数を増やす、あるいは1回あたりの定員を見直す。デジタルへ誘導する以上、そこへの橋は太く架けるべきです。
第二に、教室の内容に「困ったときの連絡先」を必ず入れること。スマホが動かなくなった、変な画面が出た、料金の請求が来た——教わったあとに困ることは、必ず起きます。ATMが消えていく記事でも書きましたが、便利になるほど、それに便乗する詐欺も増えます。「困ったらここへ電話」の紙を、4回目に配ってほしい。
第三に、教室を「終わり」にしないこと。4回で修了して、それきりでは定着しません。月に一度の相談日を交流センターに置く、修了者同士が教え合う場をつくる。磐田ここからラボのときにも書きましたが、学びは「参加して終わり」にしないところに価値が出ます。
最後に一言。私は不動産と介護の仕事で、日々ご高齢の方と接しています。スマホを持っていても、電話とカメラしか使っていない——そういう方は、本当に多い。そして「息子に聞けばいいから」とおっしゃる。でも、息子さんは忙しい。だから聞けないまま、便利さの外側に置かれていきます。
今回の教室は、そこに手を伸ばそうとする試みです。申込は電話で。この一行に、設計した人の配慮を感じました。受付は8月18日の朝9時から。もしご家族に「スマホをもてあましている」方がいたら、この記事を見せて、電話を代わりにかけてあげてください。それだけで、届く人が一人増えます。
出典(2026年8月2日確認)
- 磐田市「スマートフォン教室」(2026年7月31日更新。対象=磐田市民、内容=初心者向け/カメラ・インターネット検索・LINE・生成AIなどの基礎、定員=各交流センター先着10名、全4回〈4回とも参加できる方〉、費用無料、持ち物=スマートフォン・筆記用具・飲み物、申込=受講を希望する交流センターに電話、受付開始=8月18日午前9時、担当=企画部DX推進課) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/event/kouza_kyoushitsu/1012601.html
- 磐田市「令和8年11月2日(月曜)から市役所窓口の受付時間が変わります」(受付時間を午前9時〜午後4時30分に変更、あわせて証明書のコンビニ交付手数料を一律100円減額) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/soshikiannai/1016465.html
※会場・日時・定員は変更される場合があります。申込方法の詳細は磐田市公式サイトおよび各交流センターへご確認ください。