導入——「9月1日」は、磐田の話ではありません

この時期になると、テレビでもネットでも同じ言い方を聞きます。

「9月1日、子どもたちが一斉に通学路へ戻ります」。

それを聞くたびに、私は毎年、少し落ち着かない気持ちになります。磐田の子どもは、9月1日には戻らないからです。

市が公表している令和8年度の一覧で、市立小中学校30校の2学期始業式を数えます。

8月25日が1校。8月26日が2校。8月27日が22校。8月31日が2校。そして9月1日は、3校だけ。

いちばん早い福田中学校は8月25日来週の火曜日です。

今日は8月18日。あと7日で、磐田の通学路に子どもが戻り始めます。

前に、始業式の日程を「子どもの心」の側から書きました。今日は同じ日程を、「通学路の安全」の側から書きます。

そして、もう一つの日付を並べます。

秋の全国交通安全運動は、9月21日(月曜)から30日(水曜)までの10日間。市内一斉の街頭キャンペーンは9月18日(金曜)です。

8月27日に子どもが戻り、9月21日に運動が始まる。その間、25日あります。

まず、事実を整理する——9月に増えるのは、本当です

今年の交通安全白書(令和7年版)は、特集そのものが「通学路における交通安全の確保について」でした。国が、いま通学路を問題にしているということです。

そこに載っている数字を並べます。いずれも令和2年から6年までの5年間の合計で、歩行中に亡くなったか重傷を負った小学生の数です。

8月は99人。9月は165人。10月は218人。

夏休みの8月がいちばん少なく、9月に1.67倍に跳ね上がり、10月に最多になります。

小学1年生だけを取り出すと、もっとはっきりします。

8月は25人。9月は53人。10月は61人。2学期が始まると、2倍を超えます。

そして学年別に見ると、歩行中の死者・重傷者は小学1年生が446人、2年生が453人で突出し、学年が上がるにつれて減っていきます。入学して間もない子が、いちばん危ない。

ここまでは、よく言われる話です。問題はこの次です。

危ないのは、朝ではありません

同じ白書に、時間帯別の数字があります。歩行中の小学生の死者・重傷者を、時間帯で分けたものです。

14時から15時台が639人で最多。次いで16時から17時台が617人。

では朝はどうか。6時から7時台が193人、8時から9時台が87人。

午後の2つの時間帯を足すと1,256人。朝の2つを足すと280人。およそ4.5倍の差があります。

通行の目的で見ても同じです。登校中が232人(12.4%)に対して、下校中は484人(25.8%)。下校中は登校中の2.1倍。

理由は、考えてみれば当たり前です。

朝は、みんなで並んで行きます。集合場所があり、班長がいて、上級生が後ろにつく。大人が旗を持って立っている。

帰りは、ばらばらです。学年で下校時刻が違う。友だちと寄り道をする。ランドセルを背負ったまま公園に直行する。そして、疲れています。

白書は、法令違反等別の数字も出しています。小学生の約6割に何らかの法令違反等があり、その最多が「飛出し」。全年齢層では「違反なし」が64.9%を占めるのに対し、小学生は40.9%にとどまります。

飛び出すのは、たいてい帰り道です。

歩行中に亡くなるか重傷を負った小学生の数を、発生月別と発生時間帯別で示した図。令和2年から6年までの5年間の合計で、警察庁資料をもとに内閣府の令和7年交通安全白書がまとめたもの。全国の数値。発生月別の合計は、4月155人、5月165人、6月188人、7月146人、8月99人、9月165人、10月218人、11月160人、12月183人、1月122人、2月144人、3月130人。夏休みの8月がもっとも少なく、9月は1.67倍に増え、10月が最多である。小学1年生だけを見ると8月25人、9月53人、10月61人で、2学期が始まると2倍を超える。発生時間帯別では、14時から15時台が639人でもっとも多く、次いで16時から17時台が617人。朝は6時から7時台が193人、8時から9時台が87人で、午後の2つの時間帯の合計1,256人に対し朝の2つは280人と、およそ4.5倍の差がある。通行目的別では登校中が232人で12.4パーセント、下校中が484人で25.8パーセントと、下校中が登校中の2.1倍である。内閣府「令和7年交通安全白書」から作成し、2026年8月18日に確認したもの。
図1 歩行中に死亡・重傷を負った小学生(令和2〜6年の合計、全国)。内閣府「令和7年交通安全白書」特集「通学路における交通安全の確保について」から作成

磐田の数字は、どうか

ここまでは全国の話です。磐田の数字も見ます。

市が公表している令和7年(2025年)の市内交通事故発生状況によれば、人身事故は769件、死者2人、負傷者993人。前年より件数は135件、死者は7人、負傷者は124人減りました。

子どもの数字も出ています。小学生が関係した事故は23件(前年35件)、負傷した小学生は29人(前年41人)。園児は10件、中学生は14件、高校生は26件です。

減っています。これは、素直に良いことです。

そして市は、令和8年度の交通安全活動推進計画で、こう掲げています。

スローガンは「安全を つなげて広げて 事故ゼロへ」。年間目標は、交通事故死者数0人、人身交通事故発生件数690件以下。

769件から690件へ。さらに79件減らすという目標です。達成した数字より低いところに次の的を置くのは、まっとうな態度だと思います。

それでも、8月27日から9月20日までが空いています

市の計画には、年4回の交通安全運動の期間が書いてあります。

春の全国交通安全運動が4月6日〜15日。夏の交通安全県民運動が7月11日〜20日。秋の全国交通安全運動が9月21日〜30日。年末の交通安全県民運動が12月15日〜31日。

並べてみてください。7月20日から9月21日まで、2か月あります。年間でいちばん長い空白です。

その空白は、これまでは理屈が通っていました。ほとんどが夏休みだったからです。

けれど、磐田の始業式は8月27日です。空白の後半25日間は、もう夏休みではありません。

「自転車マナー向上指導強化の日」も見てみます。5月20日、10月20日、1月20日の年3回。ここにも、8月末から9月20日までは入っていません。

つまり、磐田の子どもが通学路に戻ってから最初の25日間は、市の交通安全の行事表の上では、何もない期間なのです。

誤解のないように書きます。学校もPTAも自治会も、始業式の朝には立っています。私の地域でもそうです。それは制度ではなく、現場の善意でやっていることです。

私が申し上げたいのは、市の計画の側が、そこを空白のままにしているということです。

磐田市の交通安全運動の期間と、令和8年度の2学期始業式の日を1本の年間の帯の上に並べた図。春の全国交通安全運動は4月6日から15日、夏の交通安全県民運動は7月11日から20日、秋の全国交通安全運動は9月21日から30日、年末の交通安全県民運動は12月15日から31日。磐田市立小中学校30校の2学期始業式は、8月25日が福田中学校の1校、8月26日が豊田北部小学校と豊田中学校の2校、8月27日が22校、8月31日が竜洋西小学校と竜洋北小学校の2校、9月1日が豊田南小学校と青城小学校と豊田南中学校の3校。夏の運動が終わる7月20日から秋の運動が始まる9月21日までのおよそ2か月が年間でもっとも長い空白であり、22校が始業式を迎える8月27日から9月20日までの25日間は、市の交通安全の行事表の上では何も置かれていない。秋の運動の市内一斉街頭キャンペーンは9月18日に行われる。磐田市の公表資料から作成し、2026年8月18日に確認したもの。
図2 年4回の交通安全運動と、磐田の2学期始業式の位置(磐田市「令和8年度 交通安全活動推進計画」「令和8年度 小中学校 始業式・終業式・卒業式の日程」から作成)

評価——良い点と、注文したい点

先に、評価したい点を三つ。

一つめ。事故が着実に減っていること。904件から769件へ。死者9人から2人へ。街頭指導も、教室も、現場診断も、効いていないはずがありません。

二つめ。親子自転車教室が、小学1年生から3年生を対象にしていること。白書のデータでは、歩行中の事故は低学年に集中し、自転車の事故は高学年に増えます。低学年のうちに自転車を教えるのは、データの流れと合っています。

三つめ。死亡事故の現場診断を続けていること。市は磐田警察署が主催する現場診断に参加し、地元の自治会や交通安全関係者と一緒に現場を見ています。紙の上ではなく、その場所に立つ。これは強い手法です。

そのうえで、注文を三つ。

1つ。始業式の週に、何も置かれていないこと。

秋の運動の街頭キャンペーンは9月18日。子どもが戻ってから3週間以上あとです。統計がいちばん跳ねる時期に、市の旗はまだ立っていません。

2つ。啓発の重心が、朝に寄っていないか。

市の資料に時間帯の記載はありませんが、街頭キャンペーンや街頭指導は、通勤時間帯に行われるのが一般的です。私の見てきた範囲でもそうです。

けれどデータは14時〜17時台を指しています。朝に立つことを減らせという話ではありません。午後にも、少しでいいから移してほしいという話です。

3つ。始業式の日がそろっていないのに、啓発は一斉であること。

8月25日、26日、27日、31日、9月1日。5つの日付にばらけています。市の交通の担当と、学校の担当が、この一覧を突き合わせているでしょうか。

豊田南小学校と青城小学校と豊田南中学校の3校だけは、9月1日です。この3校の周りだけは、9月1日の朝に人が立っているべきです。

対案・結論——空いた25日間を、どう埋めるか

提案を四つ書きます。予算はほとんど要りません。

第一に、秋の運動の街頭キャンペーンを、始業式の週に1回だけ足すこと。

9月18日の一斉キャンペーンを動かせとは言いません。8月27日の朝に、通学路の主要な交差点で1時間立つ日を、追加で1日つくる。のぼり旗はすでにあります。人は、自治会と交通安全協会に頼めます。

「秋の運動のプレ実施」という名前でもいい。要は、いちばん危ない日に、いちばん人がいる状態をつくることです。

第二に、下校時に立つ日を、2学期の最初の1週間に置くこと。

午後2時から4時。データが指している時間帯です。

働いている人には難しい時間ですが、ここは高齢の方の出番だと思います。市は高齢者の交通事故防止を重点に挙げていますが、守られる側に置くだけでなく、守る側に立ってもらうという考え方もあるはずです。

第三に、始業式の一覧を、交通の担当課と共有すること。

市はすでに「令和8年度 小中学校 始業式・終業式・卒業式の日程」をPDFで公表しています。この1枚を、交通の担当課が持っているかどうか。持っていれば、8月25日の福田中学校区、26日の豊田北部小・豊田中学校区に、その日だけ人を配れます。

庁内で紙を1枚回すだけの話です。けれど、こういう一枚が回っていないことは、よくあります。

第四に、「飛出し」の起きる場所を、子どもから聞き取ること。

市は死亡事故の現場診断をやっています。同じことを、事故が起きる前にやってほしい。

2学期の最初の学活で、「帰り道で怖かった場所」を子どもに書いてもらう。それを地図に落とす。大人が机の上で選んだ危険箇所と、子どもが実際に怖いと思う場所は、たいてい違います。

市は自転車のヒヤリハットのVR動画をつくりました。技術は持っています。あとは、聞き取る手間だけです。

最後に一言。

私は不動産の仕事で、小さい子のいる家族に家を案内することがあります。

そういうとき、必ず聞かれるのが「通学路は安全ですか」です。

だから私は、契約の前に一度、その道を歩きます。朝ではなく、夕方に歩きます。

朝に歩くと、たいていの道は安全に見えます。人が立っているし、車もゆっくり走る。

夕方4時に同じ道に立つと、景色が変わります。信号のない横断歩道で、車が止まらない。塀の陰から子どもが出てくる。西日で、運転席から歩行者が見えなくなる。

その景色を見てから、私はお客さんに話します。「ここは、帰りだけ気をつけてください」と。

9月1日は、たしかに全国の節目です。けれど磐田の節目は、8月25日と、26日と、27日と、31日と、9月1日です。

そして本当に見るべきなのは、その日の朝ではなく、その日の午後3時かもしれません。

来週の火曜日、福田の子どもたちが、いちばん先に通学路へ戻ります。

出典(2026年8月確認)

  • 磐田市「令和8年度 小中学校 始業式・終業式・卒業式の日程」および添付の「2026 小中学校 入学式・卒業式等一覧」(ページ更新日2026年4月18日。市立小中学校30校の2学期始業式は、8月25日が福田中学校の1校、8月26日が豊田北部小学校・豊田中学校の2校、8月27日が22校、8月31日が竜洋西小学校・竜洋北小学校の2校、9月1日が豊田南小学校・青城小学校・豊田南中学校の3校。問い合わせ=教育部学校教育課 電話0538-37-4921) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kosodate_kyouiku/shougakkou_cfuugakkou/shougakkou/1004406.html
  • 磐田市「交通安全活動」および「令和8年度 交通安全活動推進計画」(ページ更新日2026年7月10日。スローガン「安全を つなげて広げて 事故ゼロへ」。年間目標値〈令和8年4月〜令和9年3月〉=交通事故死者数 年間0人、人身交通事故発生件数 年間690件以下。重点的な取り組み=子どもと高齢者の交通事故防止/自転車の交通事故防止・ヘルメット着用率の向上/交差点での交通事故防止/交通事故の発生傾向に応じた対策の実施/関係機関の情報共有。年間の交通安全運動実施期間=春の全国交通安全運動4月6日〜15日〈市内一斉街頭キャンペーン4月8日〉、夏の交通安全県民運動7月11日〜20日〈同7月10日〉、秋の全国交通安全運動9月21日〜30日〈同9月18日〉、年末の交通安全県民運動12月15日〜31日〈同12月15日〉。自転車マナー向上指導強化の日=5月20日、10月20日、1月20日の年3回。令和8年度の交通事故防止対策モデル地区は向笠地区、自転車事故ゼロプロジェクトスクールは磐田北高校。親子自転車教室は市内小学1年生から3年生を対象に実施。死亡事故現場診断、自転車ヒヤリハットVR動画、交通安全教育センターの案内あり。問い合わせ=自治市民部 自治デザイン課 電話0538-37-4751) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/bousai_anzen/bouhan/1001591.html
  • 磐田市「交通事故発生状況」および「2025年 磐田市内交通事故発生状況(令和7年1月1日〜令和7年12月31日)」(ページ更新日2026年3月16日。令和7年の人身事故件数769件〈前年比マイナス135件〉、死者2人〈同マイナス7人〉、傷者993人〈同マイナス124人〉。令和6年は904件、死者9人、傷者1,117人。各種事故別の件数は幼児12件、園児10件、小学生23件〈前年35件〉、中学生14件、高校生26件。負傷者は幼児13人、園児12人、小学生29人〈前年41人〉、中学生14人、高校生26人。交差点332件) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/bousai_anzen/bouhan/1001590.html
  • 内閣府「令和7年交通安全白書」特集「通学路における交通安全の確保について」第1章第1節(令和2年〜6年の合計。歩行中の小学生の死者・重傷者は発生月別で4月155人、5月165人、6月188人、7月146人、8月99人、9月165人、10月218人、11月160人、12月183人。小学1年生は8月25人、9月53人、10月61人。学齢別では歩行中が小学1年生446人、2年生453人で最多、自転車乗用中は6年生282人が最多。発生時間帯別では14〜15時台が639人で最多、16〜17時台617人、6〜7時台193人、8〜9時台87人。通行目的別では登校中232人〈12.4%〉、下校中484人〈25.8%〉で合わせて716人〈38.2%〉。法令違反等別では小学生の「違反なし」は749人〈40.9%〉で全年齢層の64.9%より約24.0ポイント低く、約6割に法令違反等があり、その最多は飛出し。小学生の交通事故による死者・重傷者数は平成27年の1,185人から令和6年686人へ約42.1%減少) https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r07kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_1_1.html

※交通安全運動の期間、街頭キャンペーンの実施日、始業式の日程は変更される場合があります。本文の「25日間」「4.5倍」「2.1倍」「1.67倍」は、市および内閣府が公表した数値をもとに筆者が計算したものです。白書の数値は全国の集計であり、磐田市内の傾向を直接示すものではありません。街頭指導や街頭キャンペーンの実施時間帯について、磐田市は公表資料の中で明示しておらず、本文の記述は筆者が見聞きした範囲での認識にもとづくものです。本記事の提案は筆者個人の意見であり、磐田市が検討していると確認したものではありません。最新の情報は磐田市および静岡県警察の公式サイトでご確認ください。