Q. パートなら、会社の健康診断を受けなくてよいのですか。
パートという呼び名だけでは決まりません。一般の定期健康診断は、雇用期間と、週所定労働時間が同種業務の通常労働者の4分の3以上という二条件を満たす人が対象です。2分の1以上4分の3未満は実施が望ましい範囲。正社員は通常、この二条件を満たします。
違いは肩書ではなく、雇用期間と週の時間
健康診断でパートと正社員の違いを調べるときは、契約の継続期間と週所定労働時間の二つを確認します。
「パート」「アルバイト」「正社員」は職場で使う呼び名です。一般健康診断の対象は、労働安全衛生法上の「常時使用する労働者」に当たるかで決まります。
通常の無期・フルタイム正社員は、雇用期間と時間の条件を満たすため、雇入時と定期健康診断の対象になります。パートでも二条件を満たせば、同じ対象です。
意外なのは、従業員50人未満の店にも実施義務があることです。50人という線は、定期健康診断結果を労働基準監督署へ報告する義務に関係します。対象者への健診を行うかどうかの線ではありません。
見付の小売店も中泉の事務所も、9月は全従業員の対象判定を見直す月です。
2026年9月は職場の健康診断実施強化月間
厚生労働省は2026年9月1日から30日までを「職場の健康診断実施強化月間」としています。
指定ページは2026年8月21日に公表されました。10月1日から7日の全国労働衛生週間に向けた準備期間として、毎年9月に実施しています。2026年9月から新しい健診義務が始まった、という話ではありません。
重点事項は、一般健康診断の実施だけではありません。結果の記録、本人への通知、医師からの意見聴取、必要な事後措置、保健指導まで含みます。
小規模事業場、派遣労働者、外国人労働者、女性の健康課題も確認項目です。受けさせて終わりではなく、結果を仕事の配慮へつなぐところまでが事業者の仕事です。
第一条件——無期か、1年以上の継続
パートが一般健康診断の対象となる第一条件は、無期契約か、1年以上の雇用契約・更新見込み・継続実績があることです。
契約書が3か月更新でも、更新を重ねて1年以上働いていれば、書面の1回分だけを見て対象外にはできません。契約の名前ではなく、予定と実績を確認します。
深夜業など一定の業務は、6か月を基準にする別の扱いがあります。この記事は、日中の事務、販売、軽作業などを想定した一般健康診断の整理です。有害業務や深夜業は個別に確認してください。
第二条件——通常労働者の4分の3以上
第二条件は、同じ事業場で同種の業務に就く通常労働者と比べ、パートの週所定労働時間が4分の3以上であることです。
比較の分母は、全国一律の40時間ではありません。その職場で同じ種類の仕事をする通常労働者の週所定労働時間です。
通常労働者が週40時間なら、4分の3は週30時間です。期間条件も満たす週30時間以上のパートは、一般健康診断の義務対象になります。
同じ例で、週20時間以上30時間未満は、2分の1以上4分の3未満です。期間条件を満たす人には、厚生労働省が健診の実施を望ましいとしています。週20時間以上なら一律に義務、という意味ではありません。
この4分の3は、社会保険の加入や年収の壁とは別の判定です。106万円の壁と130万円の壁の違いと混ぜず、健診は健診の二条件で見ます。
雇入時と定期は、時期が違う
二条件を満たす労働者には、雇い入れるときの健康診断と、1年以内ごとに1回の定期健康診断があります。
雇入時健康診断の根拠は労働安全衛生規則第43条です。採用するかを決めるための検査ではなく、雇い入れるときに行う健康管理です。
雇入れ前3か月以内に受けた健康診断の結果証明を本人が提出した場合、対応する検査項目は省けます。市の健診結果を持っているだけで、自動的に全部を省けるわけではありません。
定期健康診断は同規則第44条により、1年以内ごとに1回です。
良い点——小さな職場も、受診後まで見る
この仕組みの良い点は三つあり、店の規模で外さないこと、結果を本人へ伝えること、必要な事後措置まで事業者に求めることです。
第一に、従業員50人未満でも対象者への実施義務は変わりません。人数の少なさで一人を外さない仕組みです。
第二に、結果は本人へ通知します。第三に、所見があれば医師の意見を聴き、必要な仕事上の配慮を検討します。
労働者50人未満の小規模事業場には、地域産業保健センターによる支援があります。医師の意見聴取や保健指導を相談できるため、産業医がいない店にも入口があります。
職場の健康を守る仕組みは、職場の熱中症対策を扱った記事にもつながります。健診日だけ整えて、毎日の働き方を放置しては足りません。
注文——全従業員の判定表を一枚で残す
事業者へ注文したいのは、正社員だけの予約表ではなく、全従業員の対象判定を一枚で残すことです。
パートだから健診なし、正社員だからあり、という分け方は雑です。契約期間、更新予定、週所定労働時間、通常労働者の時間、前回受診日を並べます。
二条件を満たす人、2分の1以上4分の3未満の人、別基準を確認する人に分ければ、予約漏れを見つけやすくなります。
雇用条件の説明も呼び名で済ませない。パートの待遇説明を扱った記事と同じく、誰に何を伝えたかを記録します。
費用と受診時間の賃金は分けて考える
法令に基づく健康診断の費用は事業者負担ですが、一般健康診断を受ける時間の賃金は別に整理します。
厚生労働省の施行通知は、法定健康診断の費用を事業者が負担すべきものとしています。対象となるパートへ健診費用をそのまま負担させる扱いにはできません。
一般健康診断の受診時間に賃金を払うかは、労使で協議して決める扱いです。厚生労働省は、円滑な受診のため事業者が賃金を支払うことが望ましいとしています。
特殊健康診断の受診時間は労働時間です。一般と特殊で扱いが違います。就業規則、労働契約、予約時間、移動時間の扱いを健診前に書面で知らせます。
市の特定健診・がん検診とは役割が違う
会社の健康診断と、医療保険者が行う特定健診、磐田市のがん検診は、実施主体と目的、検査項目が同じではありません。
働き手が市の健診を受けていても、勤務先は法定項目と受診時期を確認します。「受診済み」だけで会社の義務は終わりません。
磐田市のがん検診、特定健診、会社の健診の違いでは、年齢、費用、検査の目的を分けました。職場健診の対象かどうかは、今回の雇用期間と時間で別に判定します。
私は、望ましい範囲をどこまで広げるか迷う
私は、2分の1以上4分の3未満のパートへ、法定義務を超えてどこまで健診を広げるか迷います。
小さな事業者には費用と勤務調整の負担があります。一方、同じ職場で長く働く人を、週の時間が少し短いだけで健康管理から外すのも乱暴です。
私には、パート従業員の法定健診対象をめぐって争った体験も、磐田労働基準監督署で個別判断を受けた体験も、体験ストックとしてありません。ここからは一事業者としての意見です。
最低線だけを探すより、欠勤や交代勤務を含めて職場が続く費用として考えたい。ただし、本人へ受診を強いるだけで、費用や時間を曖昧にするやり方には賛成できません。
今日すること——六つの欄を埋める
事業者は今日、従業員ごとに契約期間、更新予定、週所定労働時間、比較対象の時間、前回受診日、次回予定の六つを記入します。
働き手は、労働条件通知書と勤務表を見て、自分の契約期間と週所定労働時間を確認します。分からなければ、勤務先へ「私はどの二条件で対象判定されていますか」と聞きます。
法定対象か、実施が望ましい範囲か、特殊な業務の別基準かで迷う場合は、磐田労働基準監督署や社会保険労務士へ、契約書と勤務表を示して確認します。
最後に一言。健康診断は福利厚生のおまけではありません。パートか正社員かで色を塗る前に、二つの数字を見る。費用、時間、結果後の配慮まで先に伝える。磐田の小さな店ほど、その一枚の表が働く人と商売の両方を守ります。
よくある質問
Q. 週20時間のパートは会社の定期健康診断の対象ですか。
週20時間だけでは決まりません。同じ事業場で同種の仕事をする通常労働者が週40時間なら、20時間は2分の1です。雇用期間の条件も満たす場合、厚生労働省が実施を望ましいとする範囲ですが、4分の3に当たる週30時間以上とは扱いが違います。比較する通常労働者の時間も職場で確認してください。
Q. パートの法定健康診断の費用と受診時間の賃金は、会社負担ですか。
法令に基づく健康診断の費用は、実施義務を負う事業者が負担します。一方、一般健康診断を受ける時間の賃金は労使で協議して定める扱いで、厚生労働省は事業者が支払うことが望ましいとしています。特殊健康診断の受診時間は労働時間です。費用と時間の賃金を分けて確認します。
Q. 磐田市の特定健診やがん検診を、会社の健康診断の代わりにできますか。
市の特定健診やがん検診を受けただけで、会社の法定健康診断を自動的に済ませた扱いにはなりません。検査項目、受診時期、結果証明を事業者が確認する必要があります。雇入時は3か月以内に受けた健診の証明書を提出すると、対応する項目を省ける規定があります。事前に勤務先へ確認してください。
出典(2026年9月確認)
- 厚生労働省「『職場の健康診断実施強化月間』(9月)について」(2026年8月21日公表、2026年9月8日確認、HTTP 200)
- 厚生労働省「9月は『職場の健康診断実施強化月間』です」(2026年版リーフレット、2026年9月8日確認、HTTP 200)
- 厚生労働省「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」(2026年9月8日確認、HTTP 200)
- 厚生労働省「労働安全衛生規則」第43条・第44条(2026年9月8日確認、HTTP 200)
- 厚生労働省「健康診断を受診している間の賃金はどうなるのでしょうか?」(2026年9月8日確認、HTTP 200)
※一般健康診断の対象、項目、時期、費用、受診時間の扱いは、契約期間、週所定労働時間、業務内容、就業規則で変わる場合があります。この記事は2026年9月8日時点の一般的な整理です。個別判断は磐田労働基準監督署または社会保険労務士へご相談ください。
