導入——あの記事の、答え合わせが出た
今月の中旬、私は「市の資料に『土木技師不足による』と書いてあった」という記事を書きました。154年かかると言われる水道管の入れ替えを、誰が替えるのか。市の資料が、事業の遅れの理由として「土木技師不足」と正直に書いていた——その話です。
その答え合わせにあたる発表が、7月23日にありました。令和8年度の磐田市職員採用試験、最終試験の結果です。今回結果が出たのは、高専卒・短大卒・高卒を対象にした土木技術職員の枠。つまり、10代後半から20代前半の、いちばん若い担い手の入口です。
結果を、先に言います。合格者は4人でした。まず、これは良い知らせです。そのうえで、その手前にある数字の話を、今日はしなければなりません。
まず、事実を整理する——5人、5人、4人、4人
市が公表した試験の実施状況を、入口から順に並べます。募集は「若干名」。これに対して、申込者は5人でした。内訳は、高専卒0人、短大卒1人、高校卒4人。書類審査を通過したのは5人全員。6月末の筆記と面接による第1次試験の合格者が4人。そして7月の個別面接を経た最終合格者が4人です。
比較のために、同じ日に発表された他の職種を見てみます。大卒対象の事務職員Aの合格者は29人。保健師4人、保育士・幼稚園教諭2人、栄養士2人。事務職には人が集まり、29人の合格者を選び抜ける。一方、土木の若手枠は、入口に並んだのが5人——この非対称が、今回の発表のいちばんの情報だと私は思います。
申込5人で合格4人。計算上の競争率は1.25倍です。これは「選抜」というより、「来てくれた人を、ほぼ全員迎え入れる」構造に近い。試験が甘いという話ではありません。母数が、それだけ細いということです。なお、大卒・経験者を対象にした土木職員の採用は別枠で行われますし、合格者が全員入庁するとも限りません(辞退はどの職種でも起こります)。それでも、若い世代の入口の細さは、この数字にはっきり出ています。
評価——良い点と、注文したい点
良い点を3つ挙げます。
1つ、何より、4人の若者が磐田の土木を選んでくれたこと。数字の話をする前に、これは書いておきたい。おそらく18歳から20歳そこそこの4人が、数ある進路の中から「磐田のまちをつくり、守る仕事」に手を挙げてくれた。この連載で水道管の記事を書いた者として、心からようこそ、と言いたい。2つ、高卒・短大卒に入口を開いていること。大卒だけを待っていては、土木の若手は確保できません。若年枠を設けて地元の高校生に道をつくっているのは、正しい設計です。3つ、実施状況を職種別・段階別に公表していること。この記事が書けるのは、市が数字を出しているからです。
そのうえで、注文が3つあります。
1つ。「若干名」という募集の書き方です。市の資料が「土木技師不足」と認めているのなら、本当は何人足りないのか。水道管の更新を154年から現実的な期間に縮めるには、技師が何人必要で、今後10年で何人退職するのか。必要数を示さない募集は、危機感も魅力も伝えません。「若干名」と「あと○人足りません、磐田を直す仲間を探しています」では、高校生への届き方がまるで違います。
2つ。母数5人という現実への危機感です。1.25倍の採用は、辞退が一人出るだけで計画が崩れ、相性のミスマッチにも弱い。今年は4人合格という結果が出ましたが、この構造は「たまたま来てくれた年」に支えられています。来年、申込が2人だったら? 入口を太くする手を、合格発表の翌日から打ち始めるべきです。
3つ。仕事の中身が、子どもたちに見えていないこと。土木は「きつい」のイメージだけが先行しがちですが、実際には測量も設計も発注も、いまやICTの仕事です。そして何より、水道も道路も橋も、この仕事がなければ止まる。「まちを守る仕事」だという中身が、進路を選ぶ前の中高生に届いていない。これは市役所の土木職だけでなく、地元の建設業全体の課題でもあります。
対案・結論——入口を太くする3つの手
提案は3つです。
第一に、必要数の公表。いまの土木技師の人数と年齢構成、今後10年の退職見込み、そして事業計画に対して何人足りないのか。いわば「担い手の台帳」です。国保税の記事で「平均ではなくわが家の金額を」と書きましたが、採用も同じです。「若干名」ではなく、必要な人数を正直に示すことが、危機の共有の第一歩です。
第二に、学校とのパイプを太くすること。市内・近隣の高校への出前授業、夏休みのインターン、現場見学。「市役所の土木職員の一日」を、進路を決める前の高校2年生に見せる。申込5人という数字は、待っていて増える数字ではありません。取りに行くしかない。
第三に、誇りの発信。あす始まるこども若者会議のような場で、「まちを守る仕事」の話を子どもたちに聞かせてほしい。台風の夜に道路を見回る人がいること。蛇口から水が出るのは、管を替え続ける人がいるからだということ。消防団の記事で書いたとおり、担い手は待遇と誇りの両方で決まります。待遇の改善に時間がかかるなら、誇りの発信は今日からできます。
最後に一言。この連載で、担い手不足の話を何度も書いてきました。消防団、成年後見、農業、そして土木。形は違っても、根は同じです。まちを支える仕事が、選ばれなくなっている。そんな中で、この春の試験に手を挙げてくれた5人と、合格した4人。あなたたちが替えていく水道管の話を、私はこのブログに書きました。154年と言われた道のりを、あなたたちの世代が縮めていくのを、磐田の一市民として、楽しみに見ています。どうか、来てください。そして長く、いてください。
出典(2026年7月確認)
- 磐田市「令和8年度磐田市職員採用試験(土木技術職員-高専卒・短大卒・高卒)」(試験案内・最終試験結果・実施状況。申込5人〈高専0・短大1・高校4〉、書類審査通過5人、第1次合格4人、最終合格4人、募集は若干名) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/shokuin_saiyou/seikishokuin/1016178.html
- 磐田市「令和8年度 磐田市職員採用試験(最終試験)結果」(令和8年7月23日発表。事務職員A 29人、事務職員B 1人、事務職員C 4人、保健師4人、保育士・幼稚園教諭2人、栄養士2人、土木技術職員C 4人) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/178/R8kekka-saisyuuC.pdf
※合格者数は発表時点のものであり、実際の採用者数は辞退等により変わる場合があります。大卒・経験者対象の採用試験は別に実施されます。