導入——世界情勢は、ごみ袋の棚から入ってくる

磐田市のトップページに、ずっと出ているお知らせがあります。「市指定ごみ袋に関する臨時措置延長のお知らせ」。

市の説明はこうです。「昨今の中東情勢の影響から指定ごみ袋の購入が集中したため、一部店舗において指定ごみ袋が品切れとなっています」。

そのため、臨時措置として指定ごみ袋以外でもごみを出せる期間を設けた。最初の措置は5月15日から。それが延長を重ね、いまは8月31日までになっています。

5月15日から8月31日。3か月半です。

ニュースで中東情勢を見ても、ふつうは自分の生活と結びつきません。原油価格が上がった、と聞いても、せいぜいガソリンスタンドの看板を思い浮かべるくらいです。けれど磐田では、それがごみ袋の棚から入ってきた。今日はその話を書きます。

臨時措置の中身——条件は、意外と細かい

まず、この記事を読んでいる方が今日ごみを出せるように、条件を正確に書きます。

期間は令和8年5月15日(金曜)から8月31日(月曜)まで。対象は可燃ごみ、プラスチック、金物・小型電化製品、有害ごみ、埋立ごみです。

大前提として、基本は磐田市指定ごみ袋を使ってください、と市は書いています。手に入らない場合に限って、次の方法が認められます。

記名——袋に3点を書く。「可燃」または「不燃」、「地区名」、「氏名」。

素材——プラスチック製やビニール製。色は透明または半透明で、中身の見える袋。

サイズ——可燃ごみは6ℓから45ℓまで、不燃ごみは6ℓから30ℓまで。45ℓが指定袋の特大、30ℓが大、6ℓが小と同容量です。中身が密閉されるよう、口を縛ること。

使えない袋も明確です。黒色など中身の見えない色付きの袋、ごみがはみ出るもの、段ボールや米袋・紙袋・布袋など水分が染みるもの、口を縛れない袋、他自治体指定のごみ袋、そして事業系(青色)ごみ袋。

指定袋の小サイズ(6ℓ)の大きさは高さ55cm×幅30cm、という補足まで載っています。

磐田市の指定ごみ袋に関する臨時措置の内容をまとめた図。理由は昨今の中東情勢の影響から指定ごみ袋の購入が集中し、一部店舗で品切れとなったため。期間は令和8年5月15日金曜から8月31日月曜まで。対象は可燃ごみ、プラスチック、金物・小型電化製品、有害ごみ、埋立ごみ。基本は磐田市指定ごみ袋を使用し、手に入らない場合のみ代替の袋を使用できる。記名は「可燃」または「不燃」、地区名、氏名の3点を記入する。素材はプラスチック製やビニール製で、色は透明または半透明の中身が見える袋。サイズは可燃ごみが6リットルから45リットルまで、不燃ごみが6リットルから30リットルまでで、45リットルは指定袋の特大サイズ、30リットルは大サイズ、6リットルは小サイズと同容量。中身が密閉されるように口を縛る。使用できない袋は、黒色など中身の見えない色付きの袋、中のごみがはみ出るもの、段ボールや米袋・紙袋・布袋など水分が染みるもの、口を縛れない袋、他自治体指定のごみ袋、事業系の青色ごみ袋。チラシは日本語のほかポルトガル語、英語、ベトナム語、タガログ語の5言語で用意されている。改訂の経過は、初版が令和8年5月13日、第2版が5月15日で6リットル袋の目安サイズを追加し小サイズは高さ55センチ掛ける幅30センチ、第3版が6月16日でごみ集積所に出せないごみ袋として事業系の青色ごみ袋を追加、第4版が6月24日で期日を8月31日まで延期。市からのお願いとして、指定ごみ袋は複数の企業により製造されており例年並みの数量が供給される見込みであるため必要以上の購入を控えること、この機会により一層のごみ減量に協力することが記されている。
図1 臨時措置の内容と、改訂の経過(磐田市公表資料から作成)

第4版まで来ている、ということ

私がこのページで感心したのは、改訂の履歴が全部書いてあることです。

初版は令和8年5月13日。市が品切れを把握して、2日後の15日から措置を始めた。

第2版は5月15日。「6ℓ袋の目安サイズを追加」——小サイズの大きさが分からない、という声があったのでしょう。高さ55cm×幅30cm、と書き足した。

第3版は6月16日。「ごみ集積所に出せないごみ袋を追加」——事業系の青色ごみ袋が持ち込まれていたのだと思います。

第4版は6月24日。「期日を8月31日まで延期」。

この履歴は、現場で何が起きたかの記録です。サイズが分からず困った人がいた。事業系の袋が混ざった。そして、5月に「もう少しで戻る」と見込んだものが、戻らなかった。

行政の文書は、たいてい完成形だけが出てきます。版を重ねた跡を残したまま公開しているのは、正直で、実務的です。

5言語のチラシ

もう一つ、書いておきたいことがあります。

チラシは日本語のほか、ポルトガル語、英語、ベトナム語、タガログ語で用意されています。5言語です。

今日公開した第3次総合計画(案)の記事で触れた数字を、ここで思い出してください。磐田市の総人口に占める外国人の比率は6.2%で、県内5番目。そして市民意識調査では、約6割の市民が「外国人に対する差別や差別意識がある」と答えています。

ごみの出し方は、地域で最ももめやすい話題の一つです。言葉が分からないまま出したごみが、「あの国の人は」という話に変わっていくのを、私は何度も見てきました。不動産の仕事をしていると、そういう相談が実際に来ます。

ふだんと違うルールが3か月半も続いているのに、日本語しか出さなかったら何が起きたか。5言語のチラシは、トラブルを未然に消すための投資です。目立たない仕事ですが、私はここを評価します。

そして、この一行

ページの末尾に、市のお願いが書かれています。

「指定ごみ袋は、複数の企業により製造されており、例年並みの数量が供給される見込みです。必要以上の購入をお控えいただきますようお願いいたします。また、この機会に、より一層のごみ減量にもご協力をいただきますようお願いいたします」。

短い文章ですが、三つのことをやっています。

一つ、事実で不安を打ち消している。「複数の企業により製造されており」「例年並みの数量が供給される見込み」。作っているのは一社ではない、と示すことで、「もう手に入らないかもしれない」という思い込みを外そうとしている。

二つ、買い占めを名指しせずに止めている。「必要以上の購入をお控えください」。誰かを責めていません。品切れの原因は「購入が集中したため」と書かれています。つまり、供給が止まったのではなく、買う側が急いだ。それを、責めずに止めようとしている。

三つ、困りごとを別の目標につないでいる。「この機会に、より一層のごみ減量にも」。袋が足りないなら、出すごみを減らせばいい。第3次総合計画(案)には「ごみの資源化率 21.4% → 27%」という指標があります。目の前の混乱を、8年の目標に結びつけた一行です。

注文——三つ

そのうえで、注文します。

1つ。「中東情勢の影響」の中身を、もう一段書いてほしい。

市のページには理由が一行しかありません。中東情勢が、なぜごみ袋になるのか。原油から作られる樹脂が袋の原料であること、その値上がりや供給の不安が報じられたこと、それを見た人が買いに走ったこと。この連鎖を三行でも書いてあれば、読んだ人は納得して、買い急ぎを自分で止められます。

「お控えください」とお願いするより、「なぜ大丈夫なのか」を説明するほうが効きます。

2つ。「例年並みの数量が供給される見込み」の、その後を。

5月に「例年並みの見込み」と書き、6月に期日を8月31日まで延ばした。見込みは、外れたということです。それ自体は仕方がない。けれど、いま実際に店頭がどうなっているのかを、市は把握しているはずです。「7月末時点で市内の主な販売店の在庫は回復傾向」といった一行があれば、市民は判断できます。

3つ。8月31日以降を、いつ決めて、いつ知らせるのか。

期限まで、あと26日です。延長するのか、終了するのか。終了するなら、記名して出していた人は指定袋に戻さなければならない。延長するなら、それも早く知りたい。「8月中旬に判断してお知らせします」の一行を、いま出してほしい。私は11月2日の窓口短縮の記事でも、漏水調査の記事でも同じことを書きました。やった以上は、その後を示す。

結論——遠い戦争が、いちばん近い場所に出た

提案をまとめます。第一に、「中東情勢の影響」の連鎖を三行で説明すること。第二に、店頭の在庫状況の続報。第三に、8月31日以降の判断時期の予告。

最後に。

私はこの3か月半、正直なところ、この臨時措置をあまり気にしていませんでした。指定袋が家にあったからです。けれど市のトップページに、5月からずっと出ていた。気にしていなかったのは、私が困っていなかったからにすぎません。

困っていたのは、買い置きのない家です。ひとり暮らしの高齢者。急に出た大量のごみ。引っ越してきたばかりの人。そして、日本語のチラシを読めない人。

中東で何かが起き、原油の話になり、樹脂の話になり、棚からごみ袋が消えて、磐田の集積所に手書きの「可燃 ○○地区 ○○」という袋が並ぶ。世界情勢というのは、こういう形で家の玄関まで来ます。

熊本地震の記事で私は、遠くの災害を自分のこととして受け取ることについて書きました。今回は災害ではありませんが、同じことだと思っています。遠い出来事は、いつも、いちばん近い場所から入ってくる。

8月31日まで、あと26日。指定袋が手に入るなら、指定袋で。手に入らないなら、透明か半透明の袋に「可燃」と地区名と名前を書いて、口を縛って。そして、必要以上には買わないこと。それが、いま磐田でできるいちばん簡単な協力です。

出典(2026年8月5日確認)

  • 磐田市「市指定ごみ袋に関する臨時措置延長のお知らせ」(2026年6月25日更新。「昨今の中東情勢の影響から指定ごみ袋の購入が集中したため、一部店舗において指定ごみ袋が品切れとなっています」、臨時措置の期間=令和8年5月15日〜8月31日、対象=可燃ごみ・プラスチック・金物/小型電化製品・有害ごみ・埋立ごみ、記名=「可燃」または「不燃」/地区名/氏名、素材=プラスチック製やビニール製・透明または半透明、サイズ=可燃6〜45ℓ・不燃6〜30ℓ、口を縛る、使用不可=黒色など中身の見えない袋・はみ出るもの・段ボールや米袋等・口を縛れない袋・他自治体指定袋・事業系〈青色〉ごみ袋、指定袋小サイズは高さ55cm×幅30cm。チラシは日本語・ポルトガル語・英語・ベトナム語・タガログ語の5言語。改訂=初版 令和8年5月13日/第2版 5月15日〈6ℓ袋の目安サイズ追加〉/第3版 6月16日〈集積所に出せないごみ袋として事業系袋を追加〉/第4版 6月24日〈期日を8月31日まで延期〉。「指定ごみ袋は、複数の企業により製造されており、例年並みの数量が供給される見込みです。必要以上の購入をお控えいただきますようお願いいたします」。担当=ごみ資源循環課 電話0538-37-4812) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kurashi_tetsuzuki/gomi_recycle/1016419.html
  • 磐田市「第3次磐田市総合計画(素案)」および「指標一覧(巻末資料)」(ごみの資源化率=現状21.4%→目標27%、総人口に占める外国人の比率6.2%〈令和7年〉で県内5番目、市民意識調査で約6割の市民が「外国人に対する差別や差別意識を感じる」と回答) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/shiseijouhou/kouhou_kouchou/publiccomment/1005813/1016711.html

※臨時措置の期間・条件は変更される場合があります。ごみを出す前に、必ず磐田市の最新の案内をご確認ください。なお「中東情勢と樹脂原料の関係」に関する記述は、市が公表している「中東情勢の影響」という説明をもとにした筆者の整理であり、市が原因の詳細を公表しているものではありません。