この記事について。2026年5月に「磐田市はどうするのか」という問いの形で公開した記事を、その後に確定した事実で書き直しました(本文の確認は2026年8月)。公開日は当時のままにしています。

導入——「タダにしてほしい」の答えが、半分だけ出た

給食費を無償にしてほしい。この声は、ずっとありました。物価が上がり、食材費が上がり、それでも子どもは毎日食べます。家計から見れば、給食費は「毎月必ず出ていくお金」です。

私は不動産と介護の仕事をしています。学校の中の人間ではありません。それでも、家計の相談を受ける立場で言えば、毎月決まって出ていくお金が消えることの意味は、金額の大きさ以上に大きい。「払えないかもしれない」と毎月心配しなくてよくなる。これは金額に換算しにくい種類の安心です。

その答えが、半分だけ出ました。

令和8年4月から、磐田市の小学校の給食費は、保護者負担0円になりました。国と県の支援、そして交付金を組み合わせた結果です。

そして、中学校は0円になっていません。1食344円という単価が、いまも保護者の口座から引き落とされています。

今日は、この「半分だけ」を数字で確かめます。良かったことは良かったと書き、足りないところは足りないと書きます。

磐田市の学校給食費。小学校は令和8年4月から保護者負担0円、中学校は1食344円。中学生1人の年額は約65,360円と試算
図1 磐田市の学校給食費(令和8年度)。小学校は0円、中学校は1食344円が残る。

まず事実——磐田市の給食費は、いくらか

市の「給食費」のページに、はっきり書かれています。

小学校。令和8年4月から、保護者負担額は0円。国・県の支援と交付金を活用したものです。

中学校。1食344円(全部食べる場合)。アレルギーなどで牛乳を飲まない場合は申請により274円、牛乳だけの場合は71円です。

月額は固定ではありません。「月の給食実施回数 × 1食単価」で決まります。市が例として挙げているのは2月〜3月分の約10,664円で、これが月額としては高い方の月にあたります。

年間ではどうなるか。市は年額を示していないので、ここからは私の試算です。仮に年間190食とすれば、344円 × 190食 = 約65,360円。実際の実施回数は学校や学年によって違うので、あくまで目安として見てください。

この数字を、家計の言葉に置き換えます。中学生が1人いる家庭では、年に6万円台のお金が給食のために出ていきます。2人なら13万円前後。小学生と中学生のきょうだいがいる家庭では、下の子の分だけが消えて、上の子の分は残るという状態です。

納付は原則として口座振替です。静岡銀行、清水銀行、スルガ銀行、静岡中央銀行、浜松磐田信用金庫、遠州中央農業協同組合などが対象で、Web口座振替受付サービスからも申し込めます。給食費についての問い合わせ先は、教育部 教育総務課 学校給食室(電話0538-37-4780、平日午前8時30分〜午後5時15分)です。

国の制度——なぜ小学校だけが0円になったのか

「磐田市が独自に決断した」という話ではありません。土台には、国の制度があります。

文部科学省は令和8年4月から「学校給食費の抜本的な負担軽減」を開始しました。対象は公立小学校の児童の学校給食に必要な食材費です(義務教育学校の前期課程、特別支援学校の小学部を含みます)。

支援は、児童1人・1か月あたりの基準額という形で行われます。完全給食で小学校5,200円、特別支援学校6,200円。補食給食で4,800円・5,800円。ミルク給食は1,200円。年間11か月分。

ここが肝心なところです。この制度の対象は小学校で、中学校は入っていません。だから、全国のどの市町村でも、まず小学校から0円になります。磐田だけの話ではないのです。

磐田市がやったのは、この国の支援に県の支援と市の交付金を組み合わせて、小学校について保護者負担を「軽減」ではなく「0円」まで持っていったことです。国の基準額だけでは足りない分を埋めなければ0円にはなりませんから、これは市の判断が働いた部分です。そこは率直に評価します。

国の学校給食費負担軽減。令和8年4月開始、対象は公立小学校、児童1人1月あたり完全給食5200円・特別支援学校6200円・補食給食4800円・ミルク給食1200円、年間11か月分。中学校は対象外
図2 国の負担軽減の基準額。対象は小学校で、中学校は含まれていない。

評価——良い点を三つ

1つ、「軽減」で止めずに0円まで持っていったこと。物価高への対応として、多くの自治体が一時的な補助や一部軽減を選びます。半額にする、数か月分だけ補助する、といった形です。それでも家計には「いくら払うのか」という不確定さが残ります。0円は、その不確定さごと消えます。この差は、実際に払う側にならないと分かりにくいところです。

2つ、所得で線を引かなかったこと。国の負担軽減は、保護者の所得にかかわらず支援を受けられる仕組みとして設計されています。所得制限を入れると、必ず「わずかに超えた家庭」が生まれ、その家庭が最も苦しいということが起きます。線を引かなかったのは、事務の手間の面でも、公平さの面でも、私は良い判断だったと思います。

3つ、困っている家庭への受け皿が別にあること。磐田市には就学援助制度があります。生活保護を受けている「要保護」と、それに準ずる困窮世帯である「準要保護」の保護者が対象で、支給内容に「学校給食費:児童生徒より徴収する学校給食費の額」が明記されています。学用品費、修学旅行費、医療費なども対象です。申請は随時受け付けで、オンライン申請フォームからの電子申請が基本。できない場合は在籍校または教育総務課(電話0538-37-4821)に相談する形です。つまり、中学校の給食費が残っていても、困窮世帯については制度上ゼロにできる道があるということです。

注文——三つ

1つ。中学校をどうするのか、市の考えを先に示してほしい。

「国の制度が小学校だけだから、中学校は仕方ない」で終わらせてよいのか。中学生を抱える家庭にとっては、年6万円台がそのまま残っています。市の判断で0円にすべきだ、と短絡的に言うつもりはありません。財源は必要ですし、他に削られるものが出ます。だから私が求めるのは、「やる・やらない」の結論より先に、いくらかかるのか、何を後回しにすることになるのかを、市民に見える形で示すことです。数字が出れば、市民の側も判断に参加できます。

2つ。「0円になった」ことを、確実に知らせてほしい。

制度は、知られていなければ無いのと同じです。これは私がこの場で繰り返し書いてきたことですが、給食費についても同じことが言えます。口座振替が止まっただけでは、「なぜ止まったのか」「いつまで続くのか」が分かりません。いつまでの措置なのか、来年度も続くのか。この2点は、多くの家庭が知りたいはずです。紙のお便り、学校からの連絡、市のページ、それぞれで同じことが読めるようにしてほしい。

3つ。就学援助の申請漏れを、放置しないでほしい。

就学援助は申請しなければ始まりません。そして、いちばん申請しにくいのは、いちばん必要としている家庭です。制度の存在を知らない、書類が難しい、人に知られたくない。理由はさまざまです。小学校が0円になったことで、「就学援助はもう関係ない」と誤解する家庭が出てくる可能性もあります。中学生がいれば関係は続きますし、給食費以外の項目も残ります。ここは、伝え方を一段丁寧にしてほしいところです。

結論——半分は前に進んだ。残り半分の説明を待ちたい

まとめます。

小学校は0円になりました。これは、国の制度に市がきちんと乗り、足りない分を埋めた結果です。素直に良かったと思います。

中学校は1食344円のまま残っています。年6万円台という金額は、家計にとって小さくありません。

私が言いたいのは、「中学校もタダにしろ」という一言ではありません。残った半分について、市がどう考えているのかを、数字とともに聞かせてほしいということです。続けるための財源の話も含めて、正直に出してもらえれば、市民の側も一緒に考えられます。

そしてもうひとつ。国の制度である以上、制度が変われば0円も変わりうるということは、頭に置いておきたいと思います。今の0円は、恒久的に保障されたものではありません。だからこそ、続けるつもりがあるのかどうかを、いまのうちに確かめておきたいのです。

給食費の請求書が来なくなった。その静かな変化の裏側に、これだけの仕組みが動いています。

出典(2026年8月確認)

  • 磐田市「給食費」(小学校=「令和8年(2026年)4月から保護者負担額は0円」、国・県の支援と交付金を活用。中学校=1食単価344円〈全食喫食の場合〉、牛乳欠食274円〈アレルギー等で申請が必要〉、牛乳のみ71円。「月々の学校給食費は『月の給食実施回数×1食単価』となります」、例として最高額は2〜3月分の約10,664円。納付は原則口座振替=静岡銀行・清水銀行・スルガ銀行・静岡中央銀行・浜松磐田信用金庫・遠州中央農業協同組合ほか、Web口座振替受付サービスで申込可。問い合わせ=教育部 教育総務課 学校給食室 電話0538-37-4780、午前8時30分〜午後5時15分) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kosodate_kyouiku/kyuushoku/1010586.html
  • 文部科学省「学校給食費の抜本的な負担軽減」(「令和8年(2026年)4月から開始します」。対象=公立小学校〈義務教育学校前期課程及び特別支援学校小学部を含む〉の児童の学校給食に必要な食材費。児童一人・一月当たりの基準額で支援=完全給食は小学校5,200円・特別支援学校6,200円、補食給食は4,800円・5,800円、ミルク給食は1,200円、年間11か月分。「給食費負担軽減交付金」の創設) https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/kyu-lighten.html
  • 磐田市「就学援助制度」(対象=磐田市立小中学校に在籍する児童生徒の保護者で「要保護」〈生活保護受給者〉または「準要保護」〈生活保護に準ずる困窮世帯〉に該当する方。支給対象に「学校給食費:児童生徒より徴収する学校給食費の額」を明記、ほかに学用品費・修学旅行費・医療費など。申請=随時受付、オンライン申請フォームでの電子申請が基本、できない場合は在籍学校または教育総務課に相談。問い合わせ=磐田市教育委員会事務局 教育総務課 電話0538-37-4821) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kosodate_kyouiku/kosodate_hojo_josei_yuushi/shuugakuenjo/1001782.html

※中学生1人あたりの年額「約65,360円」は、市が公表した1食単価344円に、年間190食と仮定して筆者が掛け合わせた試算です。市が公表した数値ではありません。実際の給食実施回数は学校・学年によって異なります。給食費の単価、無償化の取扱い、就学援助の要件は変更される場合があります。ご自身の家庭にあてはめて確認する際は、必ず教育部 教育総務課 学校給食室(0538-37-4780)または教育総務課(0538-37-4821)へお問い合わせください。家計に関する記述は、筆者が不動産・介護の現場で受けた相談の範囲での実感であり、統計に基づくものではありません。