この記事について。2026年5月に公開した記事を、その後に確認できた事実で書き直しました(本文の確認は2026年8月)。公開日は当時のままにしています。
導入——「産みたくない」のではなく、「産めない」という声
私は不動産と介護の仕事をしています。同時に、子育て中の父親でもあります。保育園の送り迎えをしながら、同じ世代の親たちと話す機会が多くあります。そこでよく聞くのは、「子どもは好きだけれど、二人目・三人目は難しい」という声です。
「産みたくない」のではなく、「産めない」。この違いは大きいと思います。今日は、感情論に入る前に、まず事実を並べます。全国でどれだけ生まれているのか、磐田市ではどうなのか、市はどこを目指しているのか。数字で確かめたうえで、良い点と、足りない点を書きます。
まず事実——全国の出生数は、10年連続で最少を更新した
厚生労働省が2026年2月26日に公表した人口動態統計速報(令和7年12月分)によると、2025年の出生数は70万5809人で、前年より1万5179人(2.1%)少なく、10年連続で過去最少を更新しました。
死亡数は160万5654人(前年比1万3030人減)。生まれた数から亡くなった数を引いた自然増減はマイナス89万9845人で、こちらも18年連続の減少です。1年間で、日本全体では磐田市の総人口を優に超える規模の「自然減」が起きている計算になります。
出生数が80万人を割ったのは2022年。そこからわずか3年で70万人割れが目前まで来ました。少子化のスピードは、国の従来の推計より速いことが、あらためて示された形です。
なお、この70万5809人という数字は「速報値」です。人口動態統計は、まず速報値(概数)が公表され、その後、確定した数として改めて公表される仕組みになっています。今回の記事で使う全国の数字も、現時点で確認できる最新の速報値であることをお断りしておきます。
まず事実——磐田市でも、生まれる数より亡くなる数のほうが多い
では、磐田市はどうか。市が公表している人口の移動(人口動態)の統計によると、令和6年度(2024年4月〜2025年3月)の年間出生数は818人。同じ期間の死亡数は2,676人で、自然増減はマイナス1,858人でした。
直近の動きも見ておきます。令和8年度(2026年度)の4月から6月までの3か月間では、出生221人に対して死亡438人、自然増減はマイナス217人です。月によって多少の増減はありますが、「生まれる数より亡くなる数のほうが多い」という状態が、磐田市でも続いています。
同じ3か月間、市には転入1,464人・転出1,683人という届け出もありました。差し引きマイナス219人(社会増減、筆者集計)です。つまり磐田市の人口は、生まれる数と亡くなる数の差(自然増減マイナス217人)と、引っ越しの出入りの差(社会増減マイナス219人)の、両方から減っている、ということになります。出生数だけを増やしても、転出のほうが多ければ人口は減り続けます。「子どもの数」の話は、実は「住み続けてもらえるかどうか」の話とも、切り離せません。
磐田市が令和4年3月にまとめた第2期人口ビジョンでは、令和2年(2020年)に169,013人だった人口が、このままでは令和47年(2065年)に124,757人まで減る、つまり26.2%減るという推計を示しています。市の合計特殊出生率は、平成30年(2018年)の時点で1.46。市はこれを基準に、2060年まで5年ごとに0.05ずつ改善するという前提を置いて推計をつくっています。これはあくまで市が置いた仮定であり、実際の実績として出生率が上がっているわけではありません。直近の合計特殊出生率がどう推移しているかについては、確認できた最新の公式数値は平成30年時点のものにとどまり、それ以降の市単位の確定値は今回確認できませんでした。
評価——良い点を三つ
1つ、磐田市が早い段階で「このままでは人口が4分の1減る」という厳しい推計を、正面から公表していること。都合の悪い数字を隠さず、令和47年までの見通しを人口ビジョンとして示しているのは、議論の土台として大事な姿勢だと思います。
2つ、給食費の無償化など、子育て世帯の毎月の固定費を減らす取り組みが、実際に動き出していること。これは私が別の記事でも書きましたが、令和8年4月から磐田市の小学校給食費は保護者負担0円になりました。所得にかかわらず対象になる制度で、「払えるかどうか」という毎月の心配が一つ減ります。子どもの数を増やすかどうかを決めるのは、あくまで各家庭ですが、その判断の前提にある「毎月いくら出ていくのか」という不安を小さくする取り組みとして、私は評価しています。
3つ、市が人口の動きを月単位で公表し続けていること。出生・死亡・転入・転出を毎月更新しているからこそ、私たちはこうして最新の状況を確認できます。地味な作業ですが、透明性という意味で評価したい点です。
注文——三つ
1つ。「お金」だけでなく「時間」の不安にも、目を向けてほしい。給食費や保育料の負担軽減は重要ですが、子育て中の親が本当に足りないと感じているのは、お金と同じくらい時間です。保育園の送迎、急な発熱での呼び出し、仕事との両立の難しさ。こうした「時間の不安」を減らす取り組みが、お金の取り組みに比べて見えにくいと感じます。
2つ。合計特殊出生率など、市単位の最新の実績値を、もっと分かりやすく公表してほしい。今回、磐田市の合計特殊出生率について、平成30年より新しい市単位の確定値を確認することができませんでした。人口ビジョンの前提である「5年ごとに0.05改善」が、実際にどこまで進んでいるのか、市民が定点観測できる形で示してほしいと思います。
3つ。二人目、三人目を考える家庭への支援を、もっと具体的に見せてほしい。私自身、子育て中の父親として感じるのは、「一人目を持つかどうか」より「二人目・三人目を持てるかどうか」のほうが、経済的にも体力的にもハードルが上がるということです。全国的な出生数の減少も、この部分が大きいはずです。磐田市として、多子世帯に向けた取り組みがどこまであるのか、私にはまだ十分に見えていません。
結論——まず事実を並べたうえで
まとめます。
全国の出生数は10年連続で過去最少を更新し、70万人割れが目前です。磐田市でも、令和6年度の年間出生数は818人にとどまり、生まれる数より亡くなる数のほうが多い状態が続いています。市の人口ビジョンは、このままでは令和47年に人口が26.2%減るという厳しい推計を示しています。
子どもの数をどうすれば増やせるのか。私にも、確実な答えはありません。ただ、給食費の無償化のように「お金の不安」を減らす取り組みは、具体的に始まっています。次に必要なのは、「時間の不安」を減らす取り組みと、市単位の実績を市民が確認できる仕組みだと、私は考えています。
もう一つ、今回の整理で見えてきたのは、「自然増減」と「社会増減」を分けて考える必要がある、ということです。出生数を増やす取り組みと、若い世代に住み続けてもらう取り組みは、目的も手段も別物です。両方を同じ「子育て支援」という言葉でひとくくりにしてしまうと、どちらの効果も見えにくくなります。市がどちらに、どれだけの力を割いているのか。この点も、これから確かめていきたいと思います。
まず事実を並べる。今日はここまでです。次は、私自身の子育ての現場で見えてきたことを、もう少し具体的に書いてみたいと思います。
出典(2026年8月確認)
- 厚生労働省「人口動態統計速報(令和7年12月分)」(2026年2月26日公表。2025年の出生数「70万5809人」、前年比1万5179人(2.1%)減、10年連続で過去最少を更新。死亡数「160万5654人」、前年比1万3030人(0.8%)減。自然増減「マイナス89万9845人」、18年連続の減少。数値は速報値) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/s2025/dl/202512h.pdf
- 磐田市「磐田市の人口 令和6年度」(人口の移動=月別の出生・死亡データより、2024年4月〜2025年3月の年間出生数818人、死亡数2,676人、自然増減マイナス1,858人〈筆者集計〉) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/profile/toukei/1015292.html
- 磐田市「磐田市の人口 令和8年度」(人口の移動=2026年4月〜6月の出生221人〈67・66・88の合計〉、死亡438人〈142・140・156の合計〉、自然増減マイナス217人〈筆者集計〉。同期間の転入1,464人〈599・419・446の合計〉、転出1,683人〈688・435・560の合計〉、社会増減マイナス219人〈筆者集計〉) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/profile/toukei/1005583.html
- 磐田市「第2期磐田市人口ビジョン」(令和4年3月策定。人口=令和2年(2020年)169,013人が令和47年(2065年)に124,757人まで減少する推計〈44,256人・26.2%減〉。合計特殊出生率=平成30年(2018年)実績値1.46を基準に、2060年まで5年ごとに0.05ずつ改善すると仮定) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/649/dai2kijinkou.pdf
- 磐田市「給食費」(小学校の給食費は令和8年(2026年)4月から保護者負担額が0円。国・県の支援と交付金を活用。詳細は別記事「給食費『タダ』を求める声、磐田市はどうする」参照) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kosodate_kyouiku/kyuushoku/1010586.html
※令和6年度・令和8年度の出生・死亡・転入・転出の合計、自然増減・社会増減は、磐田市が公表した月別データを筆者が合計した数値です。市が合計値として公表しているものではありません。全国の統計(暦年・速報値)と磐田市の統計(年度・4月〜翌3月)は期間の区切り方が異なるため、単純比較はできません。磐田市の合計特殊出生率について、平成30年より新しい市単位の確定値は、今回の調査では確認できませんでした。子育て中の親の実感に関する記述は、筆者自身の経験と、身近な範囲で聞いた話に基づくものであり、統計調査に基づくものではありません。

