Q. 高齢の親が救急車で運ばれるとき、マイナ救急へ何を準備すればいいですか。

マイナ救急に備えるなら、健康保険証の利用登録を済ませたマイナンバーカードを、家族にも分かる定位置へ置き、外出時は携行してください。2026年4月からスマホも使えますが、本人が認証操作できないと利用できません。カードなら、本人の同意を得にくくても、生命や身体の保護に必要な場合に医療情報を閲覧できます。薬の一覧と緊急連絡先も併せて準備します。

マイナ救急の準備は、登録済みカードの定位置から

総務省消防庁が示すマイナ救急の事前準備は、マイナンバーカードを持ち、健康保険証として利用登録することです。登録済みカードを使います。

私は、そのカードを救急時に取り出せる場所まで決めるよう勧めます。カードを持ち、登録しただけでは、家族が不在の場面で探せないからです。

総務省消防庁によると、マイナ救急は2025年10月1日に全国で始まりました。2026年度は712消防本部、離島などを除く約99%で実施し、5,417救急隊、約97%が対応する体制です。消防本部によって実際の流れが少し異なる場合があります。

119番通報の際、指令員からカードの準備を頼まれることがあります。救急隊員は原則として本人の同意を確認し、顔とカードの顔写真を照合します。専用カードリーダーで読み取り、搬送先の選定や救急車内の処置へ情報を使います。

カードの4桁暗証番号は原則不要です。親御さんが番号を思い出せないから使えない、と諦める必要はありません。まず、マイナ保険証と資格確認書を整理した記事も参考に、保険証利用登録が済んでいるかを確認します。

マイナ救急でカードは顔写真による本人確認で原則暗証番号不要、スマホは本人の生体認証または4桁暗証番号の操作が必要と比較した図
図1 カードとスマホでは、救急時に使える条件が違います。

2026年4月からスマホ対応、それでもカードが要る

2026年4月からiPhoneとAndroidのマイナ保険証にも対応しましたが、スマホは傷病者本人の認証操作が前提です。本人が操作できない場合は利用できません。

iPhoneは生体認証、Androidはスマホ利用者証明用電子証明書の4桁暗証番号を、傷病者本人が操作します。私は、救急時の基本をカードに置き、スマホだけに一本化しない方がよいと考えます。

カードは扱いが異なります。本人の同意を得ることが難しくても、生命や身体を守るために必要な場合は、同意なしで医療情報を閲覧することがあります。ここが意外な違いです。消防庁も、スマホへ搭載した後にカードを持ち歩くよう案内しています。

スマホを否定する話ではありません。日常の受診では便利でも、救急時は充電切れ、故障、本人が操作できない状態が重なります。選択肢を一つ増やすのがスマホであり、カードを捨てる理由にはなりません。

救急隊が確認できる情報と、確認できないこと

マイナ救急で救急隊が確認するのは、受診先、処方薬、診療、手術、特定健診などの医療情報です。家の中の薬や家族の説明を完全に置き換える仕組みではありません。

消防庁の案内では、診療・薬剤・手術情報などは過去5年分、特定健診情報は過去5回分です。救急用サマリーには、過去3か月の受診歴、薬剤、診療情報、過去5年の手術情報、直近の健診実施日などが要約されます。

その情報から、救急隊は搬送先を選び、車内での処置を考えます。搬送先の医療機関が到着前に治療準備を進められる利点もあります。本人や家族が病名と薬を一つずつ思い出す負担を減らせます。

一方、飲み始めたばかりの市販薬、医師へまだ伝えていない症状、家族しか知らない生活上の注意まで、自動でそろうとは限りません。紙の薬の一覧と緊急連絡先は残します。デジタルか紙かではなく、片方が使えないときの逃げ道を二つ持つ考え方です。

良い点——伝えられない病歴と薬を補える

良い点は二つあり、本人が説明できないときの情報を補えることと、搬送先を決める材料が増えることです。救急隊にも家族にも、時間の使い方が変わります。

第一は、高齢の親御さんが薬の名前を言えない場面への備えです。お薬手帳が見当たらず、家族もすぐ到着できない。そのとき、登録済みカードから受診歴や薬剤を確認できれば、記憶だけに頼らずに済みます。

第二は、搬送先と処置を考える材料になることです。磐田の救急医療の受け皿については、磐田市立総合病院が救急車6,011台を受けとめた記事で扱いました。救急の入口で情報が一つ増える意味は小さくありません。

夜間や休日に自分で受診先を探す段階なら、磐田の夜間・休日医療を整理した記事があります。受診先を探す余裕がない症状では119番です。制度を使い分ける境目も、家族で話しておきます。

注文——「対応済み」で終わらせず置き場所まで案内を

一事業者として注文したいのは、市や消防が案内する際、「スマホ対応済み」で終わらせず、カードを家族が取り出せる場所まで決めるよう伝えることです。機能の説明だけでは、救急時の行動につながりません。

制度は、知っているだけでは家族を助けない。カードを取り出せる場所まで決めて、初めて準備になります。玄関に裸で置く必要はありません。保管場所を家族が共有し、外出時に本人が携行できる形を決めます。

私は、スマホ対応という言葉が一人歩きしないか迷います。便利になったのは良い。けれど、「もうカードはいらない」と受け取られれば、本人が操作できない場面で逆効果です。利点と使えない条件を、同じ大きさで知らせてほしいと思います。

マイナンバーカードを持たない人や、保険証利用登録を望まない人もいます。利用を迫る書き方ではなく、使う人には準備を具体化し、使わない人には紙の薬情報と連絡先を備える道を示す。この二本立てが必要です。

磐田の家族が今日確認する保険証利用登録、カードの定位置と携行、薬の一覧、緊急連絡先の4項目を示した図
図2 制度の理解を、家族が動ける4項目へ落とします。

磐田の家族が今日決める4項目

磐田のご家族が今日できるのは、利用登録、カードの場所、薬の一覧、緊急連絡先の4項目を一枚にすることです。10分で確認できる範囲から始めます。

一つ目は、カードが健康保険証として利用登録されているか。二つ目は、自宅での定位置と、外出時に入れる財布やケースです。三つ目は、現在の薬とアレルギーを紙にも書くこと。四つ目は、最初に連絡してほしい家族の氏名と電話番号です。

たとえば、親御さんが見付の自宅にいて、家族が中泉や今之浦へ出ている時間に119番が必要になるかもしれません。これは私の実体験ではなく、磐田の暮らしで備えを考えるための仮定です。カードの場所を知る人が不在なら、せっかくの仕組みをすぐ使えません。

救急隊が来る前にAEDが必要な場面もあります。自宅や職場の近くは、磐田市のAED設置場所と24時間使える所で確認できます。カードを探す人、119番へ状況を伝える人、AEDを取りに行く人を家族で決める必要はありませんが、置き場所だけでも共有しておくと動きやすくなります。

最後に一言——便利さより、取り出せる段取り

マイナ救急の価値は、カードの機能より、本人が話せないときにも医療情報へたどり着ける段取りにあります。登録しただけ、スマホへ入れただけでは完成しません。

私は救急隊として対応した経験も、マイナ救急を使って家族を搬送した経験もありません。ここからは、磐田で家族の相談を受ける一事業者としての意見です。良い仕組みほど、使う直前の一手まで具体にしないともったいないと考えます。

最後に一言。救急車を呼ぶ瞬間に、アプリの設定から始める余裕はありません。今夜、親御さんとカードの場所を一度だけ確認する。スマホがあってもカードは持つ。薬の紙を同じ場所へ置く。その地味な段取りが、磐田の一家庭を支えます。

よくある質問

Q. マイナ救急ではカードの暗証番号が必要ですか。

カードを使う場合は、救急隊員が本人の顔とカードの顔写真を照合するため、4桁の暗証番号入力は原則不要です。スマホは扱いが異なり、iPhoneでは生体認証、Androidではスマホ利用者証明用電子証明書の4桁暗証番号を本人が操作します。

Q. スマホへマイナ保険証を入れれば、カードを持たなくてもよいですか。

消防庁は、スマホへ搭載した後もカードのマイナ保険証を持ち歩くよう案内しています。スマホは本人が認証操作できないと使えません。カードなら、本人の同意を得にくくても、生命や身体の保護に必要な場合に医療情報を閲覧することがあります。

Q. 本人が意識不明でもマイナ救急を利用できますか。

カードのマイナ保険証なら、本人の同意を得ることが難しくても、生命や身体の保護に必要な場合は医療情報を閲覧することがあります。一方、スマホは本人の認証操作が前提なので利用できません。消防本部により実際の流れが異なる場合があります。

著者・大石浩之の顔写真

大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

磐田市で小さな不動産業を営み、実家じまい・空き家・相続・介護にからむご相談を一件ずつ受けています。理念より、家計と段取りで考えます。 プロフィール

出典(2026年9月確認)

※実施体制、利用手順、閲覧できる情報、対応端末は変更される場合があります。症状が重い、意識がない、呼吸がおかしいなど緊急性が高い場合は、カード探しを優先せず119番へ通報してください。個別の受診判断は医療機関や救急相談窓口へご確認ください。