導入——今日は、続いているものの話を書きたい

この連載は、批評が多くなりがちです。値上げの中身が見えない。告知が2日前だった。傍聴人がゼロだった。書いていることは間違っていないつもりですが、注文ばかり並べていると、うまくいっているものが見えなくなる——そのことは、自分でも気にしていました。

だから今日は、8月1日に市が出した一つの告知から書きます。「磐田こどもミュージカル修了公演開催及び第16期生団員募集について」。市のページを読んで、私は少し姿勢を正しました。

この団体、平成5年に設立されています。令和8年のいまから数えて、33年です。

まず、成り立ちから

市の説明によれば、きっかけは平成4年度に開かれた「しずおか文化の祭典'92inいわた」でした。その成功を機に、「磐田を文化発信の拠点にし、将来の磐田の文化を担う子どもたちの育成につなげたい」という思いから「こどもミュージカル運動」が展開され、翌年、磐田こどもミュージカルが設立されます。

そして、市のページには、こう書かれていました。

「タレント養成ではなく、舞台芸術を通じた人間育成を目指しています」。

この一行に、私は足を止めました。目的が、はっきり言葉になっている。子どもの習い事や地域の活動には、「何のためにやっているのか」が曖昧なまま続いているものが少なくありません。ここは違う。スターを作るのではない。舞台を通じて人を育てる。33年前に立てた旗が、いまも降ろされていないということです。

現在の第15期生は、令和8年6月時点で団員38人。内訳は小5が10人、小6が6人、中1が4人、中2が7人、中3が5人、そして高1・高2・高3が各2人です。高校生がいるのは、過去に所属していた団員が「シニア団員」として続けられるからでしょう。歌唱・演技・舞踊の3部門に分けた練習を月3回程度行い、その集大成として修了公演を迎えます。

その第15期生の修了公演「虹のかけ橋」が、今月8月30日(日曜)に開かれます。磐田市民文化会館「かたりあ」で、開場15時15分、開演16時。入場料は一般2,000円、学生1,500円(3歳から専門学校生・大学生まで)で全席自由です。約2年間の育成の、集大成の舞台だと案内されています。

磐田こどもミュージカルの概要をまとめた図。平成4年度開催のしずおか文化の祭典92inいわたの成功を機に、磐田を文化発信の拠点にし将来の磐田の文化を担う子どもたちの育成につなげたいという思いからこどもミュージカル運動が展開され、翌年の平成5年に設立された。市の説明ではタレント養成ではなく舞台芸術を通じた人間育成を目指すとされている。第15期生は令和8年6月時点で団員38人、内訳は小学5年が10人、小学6年が6人、中学1年が4人、中学2年が7人、中学3年が5人、高校1年から3年が各2人。活動は歌唱・演技・舞踊の3部門に分けた通常練習を月3回程度行い、修了公演を目指す。第15期生修了公演「虹のかけ橋」は令和8年8月30日日曜、磐田市民文化会館かたりあで開場15時15分、開演16時。入場料は一般2,000円、学生1,500円で全席自由。
図1 磐田こどもミュージカルとは(磐田市公表資料から作成)

第16期生の募集——条件を、正直に並べてみる

そして、次の期の募集が始まります。第16期生の募集期間は、令和8年9月3日から10月14日まで。募集人数は男女問わず50名程度です。

対象は市内・市外在住を問わず、小学3年生から中学3年生(令和8年4月2日現在)。高校生以上は、過去に所属していた方のみ「シニア団員」として申し込めます。育成期間は令和8年12月から令和10年8月まで(予定)——およそ2年です。会費は月額1,500円

申込の条件も、はっきり書かれています。歌唱・演技・ダンスが好きな方(経験の有無は問わない)。土曜・日曜に行われる月3回程度の練習に参加できる方。公演3か月前からの平日夜間を含めた練習(週3日程度)に参加できる方。そして、保護者が活動に協力できる方。

申込は、申込書(8月下旬に掲載予定)を持参・郵送するか、募集フォームのいずれか。11月15日には竜洋なぎの木会館で入団オーディションがあり、歌唱、台詞、リズム運動を審査して選考されます。

評価——良い点と、注文したい点

良い点を4つ挙げます。

1つ、33年続いていること。これに尽きます。消防団ため池土木職も、この連載では「担い手がいない」話ばかり書いてきました。その磐田で、子どもの育成事業が30年以上、期を重ねている。続けることが、いちばん難しい。

2つ、目的が言語化されていること。「タレント養成ではなく、人間育成」。この一行があるから、上手い子だけを前に出す方向へ流れない。磐南の記事で私は「一本の物差しで子どもを測る大人の貧しさ」を書きましたが、ここには別の物差しがあります。

3つ、市内・市外を問わないこと中古住宅の補助金の記事で、私は「自治体同士が税金で人を取り合っても、遠州全体では一人も増えない」と書きました。この募集は逆です。磐田の外の子も受け入れて、磐田で育てる。取り合うのではなく、引き受ける。

4つ、申込が紙とフォームの両方であること。昨日スマホ教室の申込が「電話で」だったことを評価したばかりですが、ここも同じです。持参・郵送でもいい、フォームでもいい。選べる入り口は、それだけで人を締め出しません。

そのうえで、注文が3つあります。

1つ。費用と負担の総額が、見えにくいことです。会費は月額1,500円。育成期間はおよそ2年ですから、単純計算で3万円を超えます。決して高額ではありませんが、それに加えて送り迎え、衣装や道具、そして公演3か月前は週3日、平日夜間もという時間の負担がある。ひとり親のご家庭や、共働きで送迎が難しいご家庭は、この条件を見た時点で諦めるかもしれません。減免の仕組みがあるのかどうか、私が確認した範囲では書かれていませんでした。

2つ。「保護者が活動に協力できる方」という条件。運営の実情としては当然だと思います。ただ、この一行は、参加できる家庭を選ぶ条件でもあります。協力の中身が具体的に書かれていれば——「年に数回、公演の受付を手伝う程度です」といった説明があれば——身構えずに応募できる家庭が増えるはずです。

3つ。この存在が、知られているのか。33年やっていて、いまの団員は38人。決して少ない数ではありませんが、磐田の小中学生の総数から見れば一握りです。「無関心の値段」で書いた「知らせているのに届かない」が、ここにも当てはまるのではないか。学校で募集チラシが配られているでしょうか。

磐田こどもミュージカル第16期生募集の条件をまとめた図。募集期間は令和8年9月3日木曜から10月14日水曜まで。募集人数は男女問わず50名程度。対象は市内・市外在住を問わず小学3年生から中学3年生で、高校生以上は過去に所属していた方のみシニア団員として申込可能。育成期間は令和8年12月から令和10年8月までの予定でおよそ2年間。会費は月額1,500円。申込条件は、歌唱・演技・ダンスが好きな方で経験の有無は問わない、土曜日曜に行われる月3回程度の練習に参加できる方、公演3か月前からの平日夜間を含めた練習に週3日程度参加できる方、保護者が活動に協力できる方。申込方法は申込書を持参・郵送するか募集フォームのいずれか。令和8年11月15日日曜に竜洋なぎの木会館で入団オーディションがあり、歌唱、台詞、リズム運動を審査して選考される。
図2 第16期生募集の条件——正直に並べてみる

対案・結論——まちが人を育てる、学校の外側の形

提案を3つ書きます。

第一に、費用の総額と、減免の有無を明記してほしいこと。会費以外に何がいくらかかるのか。困っている家庭への支援はあるのか。国保税の記事でも書きましたが、費用が見えないことが、制度から人を遠ざけます。「うちには無理かもしれない」と思わせない書き方が要ります。

第二に、「保護者の協力」の中身を具体的に。何を、年に何回くらい頼まれるのか。書いてあれば、応募のハードルは確実に下がります。

第三に、学校を通じた周知。募集期間は9月3日から10月14日。ちょうど2学期の始まりです。こどもまんなかキャッチフレーズの記事でも同じことを書きましたが、子どもに届けたいなら、いちばん確実な経路は学校です。

最後に一言。私は磐南シリーズの最終回で、「まちが人を育て、人がまちを育てる」と書きました。あれは学校の話でした。けれど今日、学校の外側にも同じ循環があることを知りました。33年前、文化の祭典が終わったあとに「これで終わりにしたくない」と考えた大人たちがいた。その判断が、いま38人の子どもの居場所になっています。

そして、この夏の終わりに舞台があります。8月30日、かたりあ。第15期生の修了公演「虹のかけ橋」。2年間の集大成です。私はチケットを買って見に行こうと思います。昨日は「傍聴人ゼロ」の会議のことを書きましたが、こちらの客席は、埋めたい。子どもが2年かけてつくったものを見に行くのは、大人にできるいちばん簡単な応援です。

出典(2026年8月3日確認)

  • 磐田市「磐田こどもミュージカル」(2026年8月1日更新。平成4年度「しずおか文化の祭典'92inいわた」を機に翌年設立、「タレント養成ではなく、舞台芸術を通じた人間育成」、第15期生は令和8年6月現在38人、修了公演「虹のかけ橋」=令和8年8月30日 開場15:15・開演16:00/磐田市民文化会館「かたりあ」/一般2,000円・学生1,500円、第16期生募集=令和8年9月3日〜10月14日・50名程度・市内市外問わず小3〜中3・育成期間 令和8年12月〜令和10年8月・会費月額1,500円・申込は持参郵送または募集フォーム・入団オーディション11月15日、事務局=磐田こどもミュージカル育成委員会事務局〈市民文化会館内〉) https://www.city.iwata.shizuoka.jp/kurashi_tetsuzuki/bunka/1010135/1001657.html

※募集要件・日程・料金は変更される場合があります。申込の詳細は磐田市公式サイトおよび事務局へご確認ください。