Q. 離れて住む親に詐欺の電話が来ていないか、心配です。何をすれば。
静岡県の特殊詐欺予兆電話は2025年上半期で7,527件、前年同期比232.6%増です(警察庁)。まず、電話に出ない仕組みを作ってください。警察庁は「犯人と話さないこと」が一番効果的だとしています。磐田市には65歳以上向けに迷惑電話防止装置の購入費補助(上限1万円)があり、令和8年度末で終了予定です。
導入——磐田署は毎月、サギ電話の件数を出している
磐田警察署は「IWATA詐欺通信」という月刊のお知らせで、管内のサギ電話の件数を公表しています。2026年1月からの累計は83件、うち警察官をかたるものが39件です(2026年8月31日確認)。半年で83件を181日で割ると、2日に1件の割合になります(筆者の計算)。
私は磐田で不動産の仕事をしていて、実家じまいや相続のご相談を受けます。この統計は、家計の側から読みます。詐欺は「気をつける」で防ぐものではなく、電話の設定と機器で、話す前に切る仕組みを作るものだというのが私の考えです。
まず、事実を整理する——静岡県の予兆電話7,527件
警察庁が令和7年7月31日に公表した令和7年上半期の資料(暫定値)に、静岡県の数字が載っています。予兆電話は7,527件で、前年同期から5,264件増、232.6%増でした。件数では全国6位。ただし、件数上位の8都府県のなかで、増加率は静岡県が最も高い。東京都は106.9%増、大阪府は30.7%増です。
1日あたりに割り戻します。上半期の181日で7,527件を割ると、1日あたり約41.6件。前年同期は2,263件だったので、1日あたり約12.5件でした。静岡県のどこかで、去年は12回だった電話が、今年は41回鳴っている計算になります(筆者の計算です)。
静岡県警察の「特殊詐欺被害発生状況」(更新日2026年3月31日)によると、2025年(令和7年)の県内の認知件数は452件、被害額は30億2,140万円です(いずれも暫定値)。2024年(令和6年)は379件・15億5,414万円でしたから、件数で19.3%増、被害額は約1.94倍になりました。
1件あたりに直すと、668万円です(30億2,140万円÷452件、筆者の計算)。老後の生活費から一度に消える額として、取り返しのつく水準ではありません。実家じまいの相談で「手元にいくら残るか」を計算するとき、この規模の穴が空いていたら、選べる道はまるごと変わります。
「高齢の親」だけの話ではなくなった
ここが、この記事でいちばん意外だった点です。特殊詐欺の被害に占める65歳以上の割合が、下がっています。警察庁の令和7年の確定値(令和8年5月22日公表)によると、65歳以上の認知件数は14,273件で前年から3.9%増えました。ところが、法人被害を除いた総認知件数に占める割合は51.3%で、前年から14.0ポイント下がっています。
減ったのではなく、若い世代の被害が急に増えたからです。オレオレ詐欺では30代が2,284件で329.3%増、20代が1,759件で361.7%増。2つを合わせるとオレオレ詐欺の27.9%です。
2025年1月から統計が始まった「ニセ警察詐欺」が、その中心です。認知件数11,014件、被害額1,005.0億円で、総認知件数の39.6%を占めます。30代の2,239件が最も多く、次が20代の1,718件でした。全国の特殊詐欺は27,832件(32.3%増)、被害総額1,423.1億円(98.0%増)。1年で被害額がほぼ倍になった年でした。
それでも、金額の重みは高齢の世代に残っています。被害額は70代274.6億円、60代256.3億円。65歳以上の被害額は841.1億円で、被害総額の59.2%です。件数は若い世代へ、金額は高齢の世代へ。この記事を「親のために」と思って読み始めた方は、途中で自分も対象だと気づくことになります。私も、そう気づいた側です。
磐田市の補助は、上限1万円。ただし令和8年度末で終わる予定
磐田市には「迷惑電話防止装置購入費補助金」があります。市は「迷惑電話防止装置の普及をはかるため、機器の購入費を補助します。」と説明しています(更新日2026年8月27日、2026年8月31日確認)。対象は、申請時に磐田市在住の65歳以上の方です。
条件は細かい。対象機器は、録音する旨を相手に自動で伝える通話録音装置と、データベースで悪質な電話を判別して知らせるか自動で切る着信拒否装置の2種類。電話機本体に機能が内蔵されている機器は、対象外です。補助額は購入費のうち1万円が上限で、1世帯1回1台限り。4月1日から先着順で、機器を買う前に申込書を出す必要があります。窓口は自治市民部 自治デザイン課(磐田市国府台3-1 本庁舎2階、電話0538-37-4751)です。
そして、令和8年度末をもって終了が予定されています。使うつもりがあるなら、残りは令和8年度いっぱい、2027年3月末までという読み方になります。静岡県警察の「しずおか関所作戦」のページによると、西部でこうした支援を行っているのは菊川市、御前崎市、磐田市、湖西市の4市です(令和7年12月現在)。磐田市は、やっている側にいます。
ここで、金額を並べてみます。静岡県の被害1件あたりは約668万円、補助の上限は1万円。比率にすると668倍です。もちろん、装置をつければ被害がゼロになるわけではありません。それでも、1万円の窓口を1つ開けておくかどうかで、その先の668万円の話が変わりうる。私が家計の側から見て、この補助を軽く扱えないのはそこです。
評価——良い点を3つ、注文したい点を3つ
まず、良い点を3つ数えます。ひとつ目。磐田警察署が、被害ではなく「かかってきた電話」を毎月公表していることです。被害額の統計は、起きてしまった後の数字です。サギ電話の件数は、まだ起きていない家に届いている電話の数。先に動くための材料として、こちらのほうが役に立ちます。
ふたつ目。磐田市が、機器そのものにお金を出していることです。注意喚起のチラシではなく、電話機の手前に置く装置の代金を負担する。本人の注意力に頼らない形を選んでいる点が、この補助の要です。
みっつ目。市が「静岡県内では、サギ電話のうち国際電話が使われたケースが約7割を占めます。」と、手口の内訳まで書いていることです。約7割という数字があるから、国際電話を止めるという具体的な行動につながります。「不審な電話に気をつけて」で止めていない。
そのうえで、一事業者として注文を3つ書きます。ひとつ目。補助が令和8年度末で終わる予定であることを、もっと手前に出してほしい。先着順で、購入前の申込が要り、期限がある。この3つが重なると、制度は「知っている人だけが得をする」形になります。私はそれが一番よくないと考えています。市の広報や転入の窓口で一言添えるだけでも、届き方は変わります。
ふたつ目。「電話機本体に機能が内蔵されている機器は対象外」という条件を、買い替えを考えている世帯に先に伝えてほしい。録音機能つきの新しい電話機に買い替えるほうが自然に見えます。ところがそれを選ぶと、補助は使えません。
みっつ目。磐田市内の被害件数と被害額を、市の側からも公表してほしい。磐田警察署が公表しているのはサギ電話の件数までで、管内の認知件数と被害額は公表資料で確認できませんでした(2026年8月31日確認)。これは県警と市のどちらか一方の落ち度という話ではありません。ただ、市内でいくら失われているかが分からないと、1万円の補助が足りているのかどうかも判断できません。
対案・結論——今日できる確認
結論を先に書きます。特殊詐欺は、本人の注意力ではなく、電話の設定で止めるものです。そのうえで、今日できる確認を3つ挙げます。
第一に、実家の固定電話が今どうなっているかを、電話をかけて確かめてください。留守番電話は常時オンになっているか。ナンバー・ディスプレイは契約しているか。NTT東日本・西日本は、70歳以上の方、または70歳以上の方と同居している契約者について、ナンバー・ディスプレイとナンバー・リクエストの月額利用料と工事費を無料にしています(要申込)。専用ダイヤルはNTT東日本0120-722-455、NTT西日本0120-931-965です。
第二に、使っていない国際電話を止めてください。静岡県内のサギ電話の約7割で国際電話が使われています。国際電話不取扱受付センターに申し込めば、国際電話の利用を休止できます。海外に電話をかけない家庭なら、失うものはありません。
第三に、磐田市の迷惑電話防止装置購入費補助金の申込書を、機器を買う前に取り寄せてください。窓口は自治デザイン課(電話0538-37-4751)です。順番を間違えると、1万円が消えます。
最後に一言。体験ストックに該当する記録がないので、ここからは私の意見として書きます。私は「合言葉を決めておきましょう」という助言に、ずっと引っかかっています。家族で合い言葉を決める、という形です。ただ、警察庁の資料を今回あらためて探したところ、「合言葉」という語は見つかりませんでした(2026年8月31日確認)。
引っかかる理由は、合言葉が「電話に出て、話す」ことを前提にしている点です。警察庁が一番効果的だとしているのは、犯人と話さないこと。合言葉は、話し始めてしまった後の最後の砦にすぎません。そして、いちばん動転している瞬間に、決めた言葉を思い出せる自信が、私にはありません。
一事業者として望むのは、家族が「話し合う」だけで終わらないことです。帰省したときに、電話機の前まで一緒に行く。留守番電話のボタンを押す。申込書を1枚もらってくる。それだけで、その家の詐欺の入り口はひとつ狭くなります。今日、機器を買う必要はありません。実家の電話が今どういう設定になっているかを知る。それが今日の成果として、十分だと私は考えています。
よくある質問
Q. 静岡県で、詐欺の予兆電話はどのくらい増えていますか。
警察庁の令和7年上半期の資料(暫定値、令和7年7月31日公表)によると、静岡県の予兆電話は7,527件で、前年同期から5,264件増えました。増加率は232.6%で、件数の多い上位8都府県のなかで最も高い伸びです。上半期を181日として割ると1日あたり約41.6件になります(筆者の計算)。全国では165,292件、131.3%増でした。
Q. 離れて暮らす親のために、まず何をすればいいですか。
電話に出ない仕組みを先に作ってください。警察庁は「特殊詐欺の被害にあわないためには、「犯人と話さないこと」が一番効果的です。」としています。留守番電話を常時オンにする、通話録音装置をつける、非通知を拒否する、国際電話を止める。この4つは、本人が判断に迷う場面そのものを減らします。相談は警察相談専用窓口の#9110、消費者ホットラインの188へ。
Q. 磐田市に、迷惑電話を防ぐ機器の補助はありますか。
あります。磐田市の迷惑電話防止装置購入費補助金で、申請時に市内在住の65歳以上の方が対象です。補助額は購入費のうち1万円が上限、1世帯1回1台限りで、4月1日から先着順です。電話機本体に機能が内蔵されている機器は対象外で、機器を買う前に申込書を出す必要があります。令和8年度末での終了が予定されています。窓口は自治市民部 自治デザイン課(電話0538-37-4751)です。
出典(2026年8月確認)
- 警察庁「令和7年上半期における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(組織犯罪対策第二課・生活安全企画課、令和7年7月31日公表、2026年8月31日確認。予兆電話の都道府県別=静岡県7,527件・前年同期比+5,264件・+232.6%、東京都29,460件・+106.9%、埼玉県11,845件・+76.0%、千葉県10,163件・+129.5%、愛知県9,578件・+117.4%、兵庫県8,206件・+142.1%、神奈川県7,349件・+171.2%、大阪府7,183件・+30.7%/全国165,292件・+131.3%) https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/tokushusagi_toukei2025.pdf
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(令和8年5月22日公表、2026年8月31日確認。全国の認知件数27,832件・+32.3%、被害総額1,423.1億円・+98.0%、予兆電話331,653件・+71.4%/ニセ警察詐欺11,014件・1,005.0億円・総認知件数の39.6%・既遂1件あたり922.5万円/オレオレ詐欺の30代2,284件・+329.3%、20代1,759件・+361.7%/65歳以上14,273件・+3.9%・法人被害を除く総認知件数の51.3%・前年から-14.0ポイント・被害額841.1億円・被害総額の59.2%/被害額は70代274.6億円、60代256.3億円) https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf
- 静岡県警察「特殊詐欺被害発生状況」(更新日2026年3月31日、2026年8月31日確認。令和7年=452件・30億2,140万円(暫定値)、令和6年=379件・15億5,414万円、令和5年=353件・7億9,038万円) https://www.pref.shizuoka.jp/police/kurashi/bohan/sagi/higaihasseijoukyou.html
- 磐田警察署「防犯情報(特殊詐欺)」の月刊「IWATA詐欺通信」(更新日2026年7月27日、2026年8月31日確認。令和8年6月=サギ電話15件・うち警察官をかたるもの8件、令和8年1月からの累計83件・うち39件) https://www.pref.shizuoka.jp/police/keisatusho/iwata/kurashi/2007941.html
- 磐田市「補助制度(防犯関係)」(更新日2026年8月27日、2026年8月31日確認。「振込め詐欺等の特殊詐欺及び悪質商法等の防止対策として、迷惑電話防止装置の普及をはかるため、機器の購入費を補助します。」/対象=申請時に磐田市在住の65歳以上/対象機器=通話録音装置・着信拒否装置/電話機本体に機能が内蔵されている機器は対象外/補助額=購入費のうち1万円を限度・1,000円未満切捨て/1世帯1回1台限り/4月1日より先着順/令和8年度末をもって終了予定/申請先=自治市民部 自治デザイン課、磐田市国府台3-1 本庁舎2階、電話0538-37-4751) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/bousai_anzen/bouhan/1010032.html
- 磐田市「磐田市内の犯罪発生状況」(更新日2026年7月14日、2026年8月31日確認。「静岡県内では、サギ電話のうち国際電話が使われたケースが約7割を占めます。」) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/bousai_anzen/bouhan/1001239.html
- 静岡県警察「しずおか関所作戦」(更新日2026年3月31日、2026年8月31日確認。西部で機器の設置補助・無償貸出を実施しているのは菊川市・御前崎市・磐田市・湖西市=令和7年12月現在) https://www.pref.shizuoka.jp/police/kurashi/bohan/sagi/boushisouti.html
- 警察庁「SOS47」(2026年8月31日確認。「特殊詐欺の被害にあわないためには、「犯人と話さないこと」が一番効果的です。」/NTT東日本・西日本のナンバー・ディスプレイおよびナンバー・リクエストは70歳以上または70歳以上の方と同居している契約者の月額利用料・工事費が無料=要申込、専用ダイヤルNTT東日本0120-722-455・NTT西日本0120-931-965/警察相談専用窓口#9110、消費者ホットライン188) https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/service/
- 本連載の既報:ATMが、また一台消えた(記事0074)、市への支払いがQRコードでできるようになる(記事0221)、地域包括支援センターはどんな相談に応じてくれるか(記事0130)、磐田で安心して年を重ねるために今からできること(記事0137)、猛暑の電気代と高齢者の見守り(記事0225)
※本文の「1日あたり約41.6件」「約12.5件」「1件あたり約668万円」「668倍」「2日に1件」「47.0%」および静岡県の件数19.3%増・被害額約1.94倍は、公表値をもとにした筆者の計算です。上半期の日数は181日として計算しました。静岡県の令和7年の認知件数452件と被害額30億2,140万円は、静岡県警察の表記どおり暫定値です。警察庁の令和7年上半期資料も暫定値で、通年の確定値では静岡県の予兆電話件数は公表されていません。磐田市内・磐田警察署管内の特殊詐欺の認知件数と被害額は、公表資料で確認できませんでした(2026年8月31日確認)。「合言葉」については、警察庁の資料に記載を確認できなかったという事実を書いたもので、都道府県警察が呼びかける対策そのものを否定するものではありません。迷惑電話防止装置購入費補助金は先着順で予算の上限があり、令和8年度末での終了が予定されています。申請の可否・対象機器・金額・期限は変更される場合があります。ご利用の前に、磐田市自治デザイン課(電話0538-37-4751)にご確認ください。詐欺の被害や不審な電話については、警察相談専用窓口#9110、または磐田警察署(電話0538-37-0110)へご相談ください。
