導入——8月1日から、申出が始まる
7月31日、磐田市が一つの案内を出しました。「最高裁判決を踏まえた生活保護費の追加給付」。そして申出期間は、令和8年8月1日から令和9年7月31日まで——つまり、今日から始まります。
この記事は、いつもの連載とは少し性格が違います。批評よりも先に、まず知らせることが目的です。なぜなら、この給付には「自分から申し出なければ、一円も届かない人」がいるからです。しかもその人たちは、市の生活保護のページを見に行く可能性が、いちばん低い人たちでもあります。
昨日の月末の総ざらいで、私は7月に見えた型の第一に「知らせているのに、届かない」を挙げました。今日の話は、その典型です。ただし今回は、届かなければ失われるのが、本来受け取れるはずだったお金だという点が違います。
まず、事実を整理する
ことの発端は、平成25年(2013年)に国が行った生活保護の生活扶助基準の改定です。生活扶助とは、食費や光熱費など、日々の暮らしにあてる分のこと。このとき、基準が引き下げられました。
これについて、令和7年(2025年)6月27日に最高裁判決が出ました。判決を踏まえ、国は新たな水準を設定し、当時の水準との差額に相当する金額を追加給付する方針を決定しています。磐田市も、国が示す基準に基づいて該当する方に追加給付を行う——というのが、今回の案内です。
対象は、市の案内によれば次のとおりです。平成25年8月から平成30年9月までの間に生活保護を受給したことがある、すべての世帯。加えて、平成30年10月から令和8年3月までの間に受給した世帯のうち、一定期間入院・入所していた方、障害のある方で加算が算定されていた方、毎年12月に支給される期末一時扶助費が算定された世帯なども対象になります。
ここが、いちばん大事な一行です。現在は生活保護を受給していない世帯も、条件に該当すれば対象になります。13年前のことです。あのころ受けていて、その後仕事に就いて、いまは自分の力で暮らしている——そういう方も対象になり得る、ということです。なお、亡くなられた方は対象となりません。
手続きは、三つに分かれる
ここからが実務です。あなたの状況によって、やることがまったく違います。
①いま、磐田市で生活保護を受給中の世帯。申出は不要です。生活保護費の支給日に合わせて追加給付が行われます(市の案内では、振込時期は令和8年7月末の予定と記載されています)。何もしなくて構いません。
②対象期間に磐田市で受給していたが、いまは受給していない世帯。当時の世帯主から、磐田市への申出が必要です。ここが今日いちばん伝えたい人たちです。申し出なければ、給付は行われません。
③平成25年8月以降、別の自治体で受給していた世帯。その当時受給していた自治体への申出が必要です。磐田市に申し出るのではありません。いま磐田に住んでいても、当時が浜松なら浜松へ、袋井なら袋井へ、ということです。
さらに、当時の世帯主が亡くなっている場合でも、当時の世帯員が存命なら申し出ることができます。申出の順位は、配偶者(事実婚を含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、曽孫、甥・姪の順と定められています。
必要な書類は、申出書・同意書、戸籍謄本(当時の世帯主および全世帯員分、発行から3か月以内)、本人確認書類の写し、そして振込先の確認のため預貯金通帳またはキャッシュカードの写し。口座は申出者本人名義に限られます。当時の加算があった方は、それに対応する書類も必要です(書類がなくても申出はできますが、市で確認できない場合は加算分が給付できないことがあると案内されています)。
ご本人が申し出るのが難しい場合は、代理も認められています。同じ世帯の方、法定代理人(成年後見人など)、親族、そして本人の身の回りの世話をしている施設等の職員も代理できます。委任状などが必要ですが、この道があるのは大きい。介護の現場にいる者として、ここは強調しておきたいところです。
評価——良い点と、注文したい点
良い点を3つ挙げます。
1つ、いま受給中の方は手続き不要にしたこと。市が把握している情報で処理できる人に、わざわざ書類を出させない。当たり前のようでいて、これは大事な設計です。2つ、代理申出の道を広く認めていること。世帯員、法定代理人、親族に加えて施設職員まで挙げてある。ご高齢の方や体調の優れない方が、そのために取り残されない工夫です。3つ、説明が具体的であること。対象の期間、順位、必要書類、様式のダウンロード、チェックリストまで用意されています。国保税の記事で「費用や条件が見えないと人は動けない」と書きましたが、ここは丁寧に書かれていました。
そのうえで、注文が3つあります。
1つ。いちばん届きにくい人に、どう届けるのか。手続きが必要なのは「昔は受給していたが、いまは受給していない人」です。その人たちは、市の生活保護のページを見ません。すでに生活を立て直し、市の福祉の窓口とは縁が切れているからです。転居している方もいるでしょう。市が当時の記録を持っているのなら、該当しそうな方へ個別に通知することはできないのでしょうか。ホームページに載せて「申し出てください」では、この層には届きません。
2つ。戸籍謄本の負担です。当時の世帯主と全世帯員分、しかも発行から3か月以内。取得には手数料がかかり、本籍が遠方なら郵送での取り寄せになります。一方で市の案内には、受給当時の状況によっては「追加給付額が少額または給付額が発生しない場合があります」とも書かれています。書類をそろえる費用と手間のほうが上回る可能性がある。これでは、申し出をためらう人が出ます。せめて「おおよそこういう世帯なら、いくらくらい」という目安を示せないでしょうか。
3つ。1年という期間の周知です。令和9年7月31日まで、たっぷりあるように見えます。しかし「あとでやろう」と思ったものが1年後に残っている人は多くありません。年度末や年明けなど、途中で二度、三度と告知を打ってほしい。そして広報いわたの紙面にも、繰り返し載せてほしいと思います。
対案・結論——「知っている人が、伝える」しかない
提案は、行政に二つ、私たちに一つです。
第一に、市が持つ記録を活かした個別のお知らせ。個人情報の扱いには慎重さが要りますが、当時の受給記録があるなら、その方へ直接届ける道を検討してほしい。行政が知っている情報を、行政が使わずに「申し出てください」と言うのは、順番が逆だと思います。
第二に、関係機関を通じた周知。民生委員、地域包括支援センター、社会福祉協議会、居宅介護支援事業所、そして私たちのような民間の相談の場。「無関心の値段」で書いたとおり、届く経路は複数あったほうがいい。とくに今回は、代理申出に施設職員まで認めているのですから、施設や事業所への周知は効きます。
第三に、これを読んでいるみなさんへ。もし心当たりのある方が身近にいたら、この話を伝えてください。「昔、生活保護を受けていた時期がありませんでしたか」——聞きにくい話だと思います。私も、この記事を書くのに少し迷いました。でも、聞きにくいから誰も言わない、というのがいちばんまずい。制度としては、堂々と受け取れるお金です。最高裁の判断を踏まえて、国が「返す」と決めたお金なのですから。
最後に一言。不動産と介護の仕事をしていると、「知らなかった」というだけで損をする人を、本当に何度も見てきました。相続の期限、税の軽減、介護保険の申請、そして昨日書いた罹災証明の6か月。今回もまた、期限のある話です。今日から令和9年7月31日まで、1年間。該当しそうな方は、まず磐田市の福祉相談課に電話一本、してみてください。「対象かどうか分からないのですが」で構いません。分からないまま何もしないのが、いちばんもったいない。それだけを、今日は書いておきたいと思いました。
出典(2026年8月1日確認)
- 磐田市「最高裁判決を踏まえた生活保護費の追加給付」(2026年7月31日更新。平成25年の生活扶助基準改定について令和7年6月27日の最高裁判決を踏まえ国が追加給付の方針を決定、対象世帯、申出期間=令和8年8月1日〜令和9年7月31日、手続きの要否、申出の順位、必要書類、代理申出、様式・チェックリスト、担当=福祉相談課) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kenkou_fukushi/seikatsu_fukushi/1016213/index.html
※対象の判定、給付額、必要書類は個別の事情により異なります。ご自身が対象かどうかを含め、必ず磐田市福祉相談課(当時、別の自治体で受給されていた場合はその自治体)へ直接ご確認ください。本記事は市の公表内容をもとに整理したものです。